元警察官の父を殺された女性。しかし父の残した手紙には、犯人の冤罪を示唆する内容が…?
浅見理都(あさみりと)さんの漫画『クジャクのダンス、誰が見た?』。一風変わったタイトルですが、本格的なミステリー・サスペンス漫画です。
連載は講談社の女性漫画雑誌「Kiss」で、2022年11月現在、単行本1巻が刊行中。なお以下で紹介の都合上、ネタバレというほどではありませんが、ストーリーの核心にふれる場合があります。
『クジャクのダンス、誰が見た?』感想・レビュー
あらすじ
21歳の山下心麦(こむぎ)は、警察を定年退職した父・春生と二人暮らし。しかし心麦が不在の間に自宅が放火、父を殺されてしまう。
犯人は約20年前、6人を猟奇的な手口で殺害、死刑囚となった男のひとり息子・遠藤。春生は事件の解決に関わった警察官の一人であり、逆恨みの末の犯行と見なされた。
だが心麦は葬儀の後、春生が「自分が殺された時を想定して書いた手紙」を発見。そこには記載の「6人」が逮捕された場合、それは「冤罪」であり、「犯人」の弁護を指定した弁護士に依頼して欲しい、との旨が記されていた。
果たして「6人」の中には遠藤の名前が。彼は冤罪なのか?真犯人は別にいるのか?父の真意は何なのか…?手がかりを求め、心麦は手紙に記されていた弁護士・松風を尋ねるが…。
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父が「指名」した弁護士は意外にも…
たったひとりの肉親を突如奪われ、孤独の身となった女性が、しかし悲しむ間もなく「謎」に巻き込まれていく…。
『クジャクのダンス、誰が見た?』では、そんなサスペンス感あふれるドラマが展開されていきます。
『クジャクのダンス、誰が見た?』の素晴らしいデザインはセキネシンイチ制作室のセキネさん@sekine301 !!「頭良さそうに見えるカッコイイデザイン」お願いします、という担当編集の頭の悪いオーダーにバッチリ応えていただきました😎(担) pic.twitter.com/DKE9yODD52
— 浅見理都 新連載!クジャクのダンス、誰が見た?【公式】 (@ichikeinokarasu) July 26, 2022
凶悪な事件の捜査にかつて関わっていた父は、自らの死を予感していた…。それはなぜなのか?心麦は真相を探ろうと、まずは手紙に記されていた弁護士・松風をたよることに。
そこから二人で事件の真相へ…と思いきや、なんと松風は父のことを全く知らなかった!ではなぜ、父は彼の名前を手紙に残したのか…?
逆に「父を殺した犯人の弁護」を依頼する心麦を、「何か裏があるのでは?」と訝しむ松風。結局、依頼交渉は決裂するのですが、すんなり事件解決に向かわない「意外な展開」が、物語の深みを予感させます。
残された数多くの「謎」
その後、心麦は警察関係者から、遠藤の父が起こした「20年前の猟奇殺人」について知ることに。これが非常に凄惨な内容で…。
一方「指名」が気になった弁護士・松風は、独自に容疑者に接見。そこで意外な感触が…?といったところから、物語が本格的に動き出していきます。
なぜ父は殺されたのか?なぜ殺されることを予見していたのか?なぜ松風の名が記されていたのか?遠藤は犯人では無いのか?真犯人は誰なのか?そして20年前の事件との繋がりは…?
心麦と松風の出会いが「ゆるやかな変化」を起こしていくのですが、しかし多くの謎が横たわる事件。心麦の周囲にはやや不穏な空気も漂い、「先の見えない暗闇」に引き込まれていく感覚があります。
リアリティのあるサスペンス・ドラマ
作者の浅見理都さんは、裁判官を主役に据えた過去作『イチケイのカラス』(全4巻)でも、リアルなリーガル・ドラマを演出。
ストーリーの中心に異常な事件を据えた『クジャクのダンス、誰が見た?』も全体的に落ち着いた雰囲気で、良いサスペンス感があります。
また本作は、国際法律事務所による「法律監修」のほか、多数のドラマ・映画・フィクションなどを監修する「チーム五社」所属・志保澤利一郎氏の「警察監修」も受けていて、リアリティ抜群。
不可思議な事件と実際の法律知識・警察描写が、良い感じで融合。フィクションでありながら現実感のある内容に、グイグイ引き込まれていきます。
意味深なタイトルの意味するものは?
そして気になるのは、やはり『クジャクのダンス、誰が見た?(英題:Who saw the peacock dance in the jungle?)』という意味深なタイトル。
これはかつてイジメにあった心麦を、春生が励ますために伝えた言葉で、ニュアンスとしては「本当のことを知っているのは、本人だけ」「嘘をついても、事実からは逃れられない」というもの。
それは自分が殺されるかもしれない、と感じていた春生の「秘密」を示唆するものなのですが、同時に心麦の「真実を求める行動」の指針ともなっていきます。
多くの謎がある事件、そして誰が味方なのか敵なのかわからない状況の中、事件の真実を求めていく心麦と松風。果たして「クジャクはダンスを踊っていた」のか…?
『クジャクのダンス、誰が見た?』まとめ
以上、浅見理都さんの漫画『クジャクのダンス、誰が見た?』の感想・レビューでした。
物語は序盤ということで、まだまだ不明なことも多いのですが、絵柄や落ち着いた物語運びで、非常に雰囲気のあるミステリー・サスペンス。これから明らかになる真実と、そこで展開されるであろうドラマに、期待が高まります。
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