荒廃した世界で、少女と二人で生きてきた少年。しかし彼の生活は突然の来訪者により打ち砕かれ、そして少年は「世界」を知るための旅に出る―。
「ダレカノセカイ」の三都慎司さん最新作「アルマ」。文明崩壊後の地球を描くSF大作です。連載は集英社ヤングジャンプで、単行本は1巻が刊行中。
「アルマ」レビュー
あらすじ
文明が崩壊し、荒廃した世界。廃墟で少女・リチェと共に暮らす少年・レイは、ハムスター型ロボット(?)・ラムダと、生きている人間を探索する毎日。
そのレイたちの前に突如、エアーバイクに乗りあらわれた謎の女性。「キカイどもの匂いがする」と意味不明な言葉を放つ。そして彼女に向けて、腕に仕込まれた銃を向けるリチェ。実はリチェは人間ではなく「ギジン」だった。
同じく腕を銃状に変形させた女性は、リチェと交戦状態に。しかし旧式であるリチェでは歯が立たない。そこに命を賭けてレイが立ちふさがると、なぜか攻撃をやめる女性。「あなた、もしかして『ゼロ』?」
人工フレアによるギジンの掃討が行われることを告げ、去る女性。そして15年ともに過ごしたリチェを失ったレイは、ラムダと旅に出ることを決意。世界の真実を知るために―。
リアルなSF世界
レイがリチェと別れ、歩みはじめるまでを描く「アルマ」第一話。以降、廃墟と化した世界での孤独な冒険が描かれます。これが実に本格的なSF漫画で、SF好きならばゾクゾクする内容。
その世界観を支えているのは、緻密な描き込みによって形成される背景。いきなり背景の話かよ!と言うなかれ。ページをめくれば感じていただけると思いますが、ついつい背景に目が行ってしまうんです。
今にも朽ちそうな高層ビル群。宇宙船?のように見える巨大な人工建造物。とある街(の名残り)に足を踏み入れたレイの前にそびえ立つ高い壁には、「BORDER WALL」の文字と動かなくなった6脚ロボットが…。
これらは一例ですが、背景のそこかしこから「果たして世界で何が起こったのか?」を想像せずにはいられない雰囲気が漂います。週刊連載とは思えないその描写は、一見の価値有り。
迫力のアクション
そしてその世界観をバックに展開されるアクションも「アルマ」の、いえ、三都慎司マンガの大きな魅力。第一話で描かれる、リチェVS謎の女性のバトル。腕を銃器状に変形させ、驚異的な調略力を持って戦う彼女たち。その躍動感がスゴイ。
三都慎司さんは流れるような動作というよりは、動きの中の一瞬を切り取ったかのような作画が特徴的な漫画家さん。「アルマ」でもその魅力が遺憾なく発揮されています。
また後に全身を戦闘体型に変形させていく女性や、彼女が搭乗するエアーバイク(のようなもの)、そしてその母艦であろう巨大な飛行物体など、手抜きのないメカニック描写にも注目です。
果たして「アルマ」とは?
なぜリチェは死ななくてはならなかったのか。「ギジン」とは、「ゼロ」とは何なのか。人類はどうなってしまったのか。そして自分はこの先、どこへたどり着くのか。
何もわからないまま、しかしリチェの最後のメッセージ「すすめ レイ」を胸に、時に挫けそうになりながらも無人の大地を歩き続けるレイ。1巻終盤では、その謎の一端に触れる場所に到着します。
そこで繰り広げられる混乱の中、またしても断片的にレイの前に示されるキーワード「アルマ」。果たしてアルマとは何なのか?それはレイとどのような関わりがあるのか?
…というところで次巻に続く!(笑)なわけですが、徹頭徹尾、雰囲気のあるSF世界を堪能させてくれる「アルマ」。さらなる展開が楽しみです。
まとめ
以上、三都慎司さんの漫画「アルマ」のレビューでした。物語はもちろん、緻密な背景とそこから作られる雰囲気のある世界観が魅力的なSF作品。ぜひレイとともに、世紀末の冒険を堪能してみてください。
「アルマ」は書籍・電子書籍以外でも、集英社のマンガアプリ「ヤンジャン!」で試し読み・購入ができます。
コメント