「乙女文藝ハッカソン」1巻―最強の文芸部を目指す女子大生達の闘い(と笑い)

「乙女」で「文藝(文芸)」で「ハッカソン」なんて、受けそうなワードを繋げただけなんじゃないの?

そう思っていた時期が僕にもありました。

しかし山田しいたさんの「乙女文藝ハッカソン」、まさに「乙女」で「文藝」で「ハッカソン」な、タイトルまんまのド直球・文藝漫画でした。

先に感想書いておくと、めっちゃおもしろい!以下、もうちょっと詳しく。

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あらすじ

小説家志望(だけど執筆処女)な主人公・安達倉麻紀(あだくら・まき)。早稲田に落ちるも、栃木大学の藝術学部文藝学科に合格。女子寮での生活をスタートさせる。

入寮した麻紀を出迎えたのは、同じく文藝学科2年の芙美(SF研)と高菜(ミステリー研)。文芸サークルに入りたい麻紀を、自分の属する「沼」に引き込もうとする。

文芸学科。そこは多数の文芸サークルが乱立し、強弱の存在する世界。そしてその強さを決めるのは、大学祭で行われるイベント「文藝ハッカソン」。

山田しいた「乙女文藝ハッカソン」
[山田しいた 著 講談社「乙女文藝ハッカソン」1巻より引用]

それは即日5万字の小説を書く過酷なバトル。文芸ド素人な麻紀は、「最強の文芸部を決める闘い」に否応なく巻き込まれていく…。

乙女文藝ハッカソン(1) (コミックDAYSコミックス)山田しいた:講談社

文藝ハッカソンとは?

…という、ちょっと凄そうな話が、テンポ良くコミカルに展開される、基本コメディな「乙女文藝ハッカソン」。ここで「文藝(文芸)ハッカソン」について。

「ハッカソン」とは本来、IT業界の造語。「情報技術(ハック)」とマラソンをかけ合わせたもので、短期集中で企画開発の成果を競うもの。

最近はその「ハッカソン」が他の分野にも進出し、文芸におけるそれが「文藝ハッカソン」。劇中では、チームで5万字の小説を即日執筆し、即日審査するイベントとして描かれています。

ちなみに文庫本一冊の文字数は30万字くらい(ざっくり)、速筆な作家として知られる西尾維新さんは一日2万字だそう(作中より)。「5万字」というのが結構な文字数であることがわかるでしょう。

麻紀の執筆初体験

ユニークな先輩二人に「文藝ハッカソン」のなんたるやを説かれるも、今ひとつピンと来ない麻紀。芙美と高菜に誘われて、入寮初日に早速ショートショートを競作することに。

この創作過程がおもしろい。

1200字(星新一の平均的な話の半分以下)を、制限時間3時間の中で書き上げるのが目標。ですが、アイデアは出ないし、時間はあっという間に過ぎるし、という「創作あるある」に陥る麻紀。

そんな彼女と会話したり、リラックスさせたりで閃きを誘発させ、そして執筆時のポイント・テクニックをピンポイントで伝える芙美と高菜。

山田しいた「乙女文藝ハッカソン」
[山田しいた 著 講談社「乙女文藝ハッカソン」1巻より引用]

この、テンポ良くコミカルに描かれる「文藝ド素人とそれを導く先達」の流れ。見ているだけで、文藝創作の辛さ・難しさ・楽しさ、そしてエッセンスが伝わります。ウマイ。

「劇中劇」という高度な描き方

そして書き上がった三人の作品は…。

これは字ではなく、本編とはタッチを変えた漫画形式で描かれます。これがいかにも「即興で書き上げたショート・ストーリー」っぽくておもしろい。

しかし考えると、漫画本編自体のストーリーを作るだけでも大変(であろう)なのに、劇中に「劇中劇」が、それも複数描かれている。

山田しいた「乙女文藝ハッカソン」
[山田しいた 著 講談社「乙女文藝ハッカソン」1巻より引用]

この方法は最初の即興小説作成の後もチラホラと描かれ、おそらく2巻の山場でも登場すると思われるのですが、考えると相当高度な手腕が無いと描けないよなぁ。

劇中劇自体にそれなりに説得力が無いと、本編ともども白けてしまう可能性があるのですが、そこをあえて描いて成功している感じ。作者・山田しいたさんの手腕を感じます。

ライバル登場。からの…

前半では先輩二人とのやり取りを通して、文藝創作の何たるかを学ぶ麻紀(と読者)。

来る文藝ハッカソンに向けて(学祭だからもうちょっと先?)、ゆるゆる文藝ライフが続くのかと思いきや、1巻の後半にて早くもバトル展開が。

麻紀に遅れて入寮した野原焚(のばら・たき)。すでに作家デビューを果たしている彼女。これがなかなかクセの強いキャラクター。

麻紀や先輩たちの文藝に対する姿勢を「ヌルい」と酷評する焚。それに対して芙美と高菜の取った態度は…。

山田しいた「乙女文藝ハッカソン」
[山田しいた 著 講談社「乙女文藝ハッカソン」1巻より引用]

「よろしい ならば戦争だ」

というわけであっという間にバトルに突入。余分な成分を一切抜き、トントントーン!と一気に進む高速なテンポ、嫌いじゃない。っていうかむしろ好き。

最近はいろいろ匂わせつつ続きは次巻で!っていうCM前のテレビみたいな引きをする漫画が多い中、実に潔く書きたいこと、読ませたいことを見せてくれます。

そして焚VS麻紀・芙美・高菜組の文藝バトルが始まり、この描写も見どころ満載なのですが、それはぜひ本編でお楽しみを。

まとめ

以上、山田しいたさんの「乙女文藝ハッカソン」1巻のレビューでした。

文藝っていうとやや固いイメージもありますが、それを笑いを混じえてエンターテインメントに昇華させた漫画。読み終えて、とても満足しました。おもしろい。

変に出し惜しみせず、描きたいことをテンポよくストレートに描き、それが伝わる。「これが、これこそが漫画だよ!」と感じた作品でした。オススメです。

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