ダーク・スリラー「やわらかな鋭角」―大火災を生き延びた少女は「奇跡の子」なのか?

大火災で生き残った少女をご神体とする新興宗教団体。スキャンダルを追う週刊誌記者は、果たして「神」を見るのか―。

Comic it連載、多田基生(ただ・きせい)さんの漫画「やわらかな鋭角」1巻を読みました。

謎の宗教団体の中心にいる少女と、その闇に引きずり込まれていく週刊誌記者を描く、ダーク・スリラーです。

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「やわらかな鋭角」レビュー

少女を崇めるカルト宗教

主人公は週刊誌記者・渡辺。有名芸能人が参加しているとの情報から、とある宗教団体の集会に潜入します。

その宗教団体には、ある少女が「ご神体」として祀られているという噂が。彼女は十二年前に起こった戦後最悪のホテル火災の生き残り、だとも。

「デカいネタになりそうだ」と、集会に参加した渡辺。彼が宗教施設の奥で見たものは、人型の落書きと、「神の声をきけ!」の張り紙

居合わせた初老の女性は、人型の絵を「神様です」と言います。神様を一番最初に呼び出した子どもからもらった姿がその絵で、その子どもとはご神体の少女。

これだけ聞くと何とも背筋がゾッとする話。正気とも、狂気ともつかない微笑みをたたえる女性の姿が、ちょっとコワイ。

願いを叶える「神」はいるのか?

後日、「ご神体」の少女・谷角真(たにすみ・まこと)に接触する渡辺。「一生あんなとこにいるの?」とカマをかけますが、拒絶され逃げられることに。

その様子を見ていた女性信者たちに話を聞く渡辺。真が「奇跡の子」であると表現する彼女たち。その内の一人は「実際に神様に会い、願いを叶えてもらった」と語ります。その願いは、浮気した婚約者を「殺してやりたい」。

その願いは本当に叶ったのか。半信半疑で調査を進める渡辺は、徐々に恐ろしい事実を知ることに。果たして真は本当に奇跡を起こすのか?そして「神」は存在するのか?

やわらかな鋭角 1【電子限定特典つき】 (it COMICS)著者:多田 基生出版社:KADOKAWA / アスキー・メディアワークス発行日:2017-12-15

本格的ダーク・スリラー

週刊誌記者・渡辺と、謎の少女・真を軸に描かれるオカルト・サスペンス漫画「やわらかな鋭角」。作中でメインとなるキーワードは宗教、そして神。

怪しげな教義をうたうカルト宗教は、さしてめずらしいものではありません。しかして作中で描かれる信者たちは、本当に「願いを叶える神の存在」を疑っていません。実際に奇跡を享受した者も。

そこから浮かび上がる、実在するかもしれない「神」。しかし「神」とはいったい何なのか?

奇跡の少女

物語の鍵となるのは、十二年前の大火災で家族を失いながら、一人生き残った少女・真。現在は新興宗教「やすらぎの掌(てのひら)」の加護を受けながら、高校生として生活を送ります。

1巻を読む限りでは、自発的にトップに立つ存在ではなく、神格化され祭り上げられる立場にある真。彼女が凄惨な火事から生き残ったのは、神の力によるものなのかは分かりません。

しかし彼女の周辺から浮かび上がってくる「神の存在」。あまり明るいイメージではなさそうですが…?

渡辺の「闇」

一方、週刊誌のゴシップネタとして教団、そして真を追う記者・渡辺。

実は彼自身も悩み事を抱える人間。とある理由で精神的に不安定な妻を抱え、決して晴れやかな生活を送っているわけではありません。その心中には常に闇がつきまとう。

そんな渡辺、真の過去について調べる内に、徐々に「違和感」を感じてきます

渡辺が「神」の真実にたどり着くのは、もう少し先のことでしょう。ですが、彼が抱える闇があやしげな「神」に引きずられていくような恐ろしさも。

掻き立てられる不安

1巻終盤では、これから徐々に明らかとなるであろう事象に関連する、様々な「パーツ」の提示がなされます。

渡辺の闇、真と神の関係。それ以外にも、12年前の火災の生存者について、新たなが動きが起こります。

ネタバレ無しなので詳細は避けますが、不安が不安を呼び、徐々に募ってくるモヤモヤ。物語の先をのぞくのが少し怖くなってくるような。

まとめ

以上、多田基生さんの漫画「やわらかな鋭角」1巻のレビューでした。

真が教団にいる理由、渡辺の心に落ちる影、暗く横たわる「神」の存在。物語はまだまだ序盤ということで、核心が描かれるのはもう少し先になりそう。

ですが、終始安定したオカルト感が漂う作品。暗い雰囲気が読み手を徐々に深みにはめていく感じ、オカルト好きにはたまらないおもしろさがあります。

そして1巻ラストで待ち受ける衝撃的な展開。果たして渡辺は神の存在を知るのか?次巻が待ち遠しいダーク・スリラーです。

やわらかな鋭角 1【電子限定特典つき】 (it COMICS)著者:多田 基生出版社:KADOKAWA / アスキー・メディアワークス発行日:2017-12-15

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