「恋する仏像」1巻―仏師の世界を生きる青年たちの葛藤と成長

「仏師」の世界に生きる二人の男子高校生。しかし認め合いながらもその心はすれ違う―。

講談社ITANでWEB連載されている会田薫さんの漫画「恋する仏像」を読みました。

コミックス1巻は7月7日発売。背中合わせの男子がピンクの蓮(ハス)をはべらせてアンニュイな表情を漂わせていますが、イヤンな漫画ではありません。

恋する仏像 - 会田薫|ITAN|講談社コミックプラス
寡黙で人付き合いが苦手な無我は、 人気者で自分とは正反対の幼なじみ・零雄とともに、 幼い頃から仏像彫刻に打ち込んでいた。 無意識に零雄に合わせ、力をセーブしていると 指摘された無我は、徐々にその実力を開花、彫刻の楽しさに目覚めていく。 一方、零雄は、無我の変化に焦りを感じ始め……!? 仏像彫刻に打ちこむ...

講談社コミックプラスで試し読みができます。

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あらすじ

幼馴染みの男子高校生・無我(むが)と零雄(れお)。仏師(仏像制作に従事する人)である零雄の父の下で、仏像制作の修行に励む。

かつて零雄に救われ仏師の道に入り、腕を上げていく無我。

一方、腕はあるが仏師としての「心」が無く、その道から外れつつある零雄。

すれ違っていく二人の心。そして無我の実力を認めた零雄の父は、彼に言う。

厳しい仏師の道を本気で目指すならば一人前にしてみせる、しかし今後零雄には遠慮するな、と―。

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「恋する仏像」1巻レビュー

仏師の青春

とても!良かったです。

基本は男子高校生の友情を描いた青春物語ですが、その舞台が「仏師」の世界というのが興味深く、おもしろい。

まじめで朴訥、しかし芯の強い無我。

友人関係も仏像づくりも持ち前の器用さでこなす零雄。

もともとは零雄がきっかけで仏像の世界に入った無我ですが、その技量はいつしか零雄を追い越してしまう。

自分の恩人でもある零雄とともに、仏師の道を邁進したい無我。

しかし浮ついた心で、マジメに取り組もうとしない零雄。

そんな零雄に焦れ、もどかしい様子の無我の描写に、読んでる方も「くーっ!」となんだか歯噛みしたくなる。

そして一方の零雄。

その道の先輩でそこそこ実力もあり、常に無我の上に立っていたつもりの彼。

だがいつの間にか実力で追い越され、しかしそれを受け入れられない。

これ良くわかるなぁ…。頭ではわかっていても、決して認めたくない悔しい現実。

二人の間にあるのは常に「仏像」

そんな二人がすれ違いつつも、その基本線に常にあるのは「仏像」。

勉強でも、スポーツでもなく、精神と技量が試される仏師の世界。

青臭さと荘厳さが入り混じった不思議な空間がコマの中に形作られています。

印象的なのは無我の内面。彼は僧侶である父に、「どんなに人から非難されても正しい行いをせよ」と育てられた青年。

重ねて生来の生真面目さゆえ、小学生時にはイジメの対象となったことも。

これ、辛いですよね。崇高で正しい「教え」ゆえに、世俗の現実と折り合いが付けられないこと。幼い心ならばなおさらです。

その苦しみの中にある無我を、木彫りの地蔵ボサツをつくって精神的に救ってくれた零雄。

彼を敬愛する無我だが、零雄は二人を結びつけていた世界から離れつつある。

なんて苦しい…!

複雑な胸の内の無我。しかし木の中から彼は仏の声を聞き、「カンカンカン」とリズムよく打つノミによって、やがて発露する仏の姿。

その美しさが確かな画力と相まって読者の脳裏に焼き付きます。

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まとめ

会田薫さんの「恋する仏像」。

仏師という特殊な世界を舞台に、胸の苦しくなるような青年たちの姿を描く、読み応えのある漫画でした。

巻末の予告では次巻で完結とのことですが、せつなく、濃厚な物語の続きが楽しみです。

漫画データ
タイトル:恋する仏像(1) (ITANコミックス)著者:会田薫出版社:講談社発行日:2017-07-07