西洋の文明が日本文化が触れ合おうとした明治時代。
長崎を舞台に少女の成長を描いた漫画が、高浜寛氏描く「ニュクスの角灯」です。
「角灯」は「ランタン」と読みます。
2017年4月時点で3巻まで刊行。「コミック乱」にて絶賛連載中。

リイド社のWEBメディア「トーチ」で、一部試し読みもできます。
あらすじ
「世界が一番素敵だった頃のお話」
1878年の長崎・鍛冶屋町。
西南戦争で両親を亡くした少女・美世(みよ)は、奉公先を求めて道具屋「蛮(ばん)」の扉を叩く。
そこで彼女を出迎えたのは強面の髭男・岩爺、そしてパリから戻ったという長髪・メガネの怪しげな店主・小浦百年(こうら・ももとし)だった。
学は無いが、「触った物の過去や未来の持ち主が分かる」という神通力を持つ美世。
そんな彼女に興味を示す百年。見習いとして採用することに。
その日から、その不思議なドアを開けた瞬間から、美世の素敵でわくわくする世界ははじまった―。
「ニュクスの角灯」感想・レビュー
開いていく2つの世界
あらすじで主人公・美世の「神通力」に触れましたが、超能力漫画ではありません。
舶来品を扱う長崎の道具屋を舞台に、店主の青年と引っ込み思案な少女の触れ合い、そして成長を描く「ニュクスの角灯」。
雰囲気あっていいですね。読み進めていくと、「世界が開いていく感」があります。
「開ける感」にも二つあって、一つは西洋文化を取り入れて世界に触れる、日本の開けていく様。
着物もまだ当たり前の時代、ドレス・ブーツといった洋装や、ミシン・蓄音機(フォノグラフ)・幻灯機(マジックランタン)など舶来の機械類におっかなびっくり触れて、感動する人々。
急速に世界が変わっていく様が伝わります。
もう一つは主人公・美世の世界の広がり。
西南戦争で両親を亡くし、精神的な拠り所の無い彼女。
百年と岩爺のもとで読み書き(英語から!)・商いを学び、洋装を身に着け、少しでも役に立ちたいと努力する。
そして少しずつ変わっていく彼女の表情。
序盤と2巻を較べると全然違うんですね。目に見える成長が微笑ましいです。
濃淡による表現にも注目
美世と百年、そして周囲の人々の関わりが丁寧に描かれる「ニュクスの角灯」。
その魅力は、高浜寛氏の描き方にもあり。
読んで気付く、「何か他の漫画と違う…」感。
よく見ると、色の濃淡を薄墨で表現しています。
そこから生じる淡い上品さ、独特の雰囲気を醸し出しています(※漫画表現には疎いので、間違っていたらごめんなさい)。
まとめ
そんな物語も3巻で大きな転換を迎えます。
新キャラクターも登場し、ますます広がる世界。あれ、百年がちょっとカッコ悪いかも…(笑)。
美世と百年、それぞれの道がまた交わる時が来るのでしょうか。
ちなみに「ニュクス」とは、ギリシア神話における「夜」が神格化された女神のこと。
ニュクスが持つランタンは、さて何を照らすのでしょうか。
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