「ヤオチノ乱」1巻―現代を生きる忍者たちのサバイバル・スパイアクション

この独特の作画と雰囲気は、才能と言っても過言ではない。

泉仁優一(もとじん・ゆういち)さんの「ヤオチノ乱」です。

単行本は現在1巻が刊行中。連載は講談社のWebマンガメディア「コミックDAYS」です。

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あらすじ

室町時代より登場、歴史の影で暗躍し続ける日本固有の諜報組織「八百蜘(やおち)一族」。組織から練達者2名を選抜する「儀」を、東京都内で執行する。

泉仁優一「ヤオチノ乱」
[泉仁優一 著 講談社「ヤオチノ乱」1巻より引用]

2人一組で命を賭けたサバイバルに挑む、40名の志願者たち。4日で覚醒するクモの毒を体に仕込まれた彼らの目的は、ライバルたちの持つペンダントを割ること。

その参加者の一人にして、組織幹部の妹である有能な忍者・キリネ。しかし無作為に選ばれた相棒は、頼りにならないシンヤであった。貧乏くじを引いたキリネだが、実はシンヤには隠れた能力が…?

ヤオチノ乱(1) (コミックDAYSコミックス)泉仁優一:講談社

現代の忍者アクション

…という「ヤオチノ乱」。簡潔にまとめると、「『最強の忍』を目指す忍者たちが、放っとくと死ぬかもしれない体で、生き延びるためにライバルを倒していく」という、忍者サバイバル・アクションです。

「儀」の期間は一ヶ月。最低限の資金と偽の身分証、そしてペンダントを与えられた彼ら。毒という時限爆弾を体に抱えながら、都市という限定空間でライバルを探し、戦いを挑む。

その独特な忍者アクションは、特に優秀な忍者である主人公・キリネに見て取れます。余分な装備を持たない彼女たちが使う武器は、その場その場で調達した「普通の」道具ばかり。

泉仁優一「ヤオチノ乱」
[泉仁優一 著 講談社「ヤオチノ乱」1巻より引用]

それらを組み合わせ、加工し、相手を出し抜く武器に変化させる。サバイバル・マスター的な演出に、従来の忍者モノとは一味違うおもしろさがあります。

独特の空気感

「ヤオチノ乱」で目を引くのは、全体的に黒を基調とし、墨絵風に描画されるキャラクター・コマの数々。

明るい大都会の中で、「忍者」という闇に生きる存在を、その暗い描画方法によって逆に生き生きと照らし出す。一度見たら忘れられないインパクト。

泉仁優一「ヤオチノ乱」
[泉仁優一 著 講談社「ヤオチノ乱」1巻より引用]

吊り気味の目で小動物を思わせるような、キリネのデザインも秀逸。(昔の)猫娘を思わせるような見た目ながら、読者をもはねつけるようなピリピリ感。その小気味よい活躍から目が離せません。

その中で「謎」なのは、シンヤの存在。キリネとは対象的にド素人感丸出しな「ダメ忍者」ですが、実は本人も気づいていない(?)隠れた能力を持っている。

エリート忍者とダメ忍者。果たして二人は儀を生き残ることができるのか?というのが見どころです。

少し気になる点も

そんな「ヤオチノ乱」。ものすごく良い「暗さ」を持ち魅力のある漫画なのですが、若干気になる点も。

一つは、キリネの強さがもう一つ伝わらない点。実は彼女は読み切り漫画「無常の霧音」の主人公(後述)。

そこでは「超人的な忍者」としての彼女を堪能できたのですが、「ヤオチノ乱」では演出不足のためか、その凄さが伝わってこない。そのためシンヤに対しての「ウエメセ感」にやや説得力が無い。

もう一つは、バトルの緊迫感が弱いこと。忍者バトル自体には迫力があります。ですがそのバックグラウンドとなるべき設定、「八百蜘一族」が何を目指して戦っているか、の描写が少なく、戦いの真剣味がイマイチ伝わってこない。

また「儀」の全景を明示したり、戦いにやぶれた忍者の末路を凄惨に描くなどで、緊迫感を演出して欲しかったところです。

読み切りがおもしろい

ただそれも、「ヤオチノ乱」の前身である「無常の霧音」を読んでおくと、印象が変わるかもしれません。

【特報】アフタヌーン四季賞受賞作『無常の霧音(きりね)』が、「モアイ」公開直後の大反響を受けて「コミックDAYS」で6月16日より装い新たに新連載決定!
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講談社アフタヌーンの四季賞2017秋で準入選した本作。自身のアイデンティティーに対する葛藤を胸に懐きながら、闇の諜報活動をこなすキリネが描かれるのですが、これが実におもしろい。

「ヤオチノ乱」は「無常の霧音」が生まれ変わった作品とのことなので、アナザーストーリー的な存在ではあるのですが、キリネの魅力を充分に堪能できる一作です。「ヤオチノ乱」を読む前に、ぜひ読んでおいていただきたい読み切りです。

まとめ

以上、泉仁優一さんの「ヤオチノ乱」1巻でした。

個人的には若干気になる点もありましたが、それでも唯一無二の魅力を持つ忍者漫画。これからキリネとシンヤがどのようなサバイバル・バトルを繰り広げていくか、大いに気になります。

この「独特の暗さ」は一見の価値アリなので、忍者漫画好き、アクション漫画好きの方はぜひチェックしてみてください。次巻以降の躍進に期待。

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