リアルな本格SFからアクション・コメディ・ファンタジー系SFまで、全1巻から長編連載作品まで、読むとそのSF世界に惹き込まれるオススメSF漫画まとめです。
実際に読んで面白かったSF漫画の中から、選りすぐったオススメ作品をご紹介します。随時更新中。
SF漫画リスト
キラリティ
大石まさるさんの『キラリティ』全1巻。
月・火星・小惑星帯(アステロイドベルト)にも人類が住む時代。
ベルターの双子、キラとラリティは、スペースコロニーのパーツを曳航する巨大曳航船ドゥルガー10に乗組員として潜入。ある目的を持って―。
明るいノリと美麗なキャラクター、そして本格的かつセンスの良いSF描写が魅力の漫画。
細かいディテールにも手抜きが無く、全1巻完結とは思えないスケールの大きなSF展開が読み応えあり。
なお本作は『ライプニッツ』シリーズの2作目なのですが、特に前作を読んでいなくても楽しめると思います。
不思議な宇宙ネコ・ライプニッツが出てくる、ということだけ知っていればOK。
マーチャンダイス
同じく大石まさるさんの『マーチャンダイス』全3巻。
『キラリティ』に続く『ライプニッツ』シリーズの3作目。繋がりとしては世界観のみなので、こちらから読んでもOK。
火星の地下多層構造都市で人類が日常を送る時代。
長期滞在型シェアアパート「マーチャンダイス」に集う人々を描く本格的SF…観のもとで展開される、ライトでコミカルな群像劇。
その中心となる、マーチャンダイスの大家にして賞金稼ぎのラーテルと、一攫千金を求めて火星に降り立った地球人マチコ、二人のキャラクターがバツグンに面白い!
ハイレベルな作画から生み出される、軽妙にしてセンスあふれる本格的なストーリーが魅力のSF漫画です。
ベントラーベントラー
野村亮馬さんの『ベントラーベントラー』全3巻。
宇宙人が「外星人」と呼ばれ一般化した社会。外星人絡みのトラブル処理にあたる公務員女性・すみちゃんと奇妙な宇宙人・クタム君を描くコメディSF。
飄々として何事も深く考えないすみちゃんと、高度な知能を持ちながらボケ倒すクタム君。
SF感あふれる事件と、その合間に展開されるゆる過ぎる掛け合いに、思わず笑いがこぼれます。
そんな笑いに包まれたSF物語、ひたすら続くかと思われたゆるやかな日常は、しかしラストで驚愕の展開を迎える―!
これが良い意味でビックリ展開。このラストのおかげで、忘れられないSF作品となりました。
第三惑星用心棒
野村亮馬さんの『第三惑星用心棒』。
自主レーベル『馬頭図書』より刊行のフルカラー・インディーズ・コミックで、2巻まで刊行中。「Kindle Unlimited」でも読めます(2021年8月現在)。
29世紀の地球で「迷走兵器(ロストボーイ)」を処理する、歌って踊れる陽気なアンドロイド「エルシー」の活躍描くSF漫画。
牧歌的な雰囲気と、それに反比例するようなリアルなSF感、そして人間よりも人間くさい主人公・エルシーがめちゃくちゃ魅力的。
弾き語りや自転車の曲乗りをこなす彼女のユーモラスさと、手に汗握る迫力の戦闘シーンに、グイグイ引き込まれます。
AIの遺電子 Blue Age
山田胡瓜さんの『AIの遺電子 Blue Age』。2023年3月現在、単行本が5巻まで刊行中。
AIが革新的に進化し、人型AI「ヒューマノイド」と人類が共生する未来。研修医・須堂光を通して未来の医療・倫理問題を描く、SF医療ヒューマン・ドラマです。
なお本作は無印『AIの遺電子』の続編ですが、過去編なので本作より読み始めてもOK。
「超AI」とヒューマノイドにより、豊かな方向へ向かった人類社会。と同時に、生命や生き方にかかわる価値観・倫理観のアップデートが求められるように。
医療の現場で発生する諸問題に、須堂らはどのように対応するのか?が見どころ。
各話興味深い内容なのですが、高度なAIに管理された街での出来事を描く『新世界編(4巻終盤より)』がものすごく!面白い。
リアルなSFドラマは、SFファンならばゾクゾクを感じずにはいられないはず。
攻殻機動隊
士郎正宗さんの『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』。
義体(サイボーグ)化、電脳へのアクセスが一般化した西暦2029年(!)を舞台に、超高性能サイボーグ・草薙素子(少佐)率いる公安9課の活躍描くSFアクション漫画。
世界に大きな影響を与えたアニメ映画『GHOST IN THE SHELL』、そのベースとなった原作。
ネット・電脳・義体などのSF要素、そして「ゴースト(≒霊体・人格)」という概念とそれをキーとした物語は、予想もつかないSF世界を見せてくれます。
深いポリス&ミリタリー知識から生み出されるアクションや、草薙素子率いる公安9課メンバーのユニークなキャラクターも「攻殻機動隊」の大きな魅力。SF漫画の傑作です。
アップルシード
士郎正宗さんの『アップルシード』全4巻+α。
非核大戦後、バイオロイド(人造人間)が統治する都市オリュンポス。
そこでポリスとして活動する、人間・デュナンとサイボーグ・ブリアレオスのコンビを描く、近未来アクションSF。
士郎正宗さんの代表作『攻殻機動隊』と地続きの世界観を持つ本作(発表はこちらが先)。
リアリティあふれるSF設定、本格ガン・アクション、SF感あふれるストーリーが魅力です。
『アップルシード』は全体としては未完ですが、各巻の話はそれぞれで区切りが付いています。
初出は1985年ということで古典の領域に入りつつも、古さを感じさせない魅力を持つSF漫画。読むとSF観が変わるでしょう。
天国大魔境
石黒正数さんの『天国大魔境』。2023年3月現在、単行本が8巻まで刊行中。
大災害により文明が崩壊した日本を、「天国」を探して旅する二人を描く『魔境編』。
閉鎖的な近代空間である「学園」で、不思議な力を持った子どもたちを描く『天国編』。
2つの軸が入り乱れて構築される、世紀末SFアドベンチャー&サスペンス漫画。
序盤の巻ではなかなか全体像が見えず、ややモヤモヤも。ですが6巻あたりから伏線の回収が本格的に始まり、めちゃくちゃ面白い!
2軸が接近すると同時に新たな謎も生まれ、作者の巧みな物語構成に引き込まれていきます。
また親しみやすい絵柄ながら、胸糞展開ありのなかなかハードな世界観も、本作の魅力の一つ。ダーク&シリアス、不穏な空気がクセになるSF作品です。
火の鳥
「おすすめのSF漫画」という括りで紹介するには有名すぎますが、SF漫画紹介としては外せない作品、手塚治虫さんの『火の鳥』。
- 宇宙船内で起こった殺人事件とその真実を描いた「宇宙編」
- 過去と未来が交錯する長編「太陽編」
- クローン人間の殺し合いを画策したテレビマン、その業を描いた「生命編」
- 罪を背負って無限の時間を生きる人間を描いた「異形編」
などなど、不死の鳥「火の鳥」を絡めた多彩なSFストーリーが描かれます。
各作品は単体のSF漫画としても、また『火の鳥』という大長編の一部としても楽しめる作り。
個人的にはループものの一つの完成形とも言える『異形編』(9巻収録)がオススメ。単体で読んでも楽しめます。
プラネテス
幸村誠さんの『プラネテス』全4巻。
宇宙開発で生じるスペースデブリ(宇宙のゴミ)を回収する、主人公・ハチとその仲間たちを描いた、本格SF漫画。アニメ化もされました。
宇宙船を傷つけるデブリの処理問題、月面や船内でタバコが自由に吸えない苦労、深淵な宇宙空間に対する心理的恐怖…。
それまでのSF漫画とは一線を画す、リアルで本格的なSF描写が秀逸。
そしてゴミ回収業から、木星を目指す船のクルーとなるハチ。数々の苦難に遭う彼を待ち受けるものは果たして…?
作品の根幹を成す深みのある人間描写が、今なお『プラネテス』をSF漫画ジャンルにおいて、不動の人気作品としています。
宙に参る
助骨凹介さんの『宙に参る』。2022年11月現在、3巻まで刊行で以下続刊。
宇宙船がセスナ機ほどの身近さになり、身体のパーツも挿げ替えが効く未来。
夫の遺骨を地球の義母に届けるべく、息子とともに宇宙に出立する未亡人・ソラを描くSF作品。
「葬儀シーン」という斬新なスタートに始まり、「将棋AIは人類への反乱を企てるのか」「おでん屋の合計金額の謎」といったエピソードを積み重ね、「魔女」と呼ばれるソラの不思議な成り立ちに迫っていく本格SF。
ポップで親しみやすい絵柄と、それに反比例するかのようなリアルでハードなSF感に、抜群のセンスを感じます。
おとうふ次元
森繁拓真さん・カミムラ晋作さんのコメディSF『おとうふ次元(おとうふディメンション)』全3巻。
高度に発達した未来人が、現代で遭難。歴史を改変しないために彼が取った行動は…「何もしない」こと!
しかし何かと関わってくる現代社会の人々。そこには常に危険が…?
私達の「当たり前」が、未来人にとっては「とんでもないこと」だったり、そのギャップに思わず笑いが。
逆にそこから「当たり前」への疑問が湧き出る、という構図に意外な深みを感じる、SFコメディの隠れた秀作です。
ロボ・サピエンス前史
島田虎之介さんのSF漫画「ロボ・サピエンス前史」上下巻。
核燃料の回収にあたるロボット。職能をダウンロードし人間を助けるフリードロイド。
地球型惑星探査のため外宇宙に向かうロボット。核廃棄物の貯蔵施設で25万年の監視を続けるロボット…。
オムニバス的に描かれるロボットのストーリーが、やがてひとつに収束。ホモ・サピエンスならぬロボ・サピエンスの来たるべき未来を予感させる、SF心を刺激するラストへ。
夜中に一人で雰囲気に浸りたいSF漫画。イラストチックなビジュアルにも注目。
果ての星通信
ある日突然、「果ての管理者支部局 惑星モスリ」に強制転移させられたマルコ。星を作り、そして壊す仕事に10年間従事することに。
しかし婚約者を地球に残した彼は、脱出の機会をうかがい…?
宇宙の創造に飽きた管理者に代わって、「星を作る」という業務を任される人々を描く、メノタさんの『果ての星通信』全5巻。
マルコの脱走は2巻序盤まで。以降は星の創造と、マルコの身に起こった「重大な問題」の解決を軸に、物語が展開されていきます。
とにかくメノタさんのファンシーなSF描写が素晴らしい作品。豊かな想像力と表現力は一見の価値あり。
不思議と愛着の湧いてくるキャラクターたちも魅力的。ビジュアルを、物語を、じっくりと味わいたいSF漫画です。
MOONLIGHT MILE
太田垣康男さんの『MOONLIGHT MILE』。
日本人・猿渡吾郎と、アメリカ軍人・ロストマン。
天才クライマーでもある二人が、かたやBS(ビルディング・スペシャリスト)として、かたや米国宇宙軍の軍人として月を目指す、本格ハードSF宇宙開発漫画です。
SFエンターテインメントも交えながら描かれる、人類が月面開発へ向かって歩みを進めてゆく様はまさに『MOONLIGHT MILE』。
圧巻のSF描写で、1巻から一気にその世界に引き込まれます。
なお月面への道のりを描く過程は、第一部として完結。第二部からは、発展を遂げた月面の都市「ルナネクサス」を舞台に新たな物語が展開。
ながらく休載中でしたが2023年4月現在、ゆるやかに再始動中です。
70億の針
多田乃伸明さんの『70億の針』全4巻。
ヘッドホンで周囲との接触を断つ女子高生・ヒカルは、地球外生命体「テンガイ」の不手際で肉体を失い、彼と一体化。
テンガイと敵対する災いの渦・メイルシュトロームと、図らずも戦うことに―。
…という、出だしもろ『ウルトラマン』なSF漫画『70億の針』。
宇宙人と合体してしまった主人公が、イヤイヤ敵と戦いながらも、その殻を破って成長していく、「青春SF」とでも呼ぶべき漫画。
人と人との繋がりから起こるヒカル自身の変化が、爽やかな読後感を与えてくれます。
百万畳ラビリンス
謎の巨大構造物に閉じ込めらた礼香と庸子。
ゲームのバグ探しをしている二人は、その知識と経験をたよりに、ゲームそのもののような世界からの脱出を試みる―。
たかみちさんの『百万畳ラビリンス』全2巻。空間の描き方など、そこかしこに散りばめられたゲーム的感覚が面白い、ゲーム好きならば一度は迷い込んでみたい世界が描かれます。
しかしそこでは危険も隣り合わせ。ゲームオーバーになれば人生終了の可能性も。
ゲームっぽいゆるさの中にも、どこか緊張感が漂う世界観に、意外な怖さ・不気味さを感じます。
コドク・エクスペリメント
星野之宣さんの『コドク・エクスペリメント』全3巻。
『コドク』は壺の中で毒虫を戦わせ、最強の毒を作りだす「蠱毒」のこと。
その蠱毒のごとく、閉鎖された宇宙船内で戦いを繰り広げる、人間と生物兵器たち。生き残るのは果たして?
ハリウッド映画のようにテンポよく展開される物語に、一気読み必至。主人公たちの絶望的ともいえる戦いに思わず息を呑む、アクション要素の高いSF漫画です。
星野氏のSF漫画としては他に、恐竜世界でのサバイバルを描いた『ブルーホール』『ブルー・ワールド』もオススメ。
光の王国
異星文明とのコンタクトを題材にしたSF漫画、菅原雅雪さんの『光の王国』全2巻。
宇宙人の目を通した「人間」の本質、そして可能性が描かれます。
突如世界の夜空から暗闇が消え、人々の目には美しい光が映るように。そしてある公園を目指して歩みを進める、「メッセージ」を受けた人々。
その一人、虐待を受けていた少年・ワタルは、そこで運命的な邂逅を果たし―。
広大な宇宙、そしてそれと反比例するような人間の小ささを再認識させられる、不思議な読後感のあるSF漫画です。
まとめ
以上、「このSF漫画が面白い!オススメの本格SF漫画まとめ」でした。
本ブログではほかにも、全1巻・短編集のSF漫画をご紹介しています。こちらも併せてどうぞ。
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