「ソフトメタルヴァンパイア」―ハードでケミカルなブラッディSFアクション

世界の理(ことわり)を変える力を持つ少女と、彼女をめぐり、化学式を駆使した闘いを繰り広げる不死のヴァンパイアたち。

「EDEN」「オールラウンダー廻」の遠藤浩輝さん描くSFアクション漫画、「ソフトメタルヴァンパイア」。タイトルからして好きなヤツ!です。

2巻の表紙。1巻の表紙はヒーロー漫画っぽく狙ってる感満載でしたが、比してシリアスな雰囲気。クールな目線が遠藤浩輝作品らしい。

ソフトメタルヴァンパイア / 遠藤浩輝
「人類の時代」は終わり、世界の支配者は交代した。 「彼ら」の統制下で少女・斎美井香(いつきみいか)は 吸血族(ヴァンピール)の少年・アラン砂辺(すなべ)と出会う。 『オールラウンダー廻』『EDEN』の遠藤浩輝がおくる「ネオ・セカイ系ダーク・ファンタジー」開幕!

第一話はアフタヌーン公式サイトで試し読みができます。

「ソフトメタルヴァンパイア」レビュー

あらすじ

突如その理を変え、不死の吸血鬼たちが支配者となった世界。幼少時に「銀」を操る能力を有していた高校生・齋美井香(いつき・みいか)。16歳の誕生日を迎え学校に登校した直後、教室で「治安ポッド」(空中を浮遊する監視装置みたいなもの)に襲われる。

ミイカを狙い、無差別に発砲をする治安ポッド。クラスメイトが惨殺される中、彼女を救ったのは吸血鬼・アラン。彼はミイカを守るためにG.D.F.から派遣された「炭素族使い」だった。


[遠藤浩輝 著 講談社「ソフトメタルヴァンパイア」1巻より引用]

ヴァンパイアの天敵である、銀を操るミイカを抹殺せんとする「宗主(シザレイン)」。一方、同じ吸血鬼でありながら彼らと敵対するアランたち。果たしてミイカの運命は?

化学を組み込んだ迫力のオカルトSF

以上が「ソフトメタルヴァンパイア」の導入部。以降、人間でありながらヴァンパイアにとって脅威となる力を持つミイカをめぐり、ヴァンパイアたちの熾烈な戦いが繰り広げられます。


[遠藤浩輝 著 講談社「ソフトメタルヴァンパイア」2巻より引用]

ヒーロー的なキャラクター、残虐な描写、伝説のモンスターと化学を融合させたSF展開、そしてお笑い要素など、遠藤浩輝さんが描きたいであろうことがこれでもかっ!と詰まっている感じで、おもしろい。

「オールラウンダー廻」で確立された安定の絵柄と、「EDEN」で評価されたSF描写。両者が結合して産まれたSF漫画です。

SF設定を取り入れた「吸血鬼」

不死、壁を走れる、銀に弱い、といった伝統的なヴァンパイア像と、炭素・窒素・鉄といった元素を自由に操る力が融合した「ソフトメタルヴァンパイア」世界の吸血鬼の姿。

「化学力バトル」とでも言うべきその戦いがユニーク。防水加工されたアスファルトから瞬時に武器を作りだしたり、空気中の窒素から爆発物を合成したり、またはそれぞれの長所を防ぐ戦い方をしたり。


[遠藤浩輝 著 講談社「ソフトメタルヴァンパイア」2巻より引用]

私は文系なので化学的な知識はほぼ無いんですが、ちゃんと劇中で解説してくれるので安心(笑)。それでいてテンポが崩れないのは、さすがのベテラン作家さんの手腕。迫力あるバトルにグッと引き込まれます。

息を呑むシリアスな展開

1話を読んでいただけるとわかるのですが、序盤は割りとコミカル。見た目は二枚目なアランが、実は下ネタ野郎だったりw.

しかし1巻後半~2巻にかけて雰囲気が一変。追うもの・追われるものの立場がはっきりし、息をもつかせぬシリアスな戦いが連続して展開されます。

「ヴァンパイア」は基本、不死の存在。不死者同士の戦いはどれだけ血を流そうとも不毛。敵が爆散するシーンがありますが、それでも数十年後には復活するよう。


[遠藤浩輝 著 講談社「ソフトメタルヴァンパイア」3巻より引用]

それでは戦いに緊張感が無くなるのでは?という懸念が産まれますが、しかしそこでクローズアップされるのが、ヒロイン・ミイカの「銀」に関わる能力。

ヴァンパイアに致命傷を与える銀と、それを操るミイカ。彼女の存在が物語を引き締め、吸血鬼たちのバトルを緊迫感のあるものへと昇華させます。

混迷の展開へ

そして物語も3巻・4巻と進むに従い、より複雑な展開へ発展。ヴァンパイアたちの対立構造が鮮明になり、またミイカが自身のポジションを認識していきます。

シザレインから次々と送られる刺客たち。またG.D.F.(シザレインに対抗する組織)の保護下に入ったミイカの周辺にも敵の手が。シザレインとアランの関係、そして組織の目的も徐々に明らかになる中、4巻ではまさかの学園編に突入(笑)。

化学式を取り入れたリアルなSF、ヴァンパイアや狼男など世界を跋扈する伝説のモンスター、そしてシリアスになったかと思えば忘れた頃にやってくるコミカルな展開。

飽きの来ないおもしろさが詰まった「ソフトメタルヴァンパイア」。独特なSF感で読者を楽しませてくれる漫画です。

ソフトメタルヴァンパイア(1) (アフタヌーンコミックス)著者:遠藤浩輝出版社:講談社発行日:2016-11-30

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