この短編マンガ集がおもしろい!2018

2018年ももうすぐ終わり。今年も多くの短編漫画集を読みましたが、その中からおもしろかったオススメの単行本を「この短編マンガ集がおもしろい!2018」としてご紹介。

選出は2018年1月1日から2018年12月の記事作成現在までに、紙書籍または電子書籍のいずれかが刊行された単行本から。では行ってみよう!

スポンサーリンク

2018年刊行のおすすめ短編マンガ集

水上悟志短編集「放浪世界」

水上悟志短編集「放浪世界」 (ブレイドコミックス)水上悟志:マッグガーデン

水上悟志さんの「放浪世界」。全74PとボリュームのあるSF作品「虚無をゆく」ほか、現代劇、時代劇風など、バラエティに富んだ短編5編を収録。

「惑星のさみだれ」「スピリットサークル」など、数多くの人気漫画を世に送り続けている水上悟志さん。そのキャリアで培った「漫画のおもしろみ」が凝縮されて詰まりまくっています。


[水上悟志 著 マッグガーデン「水上悟志短編集「放浪世界」」より引用]

注目作は、やはり「虚無をゆく」。団地で家族・友人と平和に暮らす少年・ユウ。しかし彼の住む世界の外には「虚無」が広がり、そして徐々に世界の秘密が顕になってくる、という趣向。様々なSF要素をかけ合わせて、新しいものを作り上げるその手腕はさすが。

魔法はつづく

魔法はつづく (リイドカフェコミックス)オガツカヅオ:リイド社

オガツカヅオさんの「魔法はつづく」。全10編を収録。

オガツカヅオさんと言えば「りんたとさじ」「ことなかれ」など、ホラー作品の名手。この「魔法はつづく」もその延長線上にありますが、「怖い」がメインの作品ではない。むしろ「怖い」のその先にある「味わい」が、心に残る作品群。

オガツカヅオ「魔法はつづく」
[オガツカヅオ 著 リイド社「魔法はつづく」より引用]

カラオケボックスに集った、少し様子のおかしい家族を描く「かえるのうた」。入院中だが猫の目を通して町を見るおばあさん、その孫が体験する不思議「猫のような」。主人公女性の人生の節目に、都度すがたを変えて現れる謎の存在を描く「よふさぎさま」。

オガツカヅオさんの絶妙なストーリーテリングと、繰り返し読みたくなる画力。飽きのこない魅力を持つ短編集です。「こくりまくり」のキメゴメさんは忘れられないキャラクター。

ベランダは難攻不落のラ・フランス

ベランダは難攻不落のラ・フランス (CUE COMICS)衿沢世衣子:イースト・プレス

「シンプルノットローファー」からその魅力に病みつきになった漫画家・衿沢世衣子さん。様々な媒体で発表した短編を一冊にまとめた「ベランダは難攻不落のラ・フランス」。

ちょっと変わったタイトルは、収録作「ベランダ」「難攻不落商店街」「ラ・フランス」の3編から。

衿沢世衣子「ベランダは難攻不落のラ・フランス」
[衿沢世衣子 著 イースト・プレス「ベランダは難攻不落のラ・フランス」より引用]

男子小学生と天文台を管理する少女の交流を通して、宇宙への憧憬を描くボーイ・ミーツ・ガール作品「リトロリフレクター」、隣に住む少女とのベランダを通したセンシティブな交流を描く「ベランダ」など、ジャンル「衿沢世衣子」が存分に楽しめる短編集。

各話の最後には作者による解説コメント付きで満足。ZINE(ジン)のような個人誌に掲載された漫画まで収録されていることを、大いに評価したい。

制服ぬすまれた

制服ぬすまれた (flowers コミックス)衿沢世衣子:小学館

もういっちょ衿沢世衣子さんの単行本から、短編集「制服ぬすまれた」。主に小学館flowers系列に発表された5編を収録。

同一記事の中で、同じ作者の漫画をもう一冊紹介するとはどういうことか?それは衿沢世衣子の単行本を1年に2回も読むことができてHappyということさ!

衿沢世衣子「制服ぬすまれた」
[衿沢世衣子 著 小学館「制服ぬすまれた」より引用]

本作が特徴的なのは、これまでの衿沢世衣子作品に較べ、暗め・ダークな話が多めであること。特に登場人物の99%が男性、それも裏社会の人間を描く「カラスが鳴くから」は異色中の異色。

普段の作品がラブリー衿沢世衣子によるものだとしたら、本作は明らかにブラック衿沢世衣子によるもの。平成の終わりに氏の新たな一面を見るとともに、そのさらなる可能性を感じた短編集。

にわにはににん

にわにはににん (ビームコミックス)中野 シズカ:KADOKAWA / エンターブレイン

全話「庭」に絡めたストーリーが展開される、中野シズカさんの「にわにはににん」。全5編を収録(プロローグ・エピローグあり)。

ほぼアナログの原画と、丁寧に重ねられたスクリーントーンから生まれる、職人的にしてアーティスティック、それでいて読みやすさを損なわない描写はお見事。

中野シズカ「にわにはににん」
[中野シズカ 著 KADOKAWA/エンターブレイン「にわにはににん」より引用]

幻想的で夢のあるストーリーを楽しんだあと、さらに絵をじっくりと眺める、この贅沢さ。漫画ならではの楽しみを存分に味わえます。モノクロだけど何だか、庭のグリーンが浮かび上がってくるような。

電子書籍サイトではおそらくプロローグ部分が試し読みできると思うので、その独特の世界観に触れてみてください。

悪い夢のそのさき…

悪い夢のそのさき… (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)うぐいす祥子:集英社

うぐいす祥子さんの「悪い夢のそのさき…」。表題作1~5話と、様々な媒体に発表されたホラー短編5作を収録。

基本的に黒を貴重した作画の中に、怖さ・グロさ、そしてユーモラスさが詰め込まれているうぐいす祥子さんの漫画。しかし本作は読後にモヤモヤ、嫌気な感じが残る短編が多め。

うぐいす祥子「悪い夢のそのさき…」
[うぐいす祥子 著 集英社「悪い夢のそのさき…」より引用]

エキセントリックな恋人に疲れ果てた男。彼女にあるスーツケースを埋めるための穴を掘るよう頼まれて…「彼女のスーツケース」。古い洋館に盗みに入った若い男女、そこには鎖に手を繋がれた男、そして恐怖の顛末が…「囚われ人」。

などのホラー短編群。うぐいす祥子テイストあふれるホラー感、そしてラストで世界が反転するような二重の恐怖、タイトル「悪い夢のそのさき…」そのものが感じられます。

彼女は宇宙一

彼女は宇宙一 (ビームコミックス)谷口 菜津子:KADOKAWA / エンターブレイン

SFコメディなど6つの短編を収録した、漫画家・イラストレーターである谷口菜津子さんの初ストーリー漫画集。

モテ男が気になるミステリアスな彼女は、果たして本人が言う通り宇宙人なのか?「彼女は宇宙一」。カロリーを巨大化やパワーに変換する巨大ヒーロー、しかしその中身は普通の女の子「カロリーファイターあいちゃん!」。

谷口菜津子「彼女は宇宙一」
[谷口菜津子 著 KADOKAWA / エンターブレイン「彼女は宇宙一」より引用]

思春期の女の子たちの複雑に絡み合った感情を、お弁当事情を通して描く「ランチの憂鬱」など、独特のおもしろさを持つ短編たち。さわやかなような、そうでないような、不思議な感覚。

個人的に注目しているのは、谷口菜津子さんの描く線。一見煩雑なように見えて、実はものすごく読みやすい、不思議でポップな魅力のある作画です。

顔ビル/真夜中のバスラーメン

顔ビル/真夜中のバスラーメン呪みちる:株式会社トラッシュアップ

魅力的でクオリティの高いホラー短編を世に送り続ける、呪みちるさんの「顔ビル/真夜中のバスラーメン」。現在は紙書籍のみの発売。タイトルは収録の短編「顔ビル」と「真夜中のバスラーメン」から。

カバーの女性は、高速道路を舞台にしたホラー「第三京浜の追跡者」のヒロイン・三島みどり。時速2百キロを超える速度を出すと、車の幽霊が出ると噂の第三京浜。ドライブデートを楽しむ男女がそこで見たものは?というお話。この三島みどりが強烈でインパクトあり。

呪みちる「顔ビル/真夜中のバスラーメン」
[呪みちる 著 株式会社トラッシュ・アップ「顔ビル/真夜中のバスラーメン」より引用]

個人的に気に入った作品は「ヤキトリ奇談」。年上の部下に連れられて、ゲテモノを出す昔ながらのヤキトリ屋に来たキャリアウーマン。以来、その味にハマってしまった彼女が体験する恐怖。

力強くも美麗な呪みちるさんの作画。そして読者の想像を超えるストーリー展開。短編ながら、確実な満足感を与えてくれるホラー漫画集です。

私のともだち

私のともだち (ウィングス・コミックス)那州雪絵:新書館

「魔法使いの娘ニ非ズ」終了後に刊行された、那州雪絵さんのホラー短編集「私のともだち」。全6編を収録。

一人は人間、一人は幽霊として生きる、双子の少女たち。その成長の顛末を描く「水にうつる思い出」。学校の旧校舎に出る”伝説の怪物”と友達になった、いじめられっ子の少女。しかし旧校舎には人が死んだとの噂が…「私のともだち」。

那州雪絵「私のともだち」
[那州雪絵 著 新書館「私のともだち」より引用]

かつての少女漫画雑誌にあったような「とんでもなく怖いホラー読み切り」をイメージして描かれたホラー短編の数々。なるほど、確かにこんな漫画をおっかなびっくり読んでいたな(笑)、という雰囲気があります。

那州雪絵さんの絵というのは決しておどろおどろしくはないのだけれど、それでも確実な怖さがある。そこに絶妙な巧みさを感じます。

このかけがえのない地獄

このかけがえのない地獄【電子限定特典付き】 (電撃コミックスNEXT)アッチあい:KADOKAWA / アスキー・メディアワークス

「オゲハ」の作者であるoimoさんが別名義「アッチあい」として描いた短編をまとめた「このかけがえのない地獄」。全5編を収録。

読みやすい絵と、スムーズな話の運び方。そして読んだあとに心にひっかかる「ねじれ」。そんな独特の風味が印象的。

アッチあい「このかけがえのない地獄」
[アッチあい 著 KADOKAWA / アスキー・メディアワークス「このかけがえのない地獄」より引用]

オススメは「4番目のヒロイン」。主人公は漫画週刊誌に連載されている人気ラブコメ漫画の「3番目のヒロイン」。主人公に選ばれたいという願望を持つ彼女の前に現れたのは、戦争漫画の新キャラ。

ラブコメの中で異質な存在である彼女が、次々と恋愛漫画のお約束をぶち破り、やがて3番目のヒロインの心にさざなみを起こしていく、という漫画世界をメタった漫画。意外性のあるラストがおもしろい。

まとめ

以上、2018年に刊行された短編漫画集の中から選んだ、「この短編マンガ集がおもしろい!2018」でした。一年の振り返り、年末年始のお供にどうぞ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました