定年退職後に就いた清掃業バイト。しかしそこは風俗店だった!そうとは知らずに働き始めた職場で、中年男性が体験する驚きの日々とは。
安堂ミキオさんの「はたらくすすむ」1巻を読みました。連載はヤングマガジンサード。一般コミックです(念の為)。
あらすじ
小さな下着メーカーを40年勤め上げ、定年退職した長谷部進66歳。妻を乳癌で亡くし、娘と二人暮らし。しかし在宅漫画家の娘に疎ましがられ、顔を合わせないようアルバイトをすることに。
清掃員として応募した店「世界観」に採用された進だったが、そこは嬢が男性客にサービスをする風俗店、いわゆる「ピンサロ」だった。
妻ひとすじで生きてきた進にとっては、ショッキングな職場。「女の人の見たくない部分を見てしまった」と転職を考える。
しかし営業終了後、床に散らばるミントタブレットに嬢たちの「本気」を見た進。「僕はまだ何もしていない」と奮起。仕事への情熱を燃やし始めるー。
「はたらくすすむ」1巻レビュー
図らずも新たな職場となった風俗店で、第二の仕事人生を歩むことになった、マジメな初老男性を描く「はたらくすすむ」。これまでの人生とは180度ことなるアンダーグラウンドな世界で、彼が新たな気付きを得ていく様子が綴られます。
劇中でメインの舞台となるピンサロ店の様子が、なかなか興味深いもの。自分はこういうお店にお世話になったことが無いのですが(ホントよ)、サービスを受ける男性と施す女性、そしてその裏方となる進らの仕事、良い勉強になります(何の)。
その中で描かれる、進と嬢たちとの人間ドラマ。この漫画が成人系ならば、進を中心にしたハーレム展開となるところ。ですが一般誌連載のため、もちろんそっち方面には転がらず。店で働く女の子たちの仕事への向き合い方に当てられて、66歳からゆっくりと、新たな成長をしようとする進の姿。読んでいると微笑ましい気持ちに。
しかし、読んでいて若干感じた違和感もいくつか。その中で特に大きいのは、進の金銭に対する感覚。エピソードの中で、進が体調不良の嬢に給料の肩代わりを提案したり、自腹を切って高級な熊手を購入するシーンがあります。
裕福ではないけれど年金も受給しており、特にお金には困っていない進。定年後に働き始めたのも、娘と顔を合わせづらいから。働くことに対する大きな目的の無い彼が見せる、お金に対する無節操さ。体を張って銭を稼ぐ嬢たちに較べ、大きな壁を感じます。
また嬢たちの人柄や仕事ぶりを見て、風俗業界の大変さを感じ、そして自らの人生を振り返ったりもするのですが、進の気づきは基本、彼の脳内理解なので、ちょっとひとりよがりかな、とも。嬢たちとのハードなコミュニケーションで、進の脳内を揺さぶって欲しい。
まとめ
以上、安堂ミキオさんの「はたらくすすむ」1巻のレビューでした。
ピンサロ業界に足を踏み入れた元プロ・サラリーマンであるおじさん、という魅力的な設定と、高レベルなビジュアルを併せ持つ漫画。今後は進が何を目指して、何を得ていくのか、という方向性と、もっとガツン!と来るエピソードを期待したいところです。
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