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漫画『モンキーピーク』感想―自然の密室で猿に襲われるパニックホラー

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最近は「生き残りをかけたサバイバル」とか「限定空間からの脱出」的な漫画が多いですね。いわゆる「ソリッドシチュエーション」もの。やはり世界観を絞れるというのは話を作りやすいのでしょうか。

本記事でご紹介する「モンキーピーク」は、そんなソリッドシチュエーションホラーの中でも異彩を放つ「山岳パニックホラー」。

舞台はリアルな大自然ですが、「容易に脱出できない環境」が限定状況を産み出し、脱出・生き残り系漫画の要素も併せ持ちます。

作画は粂田晃宏氏で原作は志名坂高次氏。志名坂氏といえば「凍牌」や「BW」など、ピリピリした麻雀漫画を描かれる漫画家さん。

その志名坂氏が原作のパニックホラーということで、否が応でも期待が高まります。

あらすじ

開発した薬が引き起こした薬害で苦境に陥った藤谷製薬。団結のために新社長のもと、数十名の社員は谷川岳(群馬県)のしらび山にて山岳レクリエーションに参加する。

山登りに不慣れなものもいる中、一行は山頂に到着。夜、営業担当の早乙女は、悲鳴、そして猿のものらしき鳴き声で目を覚ます。

テントを出ると、そこにはミノをかぶりナタを持った巨大な「猿」が…。

立ちすくみ猿を見送る早乙女。悲鳴の起こった方に駆けつけると、社員数名が惨殺されていた。

彼らがいるしらび山の先、岩砕山は別名「鬼猿岳」。そこは鬼の猿が住むと言われる、魔の山だった…。

モンキーピーク 1志名坂高次,粂田晃宏:日本文芸社

「モンキーピーク」感想・レビュー

リアルな設定

これはなかなか読ませるホラー漫画でした。予想以上におもしろく、かつ怖い!

山が舞台のパニック・サバイバルもの。学生が主人公となるケースが多いイメージですが、登場人物が製薬会社の社員一行という設定が新鮮です。

会社の山岳レクリエーションという設定なので、普通の登山とはまた違う落ち着いた雰囲気。しかし社会人と言っても、一皮むけば烏合の衆。パニックに陥った時に取る行動に違いが出て面白い。

そしてこういう話で物語を動かすのは、突飛過ぎる行動を取るイヤなヤツ。「モンキーピーク」でも特徴的な人物が出現しますが、それも過度にはっちゃけていないところがリアルさを損なわない。良いバランス感があります。

開かれた「閉鎖空間」

リアルな登山の描写にも注目。「猿」に追われる恐怖プラス、自然の中での生き残り。二重の緊迫感を味わえます。

「山」ということで空間や建物に閉じ込められた状況にはあらず。簡単に逃げられるのでは?と思いきや、山をなめたらいかんですね。

自然環境が「開かれているようで閉じられている」という、擬似的な限定空間として機能しているのが面白い。

また話の中で「谷川岳はエベレストを含む8000m級の山よりも死者が多い」との説明がありますが、Wikiでも確かにそのような記述が。説得力があります。

谷川岳 - Wikipedia

猿の正体は果たして?

何者かの罠にはまって山奥へと進まされる生存者たち。「猿」の目的・正体は何なのか?疑心暗鬼になった人間たちの間にも亀裂が…?

そんな社員たちの中で一人孤立していく主人公・早乙女。山で過去にトラウマを抱えた彼が、今後どのような行動を取っていくのか。

そして果たして、藤谷製薬の社員たちは恐怖の山から脱出することができるのか?

原作が志名坂高次さんということでスリル・サスペンスにも期待できますし、また粂田晃宏さんの作画も安定して読みやすい。レベルの高いパニック・ホラーです。

このままどんどん、読者を恐怖のどん底に突き落としていって欲しい、期待の1作です。

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