「グッド・バイ・プロミネンス」―人と人との繋がりを独自の感性で描く連作短編集

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何とはない人と人の関係が、物語が進むに連れグッと読者の心に迫ってくる。そんな胸に響くストーリーが詰まった「グッド・バイ・プロミネンス」。実に読ませる短編集でした。

作者は本作がデビュー単行本となる、ひの宙子(ひろこ)さん。

…デビュー作!絵も物語も洗練されていて、とてもそうは思えないクオリティ。近年読んだ人間ドラマ系マンガの中でも屈指の出来でした。

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「グッド・バイ・プロミネンス」レビュー

概要

ひの宙子さんの初単行本である「グッド・バイ・プロミネンス」。祥伝社フィール・ヤング誌に連載されていた短編を一冊にまとめたもの。

  • 君、喜び多く、幸深からんことを。
  • さようならプロミネンス
  • 畢竟―ひっきょう―
  • ノット、ラヴ、ノット
  • コペンハーゲン
  • あなたにあいみつ
  • 灰かぶりのかかと
  • なつかしい明日のはなしたち

以上の8編と、描き下ろしマンガを収録しています。

全8編は連作短編形式。ある話の脇役が別の話の主人公を務めたりと、各話の登場人物たちが少しずつリンクするオムニバス。GLやBL風味もほのかに絡めた、バラエティ豊かな人間ドラマが展開されます。

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「君、喜び多く、幸深からんことを。」

第一話「君、喜び多く、幸深からんことを。」が、ひの宙子さんのツイッターでまるっと公開されています。こちらを元に、作品の読後感など(若干ネタバレあるので、できれば先に漫画をお読みください)。

主人公・坂井さんの「ちょっと変わった友人」喜多さん。人前で堂々と、担任の笈川先生に「好きです」と伝えた告白事件以降、所構わず先生に愛を伝える「奇行」を繰り返す。

独特な喜多さんだが、その言動から家庭環境に由来する進学への不安が窺える。彼女(と先生)の事を気にかける坂井さんだが、受験勉強で少し疎遠に。そして卒業式後、誰もいない教室で二人は再会し、そこで互いに、良き友人であったことを確かめ合う、というお話。

坂井さんと喜多さん。少し普通とは異なる友達、というか「え、それって友達なの?」というぐらいの距離感。決して多くの時間を共有したわけではないけれど、つかず離れず、おたがいの事を気にかけている、という関係。

読み手から見ると、序盤では微妙な間柄に見える二人。しかし二人の距離が、終盤でグッと縮まって、読者の心を射抜くような衝撃を与える。このドラマ感の描き方、ウマイなぁ。爽やかな風が吹き抜けます。

距離感が縮まる瞬間が、心に焼きつく

そして第二話「さようならプロミネンス」では、第一話の友人役であった喜多さんが主役に。母親と、亡くなった父親の弟でり、彼女を思う叔父の姿を通して描く「家族」の話に。

以降、少しずつ主役や登場人物をズラして綴られる連作。ハートフルな話もそうでない話もあるのですが、その多くで描かれるのは、人と人との距離感がグイッと近づく瞬間。その瞬間と、そこに至るまでのドラマが、深く心に刻まれます。

各話の舞台・主人公も、チョイスに意外性があって新鮮。「あ、今度はこの人が主役になるのか!」という驚きがあり、飽きないおもしろさ。

特に印象的だったのは、第一話で脇役だった笈川先生が主人公となる第5話「コペンハーゲン」。完全に忘れていた人物が再登場した驚きと、訪れたバーで待っていた謎の女性。ページをめくるにつれ明らかになっていく二人の関係と、秘められた思い。たまらないドラマ感があります。

そして迎えた最終8話でも、意外な物語が。各話の叙情を味わい、そして単行本を読み終わった時、不思議と1つのドラマを読み終わったような、でもページは再び第一話をめくりたくなる。そんな不思議な読後感を味あわせてくれます。

まとめ

以上、ひの宙子さんの「グッド・バイ・プロミネンス」のレビューでした。個人的に、近年読んだ短編集や人間ドラマ系の漫画の中でも、屈指の出来であると感じる一作。デビュー作とは思えない完成度、そしてもっともっと、ひの宙子さんの漫画を読んでみたい、と思わずにはいられない。

BL・GL要素を持つ話も若干含まれますが、それらに馴染みの無い人でもきっと違和感なく読めるであろうという内容。むしろ読んで欲しい。人間ドラマ・短編好きにオススメの一冊です。

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