都市で起こる難事件・怪事件など、都市伝説にまつわる怪現象を解決するのは市役所の特殊事案課―。
そんな市役所の一部署「ことなかれ課」を描くホラー漫画、「ことなかれ」1巻を読みました。
青のような緑のような、微妙な色合いが不思議な雰囲気を醸し出すカバー。描かれている人物はヘッドホンを使って霊の声を聞く少女・大葉しずく。主要登場人物の一人です。
「ことなかれ」の原作は星野茂樹さん、作画はオガツカヅオさんが担当。
星野茂樹さんは芳文社・週刊漫画TIMESに長期連載中の「解体屋ゲン(こわしやゲン)」の原作者。
オガツカヅオさんは「りんたとさじ」など独特な雰囲気のオカルト・ホラーを描く漫画家さん。
そんな実力派の二人が手を組んだ本作「ことなかれ」は朝日新聞出版の「Nemuki+」に連載中です。
「ことなかれ」1巻レビュー
概要
漫画「ことなかれ」は基本1話完結形式のホラー漫画。
西久留目(にしくるめ。誤字ではない)市役所の特殊事案対策室・通称「ことなかれ課」の面々が、管轄で起きる怪奇現象に対峙する様が描かれます。
「ことなかれ課」が立ち向かう事案は、心霊現象やUMAなど様々。各話が微妙につながりを持っていたりもします。
メインとなる人物は、同課所属で霊感・科学的知識を持たない家持チーフ。
積極的に事案を解決する、というよりは狂言回し的な存在。「妖怪ハンター」の稗田礼二郎を彷彿とさせます。
怪奇現象を主に解決?するのは、ことなかれ課所属で霊感を持つ女性たち。
そしてオガツカヅオさんの過去作「りんたとさじ」に登場するリン太とさじ(佐藤順子)の二人です。
これぞ怪奇!なホラー漫画
いいですね~。「ホラー漫画」といっても色んなタイプの漫画がありますが、「ことなかれ」は正統派の怪奇マンガという感じ。面白いです。
そして予備知識無しで読んだのですが、オガツカヅオさんの過去作の主役・リン太とさじの二人が出てきてビックリ。うれしい驚き。
ホラー漫画というのはすごい難しいジャンルですよね。
人って、怖がらそうとするとかえって怖がらないものですから。
漫画だと特に過激な表現に頼りすぎて興ざめしたり、行き過ぎるとギャグ漫画になったりして。
しかし本作「ことなかれ」はホラー感が絶妙。
やり過ぎることなく、きっちりホラー漫画の枠内におさまっています。
各話で扱っている題材はオーソドックスな内容ながら、魅力的なストーリーと安定した作画で読者をきっちりと怖がらせてくれます。
個性豊かな登場人物
物語を引っ張るのは個性豊かな登場人物たち。
- なりはみすぼらしいが独特な凄みを感じるチーフ・家持(霊能力無し)
- 小柄でいつも笑顔。人畜無害そうだが実は有能?な大西課長
- 家持が見つけた能力者にして主婦の明日香(秘密あり?)
- 明日香のスカウトしたアルバイトで、ヘッドホンのジャックを使って霊の声を聴く少女・大葉しずく
- ことなかれ課の創設に起因している?朗らかな女性・早川杏奈
以上、ことなかれ課のメンバーに、後述のリン太とさじを加えたキャラクターたち。
彼らがそれぞれの技能を活かして、一般人では手に負えない怪事件に対峙します。
明日香はちょっと怖そうな設定が見えるんですが、今後、彼女の話も描かれるのかな?
あの「リン太とさじ」も活躍
「ことなかれ」を読んで意識したのは、やはりリン太とさじの再登場。「りんたとさじ」のファンとしては予想外の嬉しさ。
「りんたとさじ」は2009年に単行本化された漫画。彼らが出会う怪奇現象の数々を、1話完結形式で描いた恐怖漫画です。
この「ことなかれ」ではメインはあくまでも「ことなかれ課」なので、二人は出たり出なかったり。
リン太とさじが主人公ではないので純粋な続編、というわけではありません。なので「りんたとさじ」を読んでいなくても充分に楽しめます。
が、クールなリン太と彼にベタ惚れなさじのキャラクターを知っていた方が、より物語に愛着が湧くこと請け合い。
「ことなかれ」を読む前でも読んだ後でも、一読をオススメします。
第4話「引き寄せの法則」が怖い
1巻に収録されている全6話のうち、特に面白かったのは第4話「引き寄せの法則」。
行方不明の部長を探すため、閉鎖された精神科病棟に潜り込む映像研究会の女子高生三人。廃病院内で彼女たちが見たものは?というお話。
行方不明・精神科病棟・映像研究会といったいかにも都市伝説・怪奇現象なキーワード。
これこれ、このベタさ(笑)。でもこれをきっちり「怖い話」に仕立て上げているのが素晴らしい。
幻想的とも言える、高校生たちのひと夏の恐怖体験とその結末。何度読んでも楽しめる怖さ・おもしろさがあります。
まとめ
以上、怪奇漫画「ことなかれ」1巻の感想でした。
市役所の特殊事案対策室という独特の設定と、熟練の手腕で描き出される恐怖の数々。クオリティの高いホラー漫画を読んだ!という満足感がありました。
そして1巻最終話のラストはめちゃくちゃ気になる終わり方。その引っ張り方は無いわー(笑)。単行本派なので2巻の発売を首を長くして待ちたいと思います。
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