SF漫画漫画感想・レビュー

SF漫画『第三惑星用心棒』感想―歌うアンドロイドは陽気なバウンサー!

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29世紀を舞台に「地球の用心棒(バウンサー)」として活躍する女性型アンドロイドを描く、野村亮馬さんのフルカラーコミック『第三惑星用心棒』。ライト&ヘビーなSF感が魅力の、バツグンに面白い本格SF漫画です

第三惑星用心棒(1) (馬頭図書)

作者の野村亮馬さんは、『ベントラーベントラー』『キヌ六』(いずれも講談社)など魅力的なSF作品を生み出してきた漫画家さん。

MATOW BOOKS
自主制作漫画レーベル「馬頭図書」のページです。 既刊「インコンニウスの城砦」「第三惑星用心棒」(いずれもキンドル出版) 絵と文:野村亮馬

本作『第三惑星用心棒』は、その自主制作漫画レーベル『馬頭図書』によるインディーズ作品。AmazonのKindle電子書籍で1~3巻が配信されています。

『第三惑星用心棒』感想・レビュー

どんな話?主なあらすじ

無政府・無国境状態で人類の中心地ではなくなった、西暦2882年の地球。そこでは過去の紛争に投入された自動操縦ロボットたちが、「迷走兵器=ロストボーイズ」として闊歩していた。

地球に居住する数少ない人間たちの障害となっているそれらを、量子コンピューター「中央幹事=セントラル・コーディネーター」の命を受けて処理するのが、「用心棒=バウンサー」と呼ばれるロボットたち。

その一体である女性型アンドロイド「エルシー」は迷走兵器を無力化するために、「指示動物=ポインターズ」をパートナーに今日も世界を飛び回る…!

…以上が漫画『第三惑星用心棒』の主な世界観。はるか未来の地球を舞台に、エルシーと仲間たちの活躍が描かれていきます。

アンドロイド「エルシー」の活躍!

表面的には文明が大きく衰退し、牧歌的な空気が漂う29世紀。そこで人々の障害となる「迷走兵器」に立ち向かうは、ルナコントロールズ社製のアンドロイド・LC610C8、通称「エルシー」!(「LC」だから、エルシー)

…と言っても彼女は、もともとは27世紀に月面で接客業に就いていた、女性型コンパニオン・ロボット(※本作ではロボットとアンドロイドに厳密な区別は無いよう)。

第三惑星用心棒(2) (馬頭図書)

移動は自転車、トラベルギターでの弾き語りが大好きという、ちょっと変わったアンドロイドな彼女。鳥(オニオオハシ)型のポインターズ・タミーとともに、中央幹事の指令を受けてロストボーイズに相対していきます。

なお『第三惑星用心棒』の世界では、エルシー以外にも複数のバウンサーが活動。その容姿はエルシーのような人間型とは限らず、ロボット兵士型・自走戦車型など、形態はさまざまです。

陽気な用心棒と迫力のアクション

『第三惑星用心棒』の魅力は、何と言っても主人公・エルシーのユニークなキャラクター。コンパニオン型のロボットという前身ゆえか、人々を明るく楽しませようとする、人間以上に人間くさい性格の彼女。

相棒のタミーと自転車で荒野を走り、出会った人々のリクエストでギターをかき鳴らす。ユーモアを持ち、常に笑顔を絶やさないその姿が、実に微笑ましい!

第三惑星用心棒(3) (馬頭図書)

そんな牧歌的な雰囲気とは対象的に、予想以上にハードな展開を見せるのが、迷走兵器=ロストボーイとの戦闘。

コントロールを失ってはいるが、武装は生きているロストボーイ。防御用の装備を装着したエルシーは、愛車(自転車)で接近を試みるが、そこに容赦ない攻撃が…?

スピーディにして緊張感のあるアクションを見せるエルシーと、青々とした世界で陽気にふるまうエルシー。そのコントラストが非常に印象的。彼女の活躍にグイグイ引き込まれていきます。

ちなみに高性能なアンドロイドであるエルシーですが、実は「料理が苦手」。またコンパニオン型なのに「なぜか戦闘力が高く、超深海から極高真空でも活動可能」。そこには様々な謎があるのですが、徐々に明かされていく秘密の数々も、物語の面白み。

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絶妙なSF世界観が面白い

そんな『第三惑星用心棒』の面白さを支えるのが、骨太なSF設定。過大な説明に陥ることなく、最小限の表現で独特のSF世界を構築する、野村亮馬さんのセンスが光ります。

SF漫画って、作品によっては設定が複雑すぎるがゆえに、世界観への理解が追いつかない時があります。しかし野村亮馬さんは、ストーリーやセリフの中にキーワードをさり気なく忍ばせることによって、物語のテンポを崩すことなく、SF的世界観を読者に提示

同氏のファンタジー作品『インコンニウスの城砦』にも見られますが、物語を読み進めていくと、自然にその方向性が見えてくるつくり。そのさじ加減が絶妙!

キャラクターの設定や背景には複雑なものもあるのですが、それらは各話の終わりにあるオマケ的なページでまとめて説明。ストーリーの流れ・雰囲気はそのままに、物語を楽しむことができます。

ハードなSFなんだけど、それをハードだと感じさせない、良いSF感のある『第三惑星用心棒』。初心者からマニアまで、幅広く楽しめるSF漫画です。

『第三惑星用心棒』まとめ

以上、野村亮馬さんのSF漫画『第三惑星用心棒』の感想・レビューでした。

朗らかなキャラクターと軽妙な会話でライトなテイストながら、そのバックグラウンドはヘビーで本格的なSF感あり!そして読み進めるうちに、陽気なアンドロイド・エルシーの次なる活躍が待ち遠しくなる、魅力的なフルカラーSF作品です。

なお『第三惑星用心棒』『インコンニウスの城砦』は、Kindleの読み放題サービス「Kindle Unlimited」(初回30日無料)の対象。利用中の方や加入を考えている方は、ぜひ『第三惑星用心棒』もチェックしてみてください。

野村亮馬さんはほかにも、「地球生まれの火星人」キヌとサイボーグ少女ロク、二人のハード過ぎる逃避行を描く『キヌ六』(全2巻・講談社)や、

キヌ六(1) (アフタヌーンコミックス)

宇宙人の存在が一般化した地球が舞台の日常系コメディSFにして、インパクトありすぎる最終回が衝撃的な『ベントラーベントラー』(全3巻・講談社)など、良質なSF漫画を輩出。こちらもオススメなので、ぜひチェックしてみてください。

ベントラーベントラー(1) (アフタヌーンコミックス)

※Kindle Unlimitedの対象は都度変更される場合があります。ご利用の際は本作が対象になっているかどうかご確認ください。

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