「飼育少女」1巻―リアルな生き物とシュールな笑いを描く生物コメディ

ちょっと誤解を受けそうなカバーデザインですが、中身はいたってマジメ?仲川麻子さんの「飼育少女」1巻。

生物を独特の感性で愛でる女子高生と、ある目的を持って彼女に変わった生き物を紹介する生物教師を描く、生き物コメディです。

作者の仲川麻子さんご自身が主張されている通り、至って健全、愉快な生き物漫画です。大体。

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「飼育少女」1巻レビュー

生物教師と女子高生

メインの登場人物は女子高生・鯉住のぞみと、生物教師・対馬。生徒と教師、という関係のほかは特に接点の無い二人が、「生き物の飼育」を通じて交流を深めていく、というストーリー。

これだけ聞くとハートフルな話っぽいですが、「飼育少女」というタイトルの漫画がそんなに素直な訳がない(笑)。

「何か(ペットを)飼いたい」という鯉住の言葉を聞いて、対馬が用意したものは…ヒドラ

ヒドラ。ひょっとすると生物で習ったこともあるかもしれない、体長約1cmの小さな生き物。再生能力が高く不老不死で、「不滅の生物」とも呼ばれます。

普通そんなものを渡されたら、女子高生じゃなくってもドン引き。ですが鯉住さん、ちょっと感性が変わってる。ヒドラを自宅で飼ってその生態になじんでいくうちに、「すごくかわいい」と感じるように。


[仲川麻子 著 講談社「飼育少女」1巻より引用]

そんな鯉住さんを見て、「いい」と悦に浸る対馬(無表情)。さらなる鯉住の引き出しを開けようと、彼女にステップアップした生き物を与えます。

そのチョイスはフジツボやクマムシなど、ちょっと変わったものばかり。ですが鯉住は対馬の期待を裏切らない好反応を示して…というズレた二人のやり取りと絶妙な間に、なんとも言えないおかしみが生まれます。

リアルな生物描写

「飼育少女」、鯉住と対馬の生き物を通した微妙な関係がユニークなのですが、それを盛り上げるのはリアルな生き物描写

ヒドラの飼育を始めた鯉住が、餌としてブラインシュリンプ(ちっちゃい乾燥エビみたいなやつ)を与えるシーン。ヒドラは触手を使って捕食をするのですが、これが実に独特な方法でおもしろい。クリオネよりもワンランク上なお食事方法


[仲川麻子 著 講談社「飼育少女」1巻より引用]

そして次に鯉住に与えられるのは、フジツボ。フジツボって海の岩に付いてるアレですが、水中だとあんな動きをするなんて…。初めて知りました。そもそも「あーいうもの」ってイメージしかなかったのですが、成長から生殖までが事細かに紹介され、これは鯉住でなくても興味が湧きます。

「飼育」の意味

そんな水の生き物の飼育に楽しみを感じ、徐々に見せられていく鯉住。その感性は少し変わっていますが、生き物を愛でるその姿。微笑ましいものがあります。うん、健全健全。

…と、それを怪しげな眼で見つめるのは対馬。生き物の魅力を独特な表現であらわす鯉住を「観察」し、悦に浸ります。

飼育に必要なものは、飼料の補給・環境の維持・運動の確保、そして「観察」(第一話冒頭より)。対馬の鯉住に対する接し方は、まさに「飼育」。ミクロとマクロ、二重の意味で描かれる飼育には、おかしみと若干の薄ら寒さが。

変化する関係

鯉住・対馬に加え、中盤以降は三年生・熊谷ひとみが登場。生き物好きで、二人の交流が気になって何かと絡んでくる熊谷も、何やら対馬と関係があるような感じ。


[仲川麻子 著 講談社「飼育少女」1巻より引用]

彼女も混じえながら展開される生物飼育。生き物描写とコミカルな掛け合いはそのままに、しかし物語が進むにつれて、その関係性も少しずつ変化して…?

飼育するものとされるもの

鯉住を観察し続けたい対馬に対し、少しずつ変わっていく観察対象・鯉住。飼育するものとされるものという二人が、今後どのような関係を築いていくのか?が気になる「飼育少女」。笑いながらも、ちょっとドキドキしてしまう第1巻でした。

こうやって文章で書くと何だか怪しげな雰囲気なんですが(笑)、実際はもっとコメディ色が強くて笑える漫画です。生き物についても、その生態が自然とストーリーに練り込まれていて、読むと何だか得した気分。

生き物好きな方はもちろん、そうでない方にも読んで欲しい一作。至って健全な漫画ですので(今んとこ)。

漫画データ
飼育少女 (1) (モーニングコミックス)著者:仲川麻子出版社:講談社発行日:2018-01-23

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