漫画『妖怪ハンター:異端の考古学者が出会う民俗オカルト・ホラー

異端の考古学者・稗田礼二郎が、日本各地の民俗的怪奇現象に遭遇する『妖怪ハンター』シリーズ。

諸星大二郎さんの代表作の一つであり、唯一無二の世界観を持つオカルト・ホラー漫画です。

本記事では漫画『妖怪ハンター』シリーズの概要と既刊単行本、あわせて電子書籍で読める諸星大二郎さんのオススメ漫画をまとめています。

漫画『妖怪ハンター』とは?

漫画『妖怪ハンター』は、1974年に少年ジャンプ(!)で初期シリーズが発表された、諸星大二郎さんのオカルト・ホラー漫画。

以降、ヤングジャンプ・ベアーズクラブ(ヤンジャン系雑誌)・ウルトラジャンプなど、集英社系の雑誌に掲載。足かけ40年以上続いている人気シリーズです。

主人公は「妖怪ハンター」と揶揄される、異端の考古学者・稗田礼二郎

彼が日本各地で民俗的な怪異・超常現象に遭遇する様が、短編~中編ぐらいのボリュームで描かれます。

なお稗田礼二郎は「主人公」ですが「狂言回し」であり、事態を積極的に収拾する役回りではないのが、本作の大きな特徴。

「妖怪ハンター」もあだ名であり、彼自身が何か能力を持っていたり、積極的に退魔を行うという存在では無いのですが、それが他のオカルト・ホラー漫画とは一線を画す独特の読後感を生み出しています。

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『妖怪ハンター』シリーズ単行本

以下、『妖怪ハンター』シリーズの単行本紹介です。

妖怪ハンター  地の巻

『妖怪ハンター』シリーズの醍醐味を存分に味わえるエピソードを収録した『地の巻』。

稗田礼二郎が初登場した『黒い探求者』ほか、

  • 映画『奇談』の原作で「ぱらいそさいくだ!」のセリフで有名な『生命の木』
  • 鬼門に向けて鳥居を建立したことから起こる恐怖の騒動『闇の客人(まろうど)』
  • 洞窟内に空いた無数の穴に落ちた時、待っているのは成功かそれとも…?『蟻地獄』

などを収録、短編ホラー漫画集としても読み応えのある一冊です。初期ジャンプコミックスのみに収録されていた短編『死人帰り』が再録されているのも嬉しいところ。

妖怪ハンター  天の巻

『妖怪ハンター』初期としては珍しい、長編形式のシリーズ『天孫降臨』などを収録した『天の巻』。

「花咲爺伝説」にからんで飛行機事故から奇跡的な生還を遂げ、不思議な力を授かった天木薫・美加兄妹が活躍。兄妹はのちの『妖怪ハンター』シリーズにも登場。準レギュラー的な存在に。

ほか「通りゃんせ」をモチーフに、神隠しにあった少女を巡る怪異を描く『天神さま』が、民俗学ホラーとして珠玉の出来。

妖怪ハンター  水の巻

『うつぼ舟の女』『海より来るもの』など、「水」関連のホラー短編を収録した『水の巻』。水・海といったワードは、怪奇作品と非常に相性が良いのは言うまでもなし。

天木薫・末加兄妹と同じく、「稗田の生徒たち」に位置づけられる高校生カップル・潮と渚が収録作の多くに登場。二人が合わせ鏡のような2つの離島で恐ろしい体験をする「鏡島」が面白い。「七福神」ならぬ「六福神」も味わい深い一編。

オススメは雪に囲まれた村に残る奇妙な風習とそれが引き起こす恐怖を描く「産女(うぶめ)の来る夜」。これぞ民俗ホラー!と言うべき恐ろしさがあります。

補足:上記でご紹介した『地の巻』『天の巻』『水の巻』各巻は、過去に集英社から刊行されていた単行本『海竜祭の夜』『天孫降臨』『黄泉からの声』『六福神』を再編集したものです。

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稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター

『地の巻』『天の巻』『水の巻』収録のシリーズ連載より8年、講談社メフィスト誌にて連載された『魔障ヶ岳 稗田のモノ語り』。

『妖怪ハンター』としては珍しい、単行本一冊分を使った長編ストーリー形式です。

山奥で名前のない「モノ」に出会った3人の男女。それぞれが「モノ」に思う名を付けるが、思わぬ結末を迎えて…?

『妖怪ハンター』らしい、静かでひんやりした空気の漂う和風ホラー。集英社時代より若干アダルトさを増した感じが新鮮。新キャラクターである新興宗教の教祖・岩田狂天がいい味出してます。

闇の鶯

5編の短編を収録した作品集『闇の鶯』。

『妖怪ハンター』シリーズからは、潮と渚が主人公の『それは時には少女となりて』、京極夏彦氏のトリビュート集が初出の『描き損じのある妖怪絵巻』の2本を収録。

高校生になった潮と渚が、相も変わらず海辺の怪異にあう『それは時には少女となりて』。稗田礼二郎は手紙のみの登場ですが、テイストは妖怪ハンターそのもの。

『描き損じのある妖怪絵巻』は曰くのある旧家が舞台。余韻を引く怖さがあります。

その他『妖怪ハンター』ではありませんが、表題作「闇の鶯」が秀逸

森林開発をする人間たちと、彼らを慈しみつつもそれに対抗する山姥(山母)を、ITを絡めて描く一編。

日本古来の民俗的要素を散りばめたストーリーに、諸星大二郎らしさが詰まっています。

妖怪ハンター 稗田の生徒たち

妖怪ハンター 稗田の生徒たち』。正式タイトルは『妖怪ハンター 稗田の生徒たち 美加と境界の神 / 夢見村にて / 悪魚の海』

天木兄妹が主人公の二編と、潮と渚がメインの前後編を収録した作品集です(2021年10月現在、紙書籍のみの刊行)。

大人形が見下ろす不思議な坂で、美加が生死の境を体験する短編『美加と境界の神』。

民俗学のフィールドワークで「見た夢を売買する村」を訪れた薫が体験する恐怖『夢見村』。

海女修行から逃げ出してきた同級生をかくまったことから、人魚にまつわる恐ろしい話に潮と渚が巻き込まれていく『悪魚の海』。

「稗田礼二郎の教え子」的な存在である若者たちが活躍する中短編。フレッシュさがありながら、しかし描かれる恐怖は『妖怪ハンター』シリーズならではのもの。読み応えのある恐怖が堪能できます。

『美加と境界の神』『夢見村にて』には稗田礼二郎も登場。

なお『妖怪ハンター 稗田の生徒たち』には、先に刊行された『妖怪ハンター 稗田の生徒たち 1 夢見村にて』が存在します。

こちらは電子版も出ていますが、『美加と境界の神』は未収録。2巻も刊行の予定は無いようなのでご注意を。

『妖怪ハンター』以外の諸星大二郎オススメ漫画

諸星大二郎の漫画から、『妖怪ハンター』シリーズ以外のオススメ作品です。

マッドメン

もともとは『オンゴロの仮面』『大いなる復活』として少年チャンピオン・コミックスから刊行されていた『マッドメン』。現在は電子書籍として全1巻にまとまっています。

人類学者の娘と、その異母兄弟である少数部族の少年が、パプアニューギニアの奥地で神話をなぞるかのような冒険をする、という伝奇オカルト漫画。

未開部族の精霊信仰、怪物のような守り神ン・バギ、日本の神話とリンクするストーリーなど、独特な魅力を持つ漫画。

類似の作品はほぼ無い、と言っていいオンリーワンな漫画。非常に面白いです。ちなみに「マッドメン」は「泥男」の意。

『マッドメン』電子版(1,650円)は、

など電子書籍ストアの「初回限定クーポン」がオススメ。お値段やや高めな漫画もお得に読めます。

スノウホワイト

『七匹の子やぎ』『ラプンツェル』『スノウホワイト』などのグリム童話を、諸星氏が独自の感覚でアレンジして漫画化した短編集『スノウホワイト

SFあり、ホラーあり、コメディありとバラエティに富んだ漫画群。

SF仕立ての『ラプンツェル』、まさに奇妙な恐ろしさを感じる『奇妙なおよばれ』など、童話の不条理感と無邪気な恐ろしさが、諸星大二郎さんの世界観とマッチ。

特に印象的な短編は、擬人化された動物たちが暴虐の限りを尽くす『コルベス様』。この独特な雰囲気は、唯一無二。

グリムのような物語 トゥルーデおばさん

『スノウホワイト』と同じく、諸星大二郎さんがグリム童話をアレンジした短編集『グリムのような物語 トゥルーデおばさん』(初出はこちらの方が先だったかも)。

『スノウホワイト』に較べ、『赤ずきん』『いばら姫』『ブレーメンの楽隊』といった比較的、日本人にも馴染みの深い作品を題材とした短編漫画集。

ホラー漫画専門誌『ネムキ』掲載ということで、ホラーテイストが多めです。

表題作『トゥルーデおばさん』の得も言われぬ不気味さ、ホラーテイストにアレンジされた『赤ずきん』など、童話ベースながらどの漫画もちゃんと「諸星大二郎」らしさがあり、絶妙なおもしろさ。

特に約50Pのボリュームを持つ『ラプンツェル』は秀逸。少女期の不安定な心情を恐怖に変えたかのような物語、ドキドキします。

なお上記でご紹介した『スノウホワイト』にも、ラプンツェルを題材にした短編が収録されていますが、テイストがまったく異なるのが興味深い。

瓜子姫の夜・シンデレラの朝

『妖怪ハンター』でも題材にされた瓜子姫を描く『瓜子姫とアマンジャク』ほか、童話・昔話テイストの5編を収録した短編集『瓜子姫の夜・シンデレラの朝』。

現代と過去がリンクしたホラー風味の『見るなの座敷』、ファンタジックでユーモアにあふれた『シンデレラの沓(くつ)』、グリム童話の不思議なブラック感があふれる『悪魔の煤(すす)けた相棒』など、バラエティ豊かな面白みが詰まっています。

まとうとカラスになる黒衣を得た男の冒険と顛末を描く、中華風物語『竹青(ちくせい)』が印象的な一編。

碁娘伝

中華系の物語も多く描かれている諸星大二郎さん。そのうちの一つ『碁娘伝(ごじょうでん)』。

廃屋に夜な夜な現れる、碁が滅法強い美女。彼女に勝負を挑んで負けたものは耳を切り落とされて…。

という第一話から、以降、美女・玉英とそれを追う男たちが描かれる全4話。碁の定石にからめて描かれる戦いがとてもユニーク

歴史要素はほとんどなく、シンプルに碁娘の活躍を楽しめるエンタメ作品です。

まとめ

以上、オカルト・ホラー漫画『妖怪ハンター』シリーズと、諸星大二郎さんオススメ漫画紹介でした。

『妖怪ハンター』はオリジナルの単行本が長らく絶版状態でしたが、『地の巻・天の巻・水の巻』の文庫化・電子書籍化で手軽に読めるようになりました。

その他の漫画作品とは全く似ていない、諸星大二郎さんならではの世界をぜひ楽しんでみてください。

諸星大二郎さんの既刊はこちら
Kindle / ブックライブ

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