巨匠の新作?超特急の行く末は―漫画「手塚治虫 マリン・エクスプレス」

その昔、日本テレビ系列『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』の中でスペシャルTVアニメが放送されており、手塚治虫由来の作品が数多く制作されました(手塚作品以外もあり)。

今回ご紹介する漫画「手塚治虫 マリン・エクスプレス」はそんなアニメの一つ、「海底超特急マリンエクスプレス」をコミカライズしたもの。集英社ヤングジャンプコミックスより既刊2巻が刊行、以下続刊です。

アニメ「海底超特急マリンエクスプレス」は手塚治虫作品のスター・システムを最大限活かし、人気キャラクターが登場するオリジナルストーリーを作り上げた作品。なので原作漫画が存在しません。1979年の初放映から30年以上を経ての漫画化。制作は少年漫画を数多く手がけられている池原しげと氏と手塚プロダクションが担当しています。

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あらすじ

2050年のロス。探偵・伴俊作(ヒゲオヤジ)は依頼人・シャイロックを殺した犯人を追い負傷。夢の超特急・マリン・エクスプレスに乗り込む犯人(スカンク草井)を見かけ、彼を助けたブラック・ジャックと共に乗り込む。

ロスから東京まで、パイロット・マサトとタマミの操縦で1万5千2百キロの海底を横断するマリン・エクスプレス。開発者でマサトの父親であるナーゼンコップ(お茶の水)博士、そしてマサトの弟アダム(アトム)には何やら秘密が…。

謎の男・ロック、怪しげな動きを見せるキリコ、シャイロックとナーゼンコップの盟友であるアメリカ国務省長官・クレジットなど、一癖も二癖もある乗客を乗せて海中を走るマリン・エクスプレス。アイドルグループ・マリンEXが夢の旅に華を添える中、ヒゲオヤジは真相にたどりつけるのか。そして超特急は無事東京に着くことができるのか?

「手塚治虫 マリン・エクスプレス」感想

手塚治虫キャラが数多く登場するSFサスペンス。最近、手塚治虫作品のスピンオフ漫画を良くみかけます。それらの多くは作画担当の漫画家さん独自の作風となっていますが、この「マリン・エクスプレス」の作画は手塚治虫の描く漫画そのもの。作者・池原しげと氏はかつて手塚プロダクションにいたり、手塚治虫漫画の代筆もされたことがあるそうで、納得の作画です。

池原しげと – Wikipedia

そして本作では原作アニメ「海底超特急マリンエクスプレス」とは設定が異なる箇所がいくつか。

まずオリジナルではパイロットだったロックですが、悪役のイメージが強いということで「火の鳥」よりマサトを起用。ロックは一転、謎の男という立場に。またマサトの登場で同じく「火の鳥」からタマミが彼の相方に。「火の鳥」ファンならニヤリとくる配役ですね。

本作の新設定であるアイドルグループ・マリンEXにも手塚ファン感涙の設定が。なんとボーカルを勤めるのはあの和登千代子!「三つ目がとおる」のヒロインである彼女、ちょっと大人っぽい外見で、ヒゲオヤジのパートナーとしても活躍します。和登サン、個人的にかなり好きな手塚ヒロインなので嬉しい限り。

さて、肝心のストーリー。アニメは未見なので、物語としてオリジナルとどう違うか、というのは判断できませんが、「火の鳥」のような手塚作品にも散見されるひっそりとした悲壮感のようなものが漂っていて雰囲気があります。

でもちょっと登場人物の行動やストーリー展開が突飛な部分もあるかな…。

だが逆にそれがいい!(笑)

手塚治虫漫画を読んでいる人ならば分かると思うのですが、誤解を恐れずに言うならば突飛な展開やご都合主義など日常茶飯事。特に週間少年誌に多数の連載をしていた頃の漫画なんて、そりゃあもう…。

でもそれがまた手塚治虫作品の妙な魅力でもあり、この「手塚治虫 マリン・エクスプレス」でもそんな「手塚治虫らしさ」が楽しめます。読んでると、手塚治虫氏の新作を読んでいるような気になってくるから不思議ですね。

さて漫画「手塚治虫 マリン・エクスプレス」は既刊2巻で以下続刊。「あの人がまだ出てきてないな…」と思っていたら、2巻のラストでようやくシルエットが。「王子」がようやく登場となるようです。

手塚治虫のスター・システムの利点をいかんなく発揮している本作、主役級だけでなく、ハムエッグ・ランプ・ケンイチ・佐々木小次郎といったおなじみの名脇役達も大活躍。そして「スカンク草井」という名前に反応した往年の手塚ファンの方に、猛烈にオススメしたい(笑)。

漫画データ
タイトル:手塚治虫 マリン・エクスプレス 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)著者:手塚治虫出版社:集英社発行日:2016-09-23