「八百森のエリー」―野菜に人生捧げられますか!?仲卸にかける青春お仕事漫画

ちょっと少女漫画風な美青年。しかし彼は野菜をこよなく愛し、仲卸に命をかける、お仕事青年だった…!

仔鹿リナさんの「八百森のエリー」。単行本は1~3巻まで刊行、以下続刊です。

もうちょっとコメディ寄りの漫画だと思っていたのですが、読むとこれが意外なほどマジメ!なお仕事漫画でした(もちろん笑いもアリ)。

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概要

野菜が大好きな大学4年生・卯月瑛利、通称「エリー」。

農学部教授からの研究の誘いを断り、彼女とも別れた彼が目指す仕事は、「仲卸(なかおろし)」。

青果流通の中間にある仲卸で、野菜を通して「繋ぐ」ことをやってみたい。農業と売り手・消費者を繋げたい。

そんな目標を持ってエリーが入社したのは、宇都宮中央卸売市場内で北関東の売上1・2位を争う仲卸業者「八百森青果」。

出勤は早朝2~3時、労働時間は平均12時間。夏は暑く冬はクソ寒く、平日は夜遊びもできず、友達とはやがて疎遠になる過酷な労働環境。

仔鹿リナ「八百森のエリー」1巻
[仔鹿リナ 著 講談社「八百森のエリー」1巻より引用]

「野菜に人生捧げられますか!?」

先輩の喝を受けながら、同期入社の金髪リーゼント・大虎倫珠(おおとら・のりたま)と共に、エリーの仲卸人生が始まる…!

トラブル・難問の数々

以上が「八百森のエリー」のスタート。以後、エリー・のりたまらを中心に、八百森社員の青果仲卸業が描かれます。

しかし仕事にはトラブルが付き物。エリーの入社直後、市場内で早速トラブルが。50万円分のスナップエンドウのケースにフォークリフトが突っ込み、廃棄の危機に。

仔鹿リナ「八百森のエリー」1巻
[仔鹿リナ 著 講談社「八百森のエリー」1巻より引用]

そこで野菜をこよなく愛するエリー。新鮮なスナップエンドウを捨てるなんて…!と、発奮。廃棄をせずに、事故った野菜を活かす手段を発案。

果たしてスナップエンドウは無事に店舗に並ぶのか?といった展開に。これが意外にドキドキ。思わずエリー頑張れ!と手に汗握ってしまいます。

仲卸のお仕事

ほかにも、じゃがいもをより美味しく売るために知恵を絞ったり、なつかしの青臭いトマトを求める人の思いに応えたり、スーパーのバイヤーからの無理難題を解決したり。

青果のプロフェッショナルである「仲卸のお仕事」が、笑いを混じえて実につぶさに描かれます。

仔鹿リナ「八百森のエリー」2巻
[仔鹿リナ 著 講談社「八百森のエリー」2巻より引用]

生産者と販売店・消費者を繋ぐ、エリーたち仲卸。一般の消費者としては絶対に意識することのないお仕事です。

が、「八百森のエリー」を読むと、仲卸業に携わる人達が青果の流通に如何に尽力しているかが、良くわかる。

野菜や果物に対する情熱、そして青果に関わる人達へのリスペクトを、作者・仔鹿リナさんの筆致からひしひしと感じます。

社会派エピソードも

特に印象的だったエピソードは、2巻収録の椎茸編。

私達が普段スーパーで買っている椎茸のほとんどは、人工的な培地に菌を植えて栽培する「菌床栽培」もの。収穫期間が短く、安定供給できるのが強み。

一方、木に穴をあけて菌を植える「原木栽培」は、肉厚で風味よくしっかりした椎茸を育てることができるが、値段が高い高級品も多い。

浅学ゆえ椎茸の育て方に種類がある、というのを初めて知り、とても勉強になりました。

と同時に興味深かったのは、栃木の原木栽培農家が、震災の原発事故で大損害を受けたという話。

仔鹿リナ「八百森のエリー」2巻
[仔鹿リナ 著 講談社「八百森のエリー」2巻より引用]

丁寧に除染などを行い、6年かけて栽培ができるまでにこぎつけた、という農家の苦労。

さらに作品内ではその農家の息子が、原木栽培に負けないぐらいおいしい、菌床栽培による椎茸を目指す、という話が描かれ、農産業の奥深さの一端に触れました。

エピソードではエリーとのりたまが、原木栽培による椎茸を大量に所望する顧客に対し、さてどのように椎茸を工面するか、という仲卸らしい悩みが描かれます。

さてエリーたちはどのように対応したのか?それは読んでのお楽しみ。

まとめ

以上、仔鹿リナさんの「八百森のエリー」レビューでした。

青果に人生を捧げる若者たち。基本コメディータッチながらも、仲卸という仕事がきっちり描かれ、その端々から「野菜愛」が伝わってくる。そんなお仕事漫画でした。

なおレビューではあまり触れませんでしたが、エリーの相棒となるのりたま君がおもしろい。

ヤンキーリーゼントで態度もデカいが、リーゼントが崩れると一気に弱気になる、苺農家の息子。

エリーに負けず劣らずの野菜愛を持つ彼の活躍も、「八百森のエリー」の見どころの一つ。エリートのりたまの仲卸魂を、ぜひ楽しんでください。

八百森のエリー(1) (モーニングコミックス)著者:仔鹿リナ出版社:講談社発行日:2018-01-23

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