「僕たちの新世界」―若者たちは写真の中の未来を変えることができるか?

通天閣を擁する大阪・新世界にて、若者たちが新たな食文化を作り上げる!…漫画ではない(お約束として一応書いておく)。

「バンビ~ノ!」のせきやてつじさん描く時間SFサスペンス漫画「僕たちの新世界」を読みました。

未来が写されたスクラップブックを頼りに、若者三人が運命を変えていくという物語。連載は秋田書店「別冊ヤングチャンピオン」。現在コミックス1巻が発売中です。

「僕たちの新世界」1巻レビュー

不自然な行動を取る女子大生・絢女

東京都日野市に住む大学一年生・西寺遼太と有馬照彦。授業中いつも寝ている女子大生・神薙絢女(かんなぎ・あやめ)が、立て続けに「不自然に」人命救助をする現場を目撃した二人。彼女に声をかけ話を聞くことに。

彼女の亡き祖父には予知能力があり、未来の事件を写真に取ることができた、と話す絢女。祖父の残したスクラップブックを元に、不幸な運命を変えるために日々走り回っていることを、遼太と照彦は知る。

写真が予知する自分の死

絢女のスクラップブックにあった一枚の写真が気になった遼太。そこに写っていたのは大勢の人間の死体。その下には「高幡不動駅前 爆発? 35人死亡」の文字。

写真の中に自分の生首を見つけた遼太。事件が起こる日付は約1年後。気になった遼太と照彦は絢女に手助けを申し出て、とある殺人事件の防止に協力することになるが―?

という「僕たちの新世界」序盤のストーリー。遼太・照彦・絢女が出会い、チームを組むまでの模様が描かれます。

写真から推理するミステリー要素

「僕たちの新世界」は、ジャンルとしては未来を改変する時間ものSF。ですが主人公たちは何ら特殊な能力を持たず、その行動の源となるのが故人の遺した写真である、というのがユニークなポイント。

至って普通の大学生たちが、写真の中の情報とメモだけを頼りに行動する。しかし事件を防ぐには情報が足りない。そのために彼らは写真から情報を読み取り、そして「写真には写らないこと」を推理。そして正解にたどりつく、といったSFにミステリー的な要素をプラスしたおもしろさがあります。

意外なサスペンス展開

未来を改変するのが主な目的…と思いきや、意外なサスペンス展開を見せる中盤~終盤。ただただ祖父の遺志を継ぐために奔走してきた絢女。彼女に遼太・照彦という仲間が出来たことで、新たに写真の真実が見えてくる。

ネタバレ無しなので詳しくは書きませんが、2018年から2019年にかけて起こる事件の数と、絢女が関わった事件の共通点がポイント。果たして絢女の祖父は彼女に何を伝えたかったのか?それが見えて来た時、「僕たちの新世界」が普通のSF作品では無いことに気づきます。

若者たちの切り開く新世界

そんなドキドキする展開。SF・サスペンスとそれ系が好きな人間(私)にはたまらんものがあるのですが、同時に惹き込まれるのが三人の若者の行動

「街を守りたい」という祖父の遺志を継ぐ絢女と、成り行きからそれを手助けすることになる遼太と照彦。青年たちが仲間となり、目的に向かって走り出す勢い。これまでも熱い作品を描いてきた作者・せきやてつじさんならではの気持ちよさがあります。

特に一人で孤独な闘いを続けてきたヒロイン・絢女が魅力的。悲壮な決意の中で時折見せる笑顔。「呪い」ともいえるその運命の輪から、彼女は抜け出すことができるのか?注目です。

まとめ

以上、せきやてつじさんの漫画「僕たちの新世界」1巻のレビューでした。トントンと勢い良くその世界に引き込む手腕はさすが。そしてラストはサスペンス漫画らしい気になる終わり方。次巻も期待です。

本作が特徴的なのは、予知された未来を改変することが、その他の出来事に影響を及ぼさないところ。例えばある事故を防いでも、他の予知が変わることはありません。SF的には珍しいのでは。

そのことが今後の物語にどの程度関わってくるか?は興味深いところ。未来予知や歴史改変ものはその整合性が作品の評価に繋がってくるので、上手にまとめて欲しいところです。

漫画データ
僕たちの新世界 1 (ヤングチャンピオン・コミックス)著者:せきやてつじ出版社:秋田書店発行日:2017-12-20

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