連作短編集・オムニバス形式の漫画まとめ

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連作形式の短編集や、オムニバス形式の漫画単行本の中から、読んでおもしろかったおすすめ作品のまとめです。

なお記事中で紹介している連作短編集・オムニバスについては、

  • 連作短編集…各話が同一世界観上で展開されている、または各話の登場人物に共通性がある。
  • オムニバス…『SF』『ホラー』など、特定のテーマに沿ってまとめられている。

という解釈で取り扱っています。

漫画リスト

グッド・バイ・プロミネンス

ひの宙子さんの「グッド・バイ・プロミネンス」全1巻。少し変わった同級生と、彼女を優しい目で見守る女子高生。その同級生の母と叔父。叔父の友人たちの友情と愛情。女子高生たちの先生が義理の姉に抱く複雑な気持ち…。

少しずつ絡み合った関係性を持つ登場人物たちの、その胸の内が時にシリアスに、時にコミカルに描き出されていく全8編の連作短編集。一話一話のおもしろさと、それらがゆるやかに繋がる単行本全体の読み応えが、とても素晴らしい!読み終わったあとに、また頭からページをめくりだしたくなる、そんな魅力があります。

ワンナイト・モーニング

奥山ケニチさんの「ワンナイト・モーニング」。同級生、バイトの同僚、幼馴染、そしてセフレ…。様々なシチュエーションの男女の過ごすワンナイトと、次の日の朝に食べるモーニングを、時にコミカルに、時にせつなく描く1話完結の物語。

この「ワンナイト・モーニング」は2巻まで出ていますが、もともとは1巻で完結する予定だったそう。しかしSNSでのブレイクを受けて連載再開が決定。2巻、さらに3巻へと続くようです。

そんな経緯を持つだけあって、ちょっとエッチでほっこり加減のワンナイトが、どの話も心にジワジワと染み渡ってとても良い。連作も多く、読めば読むほど登場人物たちのことが愛おしくなってくる感じも好き。心とお腹があったまります。

外天楼

石黒正数さんの「外天楼」。外天楼(げてんろう)とは、作中で基本の舞台となる集合住宅の名前。そこに集う人々をコミカルに描くオムニバス。

エロ本を目立たぬように手に入れるために知恵を凝らす中学生たち。特撮ヒーローもののストーリーで突如起こった殺人事件の謎。旧式ロボットとの生活で徐々に疲弊していく女性…。

外天楼で展開される、バラエティ豊かな物語の数々。しかし無関係かと思われた各話が、読み進めるにつれ徐々につながりを見せ、そして終盤で予想外の展開を見せるサスペンス風味の漫画へと変貌。石黒正数作品らしい笑いを楽しんでいると、知らぬ間に真顔になっていく、トリッキーな構成がおもしろい一作。ラストの何とも言えない読後感と言ったら…。

スキエンティア

戸田誠二さんの「スキエンティア」全1巻。超高層タワーの頂きから、科学の女神・スキエンティアの彫像が見守る街。そこに住む人々の人生を、ほんのりSF風味を絡めて描き出すオムニバス。

「自殺願望者募集」の広告に応募した、人生に希望が持てない女性。全身マヒの老女に3ヶ月間、受信機を取り付けた体をレンタルする、という仕事内容を承諾。女性の体を借りた老女は精力的に青春をやり直し、その生気にあてられた女性の心にも変化が…。(第一話「ボディレンタル」より)

人生に悩み、苦しみ、傷つきながらも懸命に生きる人々。その生活にほんの少し、科学の力をプラスしたら…といった体のSF風味なドラマ。戸田誠二さんらしい深い人間ドラマに、SF要素がほんのり希望の光をあてるような、そんな感じが印象的。

雑草たちよ 大志を抱け

池辺葵さんの「雑草たちよ 大志を抱け」全1巻。地方都市に住むちょっと地味で、でも人を慮る優しさを持つ女子高生たちの、心の交流を描いた連作短編集。

様々な個性を持つ思春期の彼女たちが、ちょっとずつ他の誰かにやさしさを分け与える瞬間を見るたびに、心がホワッと温かくなるような、優しい気持ちになれる漫画。池辺葵さんの漫画らしい絶妙なテンポ、「間」も印象的。

そして全5話のあとで描かれるエピローグが、最高に素晴らしい。人との距離感に少し恐れを抱く女子高生に、ある生徒の母親がかける言葉が、素敵過ぎる…。

シンプルノットローファー

モンナンカール女子高等学校に通う女子高生たちの日常を連作で描く、衿沢世衣子さんの「シンプルノットローファー」全1巻。

どこにでもいそうな、ゆるく、楽しく、高校生活を満喫している女子高生たちの、何でもない日常にふと起こるささいな出来事が、衿沢世衣子さんのポップでライトな絵柄で、流れるように紡ぎ出されます。

彼女たちの様子を眺めていると、軽く笑って、ふと心が軽くなっていくような。作中で描かれるのは女子校ですが、読んでいると男女問わず、かつて過ごした学生生活を思い出して懐かしくなってくるのでは。

HUMANITAS ヒューマニタス

山本亜季さんの「HUMANITAS ヒューマニタス」。時代も舞台も異なれど、その胸のうちにはいずれも熱き闘志を秘めた「戦士」たち。その孤独にして過酷な戦いを迫力の筆致で描き出す、パワーあふれる短編集全1巻。

15世紀の中央アメリカで、生き残りを賭けた闘いに臨む双子の戦士。20世紀の米ソ冷戦時代、獄中でチェスの腕に目覚め、やがて国家を背負うチェス勝負に挑む男。極寒の地で生きるために命がけの捕鯨を行う原住民少女。圧巻の画力で描かれる、彼・彼女らの戦う姿。読みながら、拳に力を込めずにはいられない。

アイリウム

小出もと貴さんの「アイリウム」全1巻。1錠で一日分の記憶を「飛ばす」ことのできる薬・アイリウム。その薬を使った人々に起こる悲喜こもごもを描くオムニバス。

本作のユニークなところは、各話「アイリウム」という同じ小道具を使いながらも、ヒューマン・ドラマだったりサスペンスだったり、はたまた感動話だったり後味の悪い話だったり、描かれる内容が全く異なるという点。一話一話で異なる読後感を与えてくれる、多彩なアイデアが素晴らしい。

その中でも特にサスペンス感が強くドキドキするのが、第5話「ホスト」。サイコなオーナーから逃げ出すために、記憶の飛ぶアイリウムを盛って盛られて。果たして主人公はオーナーから逃げ出すことができるのか?アイリウムの性質を上手く盛り込み二転三転する展開が読ませます。

にわにはににん

中野シズカさんの「にわにはににん」全1巻。プロローグ・エピローグ含む全7編すべてが、「庭」をテーマに描かれるオムニバス。

中野シズカさんは、スクリーントーンを幾重にもかさねて漫画を紡ぎ出す、という独特な描画方法を用いる漫画家さん。その端正な作業から生み出される、ファンタジックな世界がとても!ステキ。

ちょっと不思議で幻想的なストーリーを楽しんだあとも、繰り返し眺めたくなる美しさを持つコマの数々。他の漫画では味わえない魅力があり、漫画好きにぜひ読んで欲しい一作です。

真夏のデルタ

高校生男女三人の胸の内を、それぞれを主役に据えた連作で描く、綿貫芳子さんの「真夏のデルタ」全1巻。

歯並びの悪さを気にする女の子。その歯を触りたい美術系男子。女子の彼氏で、イケメン・スポーツ万能、しかし内面に鬱屈を抱く男子。普通に青春を謳歌しているように見えながらも、成長と共に抱える悩み。それらがやがて劇中でぶつかりあうのですが、子供と大人の中間にいる彼らの昏さ、そして相反するような瑞々しさが、心に残ります。

また作者の綿貫芳子さんの、類まれなる描写力も本作の大きな見どころ。人物、背景ともに緻密に丹念に描き込まれながらも、くどくなり過ぎない絶妙なバランスは、センスだなぁ。劇中で描かれる植物や蝶の美しさは必見。

珈琲時間

寡作の漫画家、豊田徹也さんの「珈琲時間」。全17話の物語全てに、コーヒーが小道具として登場するオムニバス(一部、共通の人物が登場する連作もあり)。

シリアス風味なドラマ、笑えるコメディ、人生の不思議・悲哀をじわりと感じる話などが、作者ならではの美麗でセンスあふれる作画によって紡がれて、そしてその最後にはいつも苦味の効いたコーヒーがある。そして本を読み終わるうちに、知らずしらずコーヒーを飲みたくなる、っていう。あ、別にコーヒーを飲みながら読んでもいいのよ。

ところで豊田徹也さんの単行本は数えるほどしかないのですが、その中でも電子化されているのは本作のみ。氏の漫画を一度読んでみたい、という方は手軽に読みやすいこの「珈琲時間」をまずはどうぞ。

名づけそむ

各話「名前」に絡んだ人間模様が展開される、志村志保子さんの「名づけそむ」全1巻。かつて家族を捨てた女性が偶然に別れた娘と再会し、「結婚式に出て欲しい」思いがけない誘いを受けるが…という第一話が、とても秀逸。物語の中で「名前」にそういう役割を持たせるのか!と素直な驚きが。

その他、「名前」が話の中で印象的なキーとなる、物語づくりがとてもウマい。ときにはハッピーエンドじゃないこともあるけれど、世の中にはきっと、こんな人生のワンシーンを送っている人たちがいるんだろうな、と感じさせてくれる、大人の短編集。しっとり。

はなちゃんと、世界のかたち

元気な小学生・はなちゃんと、その友達・うたちゃんがちょっと不思議な冒険をする様子を描く、植田りょうたろうさん「はなちゃんと、世界のかたち」。全6編を収録。

漫画なのに、アニメのようでもあり、絵本のようでもあり、はたまた絵画のようでもある、作者独特の筆致が印象的。この類まれなる表現力を、漫画好きにはぜひ一度味わっていただきたいもの。

その表現力によって描かれるはなちゃんの、コマ狭しと暴れまわる元気過ぎる躍動感が小気味よく、脳裏に焼き付く。はなちゃんとネコが嵐のなか学校をめざす第一話「あらしのかたち」は、思わず息を呑む迫力。

回游の森

「応天の門」の作者・灰原薬さん描く連作短編集「回游の森」。自分の性的指向を知っている従妹と年を経て再会した男。真夜中に一心不乱に穴を掘る女に出会った少年。爬虫類にしか興味を抱けないエリート会社員…。

彼・彼女らの心のなかにある昏い「森」が、不思議と読むものの心を捉えて離さない。それは誰しもが持つ「森」と共鳴するが故なのか…。か、どうかはわからないけれど(笑)、暗めの絵柄と相まって、読み進めるうちにずるずると深い森の奥に引きずり込まれるような、独特の凄みを感じる一冊。どんより、暗めのドラマが好みの方にオススメ。

HER

5人の女性(と1人の男性)の「本音」を描いたオムニバス、ヤマシタトモコさんの「HER」。それぞれの日常生活を何気なく送る、ごく普通の主人公たちの内面をモノローグで語り、そして終盤で本音が噴出。最後はちょっと笑えるオチをつけるw、という形式。

人の内面を見ていく、ということに対する怖さ、居心地の悪さ。そしてあまりにも赤裸々にさらけ出されるナイーブさに感じる不思議な恍惚感。漫画なんだけど、生々しい人間性がビンビン伝わってくるのは、さすがのヤマシタトモコ作品。赤裸々なままで終わると何だか微妙になるところを、笑いで締めてチャンチャン♪というのもまた、この連作のおもしろみ。10年以上前の作品なのですが、飽きずに楽しめます。

スターダストメモリーズ

星野之宣さんのSF短編集「スターダストメモリーズ」。表題作は全6話から成る連作で、その他7編、計13編の短編を収録。宇宙の神秘を感じる作品から、SFの定番とも言える船内パニックものまで、リアルで幅広いジャンルのSF漫画が詰まっています。

連作「スターダストメモリーズ」最終話の「セス・アイボリーの21日」は必見のSF作品。とある惑星に不時着した女性調査員。しかしそこは、生物時計の進み方が異常に速い星だった。救助が来る21日前に老衰で死んでしまう運命を悟った彼女が取った行動とは―?ほか、星野之宣氏ならではのアイデアあふれるSF短編が満載。バッド・エンド多目なのも好み。

書道教室

筒井秀行さんの「書道教室」全1巻。逆プロポーズで玉砕、いたたまれなくなって会社を辞めた斉藤さん(29)は、祖母から引き継いだ書道教室で先生をすることに。そこに集う個性的な生徒たちと彼女が、シュールなコメディを展開する、というギャグ漫画。

作者独特の、気の抜けた感じのフニャッとした、それでいてアート感あふれる線が紡ぎ出す、独特の世界観がスゴイ。そのセンスによって流れるように進む、奇抜かつ不思議なストーリーは、唯一無二の漫画体験。サブカル色の強い漫画ですが、筒井秀行さん、相当絵がウマいよ。読む人を選ぶ作品かもしれませんが、自分は好きです。

蓬莱トリビュート 中国怪奇幻想選

中国の古典をベースにした人外と人間の物語を、作者・鮫島円人さんのイラストチックな絵柄でポップに描いた「蓬莱トリビュート 中国怪奇幻想選」。中華系のファンタジー全10話を収録。

古典、というか昔話風のストーリーなので、アンハッピーエンドな話もチラホラ。が、それが「いかにも昔話風」な感じ。キレイなオチを変に付けたりしないところが、かえって中華風で良し。日本人には馴染みのない異国の物語を、親しみやすい絵柄で漫画化している、という点に大きな価値があると感じます。っていうかシンプルに漫画としておもしろい作品。

これでおわりです。

小坂俊史さんの「これでおわりです。」。離島の小学校の最後の卒業生、特殊な名字で常に名簿の最後にいる男子、実業団駅伝の最後の走者、高校野球の最後の打者など、いろいろなシチュエーションの「おわり」を各話8Pで描くショート・ストーリー集。

人生で迎える様々な「最後」は、時にドラマティック。それを作者独特の笑いの感性で包み込み、コミカルに展開していく様子に、思わずフフッと笑ってしまいます。そんなゆるやかな笑いの最後を締めくくる最終話「最後の回」は、実に印象的な一話。普通のOLである主人公がふとしたきっかけで送る、ドラマのような人生。その結末は?「おわり」だけれど「おわり」を感じさせない、心に残る「おわり」です。

まとめ

以上、「連作短編集・オムニバス形式の漫画まとめ」でした。またおもしろい作品を読み次第、随時追記していく予定です。

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