「AUTOMATON」1巻―謎の戦闘義体のパイロットとなった青年を描くアクションSF

「地底旅行」で脅威の地下世界を見せてくれた倉薗紀彦さんの新作は、異色のヒーローを描くSFアクション「AUTOMATON(オートマトン)」

世界にただ一つの戦闘義体で、数々のミッションに挑むことになった青年を描きます。連載は講談社モーニング・ツー。単行本は1巻が発売、以下続刊です。

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「AUTOMATON」1巻レビュー

労働人口の7割が非正規雇用、犯罪率も高いウルトラ格差社会。主人公は父母を亡くし、寝たきりの祖母と叔母の家で暮らす高校生、明(あきら)。

ロボットやAIの技術に興味を持つが、バイト代も叔母に搾取され、苦しい生活を送る毎日。

そんなある日、謎の人物に拉致される明。目覚めると室内には、水責めに合っている1人の男と、落ちる天井に押しつぶされそうになる5人の元・犯罪者たちが。

倉薗紀彦「AUTOMATON」
[倉薗紀彦 著 講談社「AUTOMATON」1巻より引用]

5分以内にボタンを押せば殺傷装置は止まるが、助かるのは片方だけ。1人を救うか、5人を救うか、それとも何もしないか。果たして明の決断は―。

という、息を飲む序盤の展開。これはいわゆる「トロッコ問題」と呼ばれる思考実験。

かたや善良な1市民。かたや素行に問題のあった5人。どちらを救うか?または救わないのか?決断を迫られる明が取ったのは意外な行動で…。

まあ、どのような行動を取ったのかは本編でお楽しみください。一つだけ書くと意外な、しかし実に主人公らしい行動を、明は取りました。

そしてこれらのシチュエーションは、天才科学者にして世界最大のロボティクス企業のCEOである、トマ・ロック博士の行ったテスト。

高ストレス下における問題解決力の測定テストで高い数値を出した明は、精神転送技術を搭載したマシン「28型装甲戦闘機体 オートマトン」のパイロットに選ばれます。

倉薗紀彦「AUTOMATON」
[倉薗紀彦 著 講談社「AUTOMATON」1巻より引用]

加速度的に進化するテクノロジーにより、かつてない暴力に侵され始めている世界。それを止められるのは、人類唯一の希望・オートマトンだけ、と豪語するトマ・ロック。

以後、ロック社と契約し、オートマトンのパイロットとしてトマ・ロックの与えるミッションに挑む明。そこで彼は何を見ていくのか?というのが物語の基本線。

ここでオートマトンについて。外見は2メートル前後で、筋肉質なアメリカン・ヒーロー的な外見。シンクロすることにより、明自身がオートマトンと一体化します。その稼働時間は30分。

明の肉体は別の場所にあるのですが、10km以上離れると精神転送が途切れるという、という仕様。そのためオートマトンの派遣先上空を、ロック社の専用機が旋回するという仕組み。

倉薗紀彦「AUTOMATON」
[倉薗紀彦 著 講談社「AUTOMATON」1巻より引用]

神経の先々までオートマトンそのものになった明が、トマ・ロックの無茶振りとも言えるミッションに、持ち前の意志の強さ、的確な判断力で応えていきます。

明はおとなしい、普通の高校生。しかし最初のテストも含め、ピンチのときに驚異的な力、というか「人間力」とも言えるものを発揮。

これが実に魅力的でおもしろい。おそらく明は、これから多くの「どうする?」といったシチュエーションに遭遇すると思われますが、彼がそれらをどのように切り抜けるのか?それを想像するとワクワクします。

また倉薗紀彦さんの前作「地底旅行」のリーデンブロック教授を彷彿とさせる、「博士」という肩書とは程遠いトマ・ロックの存在がユニーク。

倉薗紀彦「AUTOMATON」
[倉薗紀彦 著 講談社「AUTOMATON」1巻より引用]

「人類にはもう一刻の猶予もないのだ」と語る彼は、いろいろと含むところのある人物。明がロック社と関わった背景には、明の亡き父の存在もあるようで、それらのピースが今後どのようにつながっていくのか?も見どころ。

というわけで倉薗紀彦さんの「オートマトン」1巻。もっとヒーローを前面に押し出した漫画かと思っていましたが、深みのある物語でいい意味で裏切られた感が。おもしろいです。

そしてもうひとつ、本作では倉薗紀彦さんの描く女性をたくさん見てみたい。だって「地底旅行」では女の子が全然出なかったんだよ!(笑)多方面で期待したい作品です。

AUTOMATON(1) (モーニングコミックス)著者:倉薗紀彦出版社:講談社発行日:2018-05-23

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