時給ン万円、一案件ン百万円…。異常な高給の「裏バイト」には、やっぱり「裏」がある！
田口翔太郎さんの『裏バイト:逃亡禁止』。訳あってお金が必要な二人の女性が、裏バイトで恐怖の体験をしていく様を描くホラー漫画です。
2023年12月現在、小学館より単行本1～11巻が刊行中。連載中のマンガアプリ「マンガワン」でも、初回無料で読むことができます。
『裏バイト:逃亡禁止』感想・レビュー
どんな話？主なあらすじ
「森のリゾートレストラン」の住み込みバイト。【時給】はなんと【15,000円】。
いかにも怪しげなそのバイトに募集してきたのは、白浜和美（しらはま・なごみ）と黒領ユメ（こくりょう・ゆめ）。
忙しいが気さくなオーナーの下で、至って普通の接客仕事をこなしていく二人。
しかし「この仕事」で「この報酬」はありえない！和美はユメに問いかける。
「何かウラがあると思わない？」
そしてその夜から和美は、「森の中を一人さまよい、異常な形相をした女性に出会う」という不思議な夢を見るように。
一方のユメも異変を感じ、青ざめた顔で一人ブツブツとつぶやく。
「くさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさいくさい…」
オカルト・ホラー感あふれる裏バイト案件
以上が第一話『ホールスタッフ』序盤のあらすじ。その後、恐怖の体験から脱出した二人は、実は中学の同級生だったことが判明。
好奇心旺盛で物怖じしない和美と、嫌な予兆が「匂い」となって表れるユメ。
それぞれの事情でお金が必要な二人は、「ハイリスクハイリターン」の裏バイトを「ローリスクハイリターン」にしよう！と、コンビを組んで「裏バイター」として活動することに。
しかし異常な高額報酬の裏バイト、何も起こらないわけがない！その後も二人は
- いわくつきのビルでの深夜警備。その七階には何かが…「ビル警備員」
- 2日後の15時までに「鞄」を届けろ。ただし絶対に中身は見るな。…「個人向け配送業」
- 謎の投薬バイト。報酬は1週間で三百万、「扉」を開ければさらに三百万。…「治験」
など「いかにも」なオカルト・ホラー感のある案件で、恐怖の体験を…？
不安・恐れ・不条理の詰まったストーリーと、全編に漂う得体のしれない恐怖に、奇妙なゾワゾワが…！
裏バイトの「ヴァーチャル感」が恐怖を増幅！
ちょっと荒い感じの作画と、おどろおどろしい雰囲気の相乗効果で、いい感じの「B級ホラー感」のある『裏バイト:逃亡禁止』各話。
そこに新鮮味を演出しているのが、「裏バイト」という設定。犯罪絡みで使われたりもする言葉ですが、本作では「絶対に裏のある高額報酬な闇仕事」を指すそれ。怪しさの中に、「奇妙なリアル」を感じさせます。
そんな裏バイトに果敢に挑む和美とユメは、命の危険を感じても、お金のために裏バイトがやめられない。
その「逃げ出したいけど逃げられない」気持ちが伝播するのか、ページをめくるたびに、読み手も何だか追い詰められる気分に。
「バイト」という身近な設定、そして二人へのシンパシーが、奇妙なヴァーチャル感を生み出し、恐怖を増幅させていきます。
「裏バイト」をやり遂げた先に待つものは…？
そして裏バイトからの生還率の高さから、やがて業界で話題になるユメと和美。その過程で「主人公二人の背景」が徐々に明らかに。
大金を必要としている理由や、家族事情など、謎が多い彼女たち。それぞれに複雑な事情を抱えているようで…？
さらに彼女たちが裏バイトをこなせばこなすほど、やがて「変化していく世界」。いろいろなものが狂っていくその様子が何とも恐ろしい！
「個々の裏バイト案件の恐怖」と「変わりゆく世界の構造」、二方面から味わえるホラー・ストーリーが、新感覚の面白み。さて「裏バイト」を終える時、彼女たちに待っているものは幸福なのか、それとも…？
『裏バイト:逃亡禁止』まとめ
以上、田口翔太郎さんのオカルト・ホラー漫画『裏バイト:逃亡禁止』感想・レビューでした。
「いかにも」な都市伝説風恐怖エピソードと、「バイト」という日常感の奇妙な取り合わせが、絶妙な怖おもしろさを生み出している作品。
近年のホラー漫画の中では傑出した面白さがあります。ぜひ裏バイトの世界で、未知の恐怖を体験をしてみてください。
ホラー漫画『裏バイト:逃亡禁止』は、小学館のマンガアプリ「マンガワン」で連載中。各話初回無料、単行本収録の先の回まで読めるのでチェックしてみてください。
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