「リウーを待ちながら」2巻―街を覆う終わりの見えない絶望

自衛隊に端を発する感染症に襲われた横走市。

一時は事態の収束に兆しも見えたが、それは嵐の前の静けさ。

本格的な地獄はまだ、始まったばかり―。

パンデミックの危機に襲われた地方都市、そして病気に対し必死に抵抗する人々を描く、朱戸アオさんの医療サスペンス漫画「リウーを待ちながら」。待望の2巻です。

黒一色の背景に佇むのは、いつもの笑みを浮かべる疫研・原神。白一色のカバー絵だった1巻とは一転、地獄をあらわすかのようなその色が印象的。

なお本記事は続刊のレビューとなります。極力ネタバレをしないように留意しておりますが、「リウーを待ちながら」1巻を未読の方は先にそちらをご覧になるか(ぜひお読みください)、または本ブログのご紹介記事をご覧ください。

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「リウーを待ちながら」2巻レビュー

「負け続ける」人々

自衛隊がキルギスから持ち込んだペストが蔓延する横走市。

女医・玉木たちの奮闘にもかかわらず倍々ゲームで感染が拡大し、増える一方の死者。

冒頭話(第8話)「敗北」では、広い土地にナンバーを打たれて「仮埋葬」される遺体群がショッキング。

その中で展開される玉木と疫研・原神の会話。事態の改善を模索する玉木に対する、原神の言葉が印象的。

「でも僕らはもう負けた」
「そしてこれからは負け続けるんだ」
(P14より)

抗生物質が効かない多剤耐性ペストに対する人間のポジションを決定づける、特徴的かつ絶望的なシーンです。

横走市封鎖の結果

そして原神の注進により、遂に政府は緊急事態を宣言感染症法により横走市は封鎖されます。

感染の拡大を防ぐために交通等は遮断され、事実上の隔離状態となる横走市

さて、その結果何が起こるか?

想像したおおよそのことが起こります。

SNSによる誹謗中傷の拡散。
横走市出身者への迫害。
健康であるにも関わらず受ける差別。

決して想像上の出来事ではない、既視感のある風景

「リウーを待ちながら」は、朱戸アオさんの過去作「Final Phase」の拡大版とも言うべき内容。

局地で広がる感染症を描いた同作では描かれなかった、「現代における感染症の真の恐怖」が迫ります。

絶望に覆われる街

終わりの見えないペストとの戦いに、次第に疲弊していく玉木たち

ささやかな「いいこと」がありながらも、徐々に近づく臨界点。

そして隔離を余儀なくされた人々の中には、横走市を脱走しようとする者も。

「脱走」と「横走」をかけて「脱走(だつばしり)」と揶揄されるその行為。終盤では新たな事件も?

全編を通してまだまだ希望の見えない第2巻。ここまで描くか…、とその展開に正直ビックリ。

予想以上のリアルさに打ちのめされました。

まとめ

というわけで漫画「リウーを待ちながら」第2巻。

単に「人間VS病気」といった構図にとどまらず、現代においてパンデミックが発生した時に起こりうる社会的な問題を描いた、スケールの大きい展開を見せてくれました。

また興味深いシーンが随所にありましたが、印象に残ったのは原神と潤月の交わした「誰が悪いのか?」論

複雑な世界を生きる人間。出来事の渦中にその身が置かれた時、果たして原神のような視点を持てるのか。

そして絶望に覆われた街の中で、玉木は、原神は、負け続けるしかないのか、それとも―?引き続き次巻にも注目です。

ところで印象的なのが、作中の随所で引用されるカミュの「ペスト」

ペスト(新潮文庫)著者:カミュ出版社:新潮社発行日:1969-11-03

浅学のため未読の小説ですが、本作を読んで俄然興味が湧いてきました。リウー第3巻発売までに予習しておこうかな。

リウーを待ちながら(2) (イブニングコミックス)著者:朱戸アオ出版社:講談社発行日:2017-10-23

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