「猫で人魚を釣る話」1巻―ネコが結ぶ、医師と患者のラブ・ストーリー

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菅原亮きん さんの「猫で人魚を釣る話」。ちょっと変わったタイトルですが、独特の絵柄から生み出されるドラマが魅力的な漫画。

主人公は生真面目なお医者さん。雨の中、片手に猫をかかえる彼を、後ろから見守るのは…。高い画力を感じる構図のカバーイラストです。

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「猫で人魚を釣る話」1巻レビュー

主人公は「病人を診ずして病気を診よ」がモットーの血液内科医・四月一日正直(わたぬき・まさなお)、31歳独身。患者を睨むように見つめるために好感度はダントツ最下位だが、完治率は院内トップという、真面目だが不器用な医師。

ヒロインは、その正直の患者となった吉祥てら・23歳。血液検査の結果、正直は彼女が白血病であることを告げる。

医者と患者という二人だが、雨の日の夜に偶然再会。野良の子猫を追っているてらを放っておけずに、一緒に探す正直。とある家の住人に捕まっていた猫を、「自分の猫」だと言い張って連れ帰ってしまう。

その時から猫によってつながった、正直とてら、そして猫・春樹の物語が始まる―。

菅原亮きん「猫で人魚を釣る話」
[菅原亮きん 著 小学館「猫で人魚を釣る話」1巻より引用]

というのが「猫で人魚を釣る話」序盤のストーリー。やや自由奔放な性格で白血病を患う女性・てらと、彼女に惚れてしまった(自分では気づいていないけど)医師・正直、そして二人を結びつけたやんちゃな子猫・春樹、三人(?)のハートフルな物語が描かれます。

さてこの漫画、各キャラクターがしっかりと立っているのがとても印象的、かつ魅力的。生真面目すぎる医師・正直、ちょっと変わったてら。二人とも内面・外面にややクセがありますが、「過ぎない」丁度よいバランスを保っていて、好感が持てます。

特に正直は作中でほとんど笑顔を見せない主人公なのですが、そんな彼が笑顔の素敵なてらに、自分でも知らず知らずのうちに心ひかれていく様子が、たいへん微笑ましい。

菅原亮きん「猫で人魚を釣る話」
[菅原亮きん 著 小学館「猫で人魚を釣る話」1巻より引用]

そんな彼が、ひょんな「嘘」から引き取ることになった子猫・春樹(ノルウェージャンフォレストキャットという舌を噛みそうな品種)。この子猫がカワイイ…というか、いたずらっ子すぎて目が離せない(笑)。

そしてヒロイン・てら。笑顔が素敵な女性ですが、正直(と読者)にとって決して「都合の良い存在」でないところが、良い。春樹に絡んで正直が取った態度に、思いがけずに反発する彼女。それがまた正直自身も気づかない、彼の内面を引き出していくことに。

作者・菅原亮きん さんが「こんなキャラクターを描きたいんだ!」という思いがビシビシ伝わってくる、二人と一匹。漫画の中で活き活きと動き回る姿に、惹きつけられます。おもしろい。

また「猫で人魚を釣る話」は、菅原亮きん さんのアーティスティックな表現力も、魅力の一つ。

菅原亮きん「猫で人魚を釣る話」
[菅原亮きん 著 小学館「猫で人魚を釣る話」1巻より引用]

上記は雨の中で言い合う正直とてらを描いたコマ。吹き出しを使わずに展開されるセリフの応酬。そして境界の傾き加減から、てらが正直に押されている感じが伝わってきます。

菅原亮きん「猫で人魚を釣る話」
[菅原亮きん 著 小学館「猫で人魚を釣る話」1巻より引用]

個人的にハッとしたのは上記のコマ、というかページ。正直がてらに病名を告げる前のシーン。1ページまるまるを使い描かれる、雪ふる季節の病院の外壁。その中でポツンと浮かび上がるような、診察室。向き合う医師と患者は、どのような気持ちでいるのか。いろいろと想像力を掻き立てられます。

こんな感じで、要所要所におもしろいシーンが満載。魅力あふれるキャラクターとともに、漫画を読む喜びを感じさせてくれる「猫で人魚を釣る話」。物語は始まったばかりで、ハッピーエンドを迎えるのか、それとも?はまだまだわかりませんが、今後の展開が気になる一作です。

猫で人魚を釣る話(1) (ビッグコミックス)著者:菅原亮きん出版社:小学館発行日:2018-06-12

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