これは関西人と親和性の高いオカルトSF。白井弓子さんの「大阪環状結界都市」1巻。連載は秋田書店の「ミステリーボニータ」です。
舞台は「環状線」。と言っても東京の環状線ではなく、大阪の都市部を一周するJR西日本の路線「大阪環状線」のこと。路線を監視するシステムと、それに映り込むバケモノ。その戦いに巻き込まれていく女性警察官を、その過去にまつわる謎を絡めて描きます。
白井弓子さんは「ラフナス」「WOMBS」など、独自のSF世界を描かれる漫画家さん。オカルト風味をプラスした「大阪環状結界都市」では、どのようなSFを見せてくれるのか?
大阪環状線を見守る「Oシステム」
時は2028年。舞台は桜の舞う季節の大阪。大阪駅・天王寺駅・京橋駅・鶴橋駅など、大阪の都市部をぐるりと一周する構造を持つ、大阪環状線。
そこには「Oシステム」、通称「O(オー)」が導入され、大阪環状線の車内で起きたことが全てスキャン・記録されている。
システムに映るバケモノ
主人公は、大阪府警京橋署のO課に属する女性警察官・森かなた巡査長。環状線車内で起こった痴漢事件をOの記録で検証する最中、不可解な再生エラーに遭遇。
原因を確認するために、Oシステム総合研究所、通称「O班」に出向くかなた。Oの開発者である野坂広夢にエラーを確認するも、軽くあしらわれる。
その後、システムの不備によりなぜか映像の再生が可能に。続きを確認すると、ヴァーチャル映像から謎の触手が出現。その攻撃により同僚警官が負傷する。
「見るな!見ると現れる!」
そこに飛び込んできたのは、広夢のそばにいた謎の黒服。彼に命を助けられたかなた達は、以後バケモノとの戦いに関わっていくことになる。
大阪らしさ満開の世界観
…以上が、序盤のストーリー。バケモノの正体については、漫画で読んで欲しいのでボカして書きますが、古来から「いる」存在。普通の人には見えないけど「Oシステム」にのみ映る、というもの。
そんなオカルトとSFを融合した世界観、さらにその舞台がコテコテの大阪である、というところが「大阪環状結界都市」のユニークさ。少し先の未来と派手なアクション、そして陰陽師的退魔が描かれます。
そして全体を包むのは「大阪」らしい空気感。ところどころに描かれる大阪ネタは、現地民ならずとも、大阪を訪れた方ならば親近感が湧くのでは。劇中で環状線停車駅の一つ、鶴橋について触れられますが、あそこの焼き肉の匂いは、確かに鼻が慣れてくると効かなくなってくるw。
かなたの進む道
その舞台で活躍する、主人公・かなた。警察官である彼女は、女性の敵である痴漢等の犯罪を撲滅するために、O課への配属を志願した人間です。
しかし志願の目的はもう一つ。それは15年前に、環状線の中で忽然と行方不明になった妹を、Oシステムを使って探すこと。
その妹の失踪も、何やらバケモノの存在と関係があるようで…?
一方、Oシステムの開発者であり、バケモノについても周知している広夢。彼と接触したかなたは、捜査名目でOシステムの深部へと関わっていきます。外周から内周へと組み込まれていくかなた。彼女が見るものは果たして…という序盤。
広夢とその一族やOシステム、そして見えざるものたちには、まだまだ秘密があるよう。彼女はその中で、どのようなポジションを築いていくのか…?
まとめ
以上、白井弓子さんのオカルトSF漫画「大阪環状結界都市」1巻のレビューでした。
設定や独特の世界観がユニークな本作。ところどころに大阪の風情が描かれ、オカルト風味とのマッチ、はたまたテクノロジーとのアンマッチを感じ、おもしろみがあります。
また職務に忠実な警察官であり、その過去からも張り詰めた雰囲気のある主人公・かなた。1巻ではほとんど笑顔を見せない彼女が、今後どのように活躍していくのか。楽しみです。
なお本巻には、読み切り作品である「ノックアウト・ボディ」を巻末に収録。退職間際の女性警察官が、健康上の理由からクローンボディを利用して捜査を行う、というSF作品。「大阪環状結界都市」と併せて、白井弓子さんのSF観をより楽しめます。
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