今、もっとも勢いのある漫画の一つ、といって間違いないでしょう。
週刊ヤングジャンプ連載、野田サトル氏描くアクション・サスペンス漫画「ゴールデンカムイ」です。
「カムイ」というタイトルの通り、随所にアイヌ文化の描写を取り込み、それがまた本作の魅力の一つともなっています。
主人公は1巻表紙の元軍人・杉元。あだ名は「不死身の杉元」です。
そしてこちらが杉元の相棒となり、行動を共にするアイヌの少女・アシㇼパ。
白い狼を従えるその姿。荘厳な雰囲気を持ちますが、その魅力は後ほど…。
あらすじ
日露戦争に従軍した元陸軍兵・杉元は、その驚異的な戦闘力・身体能力から「不死身の杉元」とあざなされる。
幼馴染みで、また戦士した親友の妻でもある女性の病気治療を助けるため、戦後は北海道で砂金を探す日々。
そんな中、杉元と共に砂金を探す怪しげな男は、彼に「面白い話」をはじめる。
日本人に対抗するため、一部のアイヌが軍資金として密かに貯めていた20貫(約75kg)の金。
それを一人の男がアイヌを皆殺しにして奪取、北海道のどこかに隠蔽。
やがて死刑囚として男は網走監獄に収監。
外の仲間に知らせるため、死刑囚たちの体に埋蔵金のありかを記した入れ墨を施す。
「脱獄しろ。成功した奴には金塊を半分やる」とほのめかして。
話の最中、「しゃべりすぎた」と男に襲われる杉元。
与太話と聞き流していたが、襲われたことで逆にその話が真実だと確信。
そしてヒグマに襲われた男の背中には、果たして入れ墨が…。
入れ墨を守るためにヒグマと戦う杉元は、偶然いあわせたアイヌの少女・アシㇼパに助けられる。
カネが必要な杉元と、殺されたアイヌの中に自分の父親もいたと言うアシㇼパ。
アイヌの埋蔵金を探すため二人は協力関係を築くが、埋蔵金を狙うは彼らだけにあらず―。
「ゴールデンカムイ」感想
紙書籍版では10巻まで発売されていますが、私は1~9巻までを読了。
今更ではありますが、文句なくおもしろい!
「このマンガがすごい!2016」のベスト10ランクイン作品(2017ではベスト50にランクイン)、「マンガ大賞2016」では大賞も取っています。
そのおもしろさは、
- 埋蔵金を巡る骨太なアクション
- アイヌ文化とグルメ
- バトルと笑いのバランス
と大きく3つに大別できます。
埋蔵金を巡る骨太なアクション
杉元・アシㇼパ勢。
陸軍中尉・鶴見率いる大日本帝国陸軍第7師団。
元・新撰組の土方・永倉中心の土方勢。
脱獄した囚人たちの入れ墨を巡って争うのは、この三勢力。
その多くが軍人・武人なのでガタイが良くて血気盛ん。まさに「出会って3秒でバトル」状態。
敵と認識するやいなや、銃・刀・格闘技などを駆使して血みどろの戦いを繰り広げます。
北海道が舞台ということで戦うのは人間だけにあらず。時にはヒグマや狼との戦いも。
特にヒグマの存在はただただ恐怖。ヒグマの脅威を描いた作品は多々あるので、興味があればググってみてください。ガクブルです。
そんな「殺るか殺られるか」の世界。金がかかっているからには当然策謀や裏切りも当たり前。
かつての敵との共闘・駆け引きもあって、先の読めないスリリングな展開。
物語に引き込まれます。
アイヌ文化とグルメ
「ゴールデンカムイ」の魅力の一つとなっているのが、リアリティーのあるアイヌ文化の描写。
アイヌの少女・アシㇼパをはじめ、多くのアイヌ人が登場。その文化が詳細に描かれます。
言葉・信仰・風習・衣服・狩猟方法など、興味深い内容です。
特に目を引くのがアイヌの食事。
劇中ではアシㇼパが作ることが多いのですが、獲物の解体から各部位の調理方法・食べ方がリアル。
そんなアイヌ料理を見ていて「食べたい!」と思うこと、数知れず。
捌きたての熊肉・鹿肉とか贅沢!ですね。
そしてアシㇼパに動物の脳みそなど、ちょっとグロテスクな部位を勧められる杉元。
「ヒンナヒンナ(食事に対する感謝の言葉)」と、虚ろな目をしながら食べる杉元のつぶらな目が好きw。
バトルと笑いのバランス
日露戦争を生き残った、ほぼ現役の軍人達がメインキャラクター。
また金品をめぐる争いということで自然、殺伐になりがちな話。
ですが「ゴールデンカムイ」のいいところは、そこに「笑い」をバランス良く織り交ぜているところ。
杉元とアシㇼパのやり取りのみならず、仲間となる脱獄王・白石の存在が、物語に笑いの華を添えています。
容赦のない争いが描かれつつも、物語には常に笑いが。
両者が共存しているのは作者・野田サトル氏のバランス感覚によるものなのでしょう。
特に笑ったのは、第6巻収録の第51話「殺人ホテルだよ全員集合!!」から第55話「鰊七十郎」の扉絵まで。
ある程度の年代ならばピンとくるでしょう。ドリフのパロディが随所に埋め込まれています。
猟奇的な囚人が経営するホテルから脱出する一行。
階段が滑り台になって「何なんだ!?この仕掛は」と突っ込む杉元。
大笑いしました。
まとめ
以上、漫画「ゴールデンカムイ」1~9巻までを読んだ感想。
単行本も10巻と二桁に突入していますが、テンポを維持しつつどんどん面白くなってきている作品。これからも目が離せません。
ちょっとショッキングな描写もあるので、苦手な方には注意を促しておきます。
しかしそれを踏まえても読まずにおくのはもったいない、オススメのアクション漫画。
未読の方は是非その世界観に触れてください。一気読み必至です。
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