アンドロイドたちが労働力として、友人として、人間の傍にいることが普通になった世界。
人々が便利さを享受する一方で、アンドロイドに起因する社会問題も。そして謎の事件が起こり―?
人型アンドロイドが普及した社会と、そこで起こる出来事を描く漫画「アンドロイドタイプワン」。リアルな近未来感を味あわせてくれるSF作品です。
作者はYASHIMAさん。連載は双葉社のWEBマンガメディア「WEBコミックアクション」にて。下記ページより第1話と最新更新分が読めます。
なお本記事は、2019年10月刊行の2巻までを読んでのレビューです。
「アンドロイドタイプワン」感想・レビュー
あらすじ
21世紀も半ばを過ぎ、一般家庭にもアンドロイドが浸透する時代。
会社員・沢渡は、汎用アンドロイド「タイプワン」の試用キャンペーンに当選。「ユイ」と名付けたタイプワンと生活を共にし、良好な関係を築いてゆく。
一方、その普及とともに社会問題となっているのが、不法投棄と「野良アンドロイド」の存在。
その中でも噂になっているのが、自律して夜な夜な活動するという、謎の「黒いアンドロイド」。
放置アンドロイドの調査・回収にあたる、アンドロイド保安協会の藤井と山口は、半ば都市伝説化していた黒いアンドロイドに偶然遭遇し、攻撃を受ける。
そしてそれは、沢渡とユイの周辺にも姿を現し―?
リアルなSF感
「アンドロイドのいる近未来」を描くSF「アンドロイドタイプワン」。1巻ではその世界観が、丁寧につづられます。
この「生活に密着したアンドロイドが実際に普及したら、きっとこんな感じだろうな」と思わせる、リアルなSF感が素晴らしい。
例えばユイの初回起動時。
組み立て式のタイプワンが動作チェックを自ら行うために、人間を半径1.5m以上遠ざけたり、起動後にロボット三原則を唱和したり(※この世界ではアンドロイドとロボットの厳密な区別をしていないよう)。
また「刃物の使用規制が2050年に緩和された」ため、包丁を使っての調理ができたり。スリープモード時(≒寝る時)に、肌素材に影響が無いように、一定周期で姿勢を変えたり。
そんな丁寧な描写の積み重ねから、「さもありそうな」リアルなSF感が伝わってきます。
アンドロイドと人間の関係性
タイプワンの外見に関する設定も、ひねりがあってユニーク。
少年とも少女ともつかない、中性的なデザイン。表情はうっすらと、微笑んでいるかいないか、ぐらいの柔らかさ。
頭部や関節部には金属製?のパーツが使われ、パッと見てアンドロイドである、ということがわかる見た目。
人間に似せつつも、決して人間により過ぎない、微妙なバランスが表現されています。
一方、アンドロイドが登場したことによる、人間の変化も。
アンドロイドに共感しやすい性質を持つ人は、「エンパス」と呼ばれたり(沢渡もそれらしい)。またそのデザインに性的なものを感じ、セクサロイド的なサービスを期待する人間もいたり。
アンドロイドの登場は、人間にどのような変化をもたらしたのか?そんなアンドロイドと人間の関係性・距離感がつぶさに描かれるのも、「アンドロイドタイプワン」の面白いポイントの一つ。
謎の黒いアンドロイド
序盤では、比較的穏やかな空気が流れる「アンドロイドタイプワン」。そこにサスペンス風味を加えるのが、正体不明の「黒いアンドロイド」の存在。
アンドロイド保安協会の藤井と山口がマンションの空き部屋で遭遇した、野良アンドロイド「ノイエ」。
「詠唱」(機械言語を発声する!)により、アンドロイドに口頭で強制的に命令できる藤井は、ノイエの停止を試みます。
しかしノイエは詠唱をジャミング、藤井を突き飛ばして逃走します。これはなかなか衝撃的な描写。なぜならアンドロイドはユイのように、
- 人間に危害を加えない
- 人間から与えられた命令に従う
- 上2つに反しない限り自らを守る
というロボット三原則に従って動作するもの。
しかしノイエは明らかに、原則に反する行動を取っていることに。何故ノイエは三原則に縛られずに動けるのか?そしてその目的は?
そして1巻終盤~2巻序盤にかけて、ユイとノイエが思いがけず対峙することに。さらにノイエの謎の能力が、ユイら他のアンドロイドたちに影響を…。
というのが、「アンドロイドタイプワン」の大きな見どころ。ノイエの能力はのちに起こる事件のきっかけとなるのですが、2巻で描かれる緊迫の展開、ぜひ漫画本編でお楽しみを。
まとめ
以上、「アンドロイドタイプワン」感想・レビューでした。リアルな近未来SF描写と、正体不明のアンドロイドによるサスペンス感が魅力のSF漫画です。
それにしても作中で描かれる、人間とアンドロイドの距離感のリアルさがスゴイ。
現実的にタイプワンクラスのアンドロイドが一般的になったら、こんな感じになるんだろうな、と思わせる、細かい描写にゾクゾクきます。SFファンに強くオススメの一作。
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