漫画『音盤紀行』―レコードが人の縁を紡ぐドラマ描く短編集

祖父の遺品に記された謎の言葉。自由に音楽を聴けない国。田舎町で少女に出会ったビッグバンド…。その傍らには、いつもレコードが

毛塚了一郎さんの漫画『音盤紀行』。レコードをハブに「音楽のあるドラマ」を様々なシチュエーションで描く短編集です。連載はKADOKAWAの漫画雑誌「青騎士」で、2022年5月現在、コミックス1巻が刊行中。

『音盤紀行』感想・レビュー

亡き祖父のコレクション整理で、買取査定を「ミヤマレコード」に依頼した女性。やってきた深山さんと部屋を確認していると、読めない外国語タイトルのドーナツ盤(EPレコード)を発見

民族音楽らしきメロディーと、祖父が書いたと思しきジャケットの文字「マヤナ」が気になった二人は、レコードの「正体」を突き止めることに。そこには意外なルーツが…?

…という第一話『追想レコード』を皮切りに、『音盤紀行』では様々な時と場所で展開される「レコードにまつわるドラマ」が、短編形式で描かれていきます。

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レコードって、大きくて、重くて、傷つきやすくって、取り扱いにすごく苦労するんですよね。それも集めれば集めるほど、その苦労がかさんでいくという…。

それが今日ではすっかりデジタルが定着し、音楽は「データ」に。非常に便利ですが、そこから振り返るにレコードは、音楽に確かな存在感を与えてくれたメディアでもありました。

そんな「レコードの存在感」が、人々の思い出を浮き上がらせていく漫画『音盤紀行』。その第一話『追想レコード』がとにかく最高!な一編

ちょっと風変わりなレコード店員・深山さんと、クールな依頼人女性の二人(1巻カバーの人物たち)が即席コンビとして、一枚のレコードから記憶を浮かび上がらせていき「祖父の思い」に触れていく。

ライトなミステリー風味&静かな冒険といった風情のストーリー。レコードは果たして彼女たちをどこへ連れて行くのか?物語が進むに連れ沸き起こる、静かなドキドキ。迎える終着点も心に余韻が残るもので、満ち足りた読後感があります。

ほか、自由に音楽が聴けない社会の密かな楽しみを描く『密盤屋の夜』、世界的ビートバンドが田舎町で現地少女と(図らずも)音楽交流する『The Staggs Invasion』など、レコードが時に主役に、時に小道具となる物語の数々

レコード蘊蓄や古き良き時代を懐かしむというテイストに寄らず、「音楽が質量を持って存在していた頃」の温かみを伝えてくる構成。ちょっと懐かし目の絵柄と相まって、不思議な充足・面白みを感じます。

そんな『音盤紀行』、物語のところどころで店舗や部屋など、「レコードのある風景」が登場するのですが、そこで描かれる丁寧過ぎる描き込みが圧倒的…!

意匠を凝らしたジャケットたちが所狭しと陳列され、音を奏でる順番を今か今かと待っているかのような。力の入った1巻カバー絵からも、その雰囲気が感じ取れるでしょう。物語とともに、じっくり眺めて楽しんでみてください。

『音盤紀行』まとめ

以上、毛塚了一郎さんの漫画『音盤紀行』の感想・レビューでした。

デジタル全盛の世の中で、ちょっと懐かしいアナログ風味を感じられる短編漫画集。各話にゆるやかな繋がりもあって、連作的な面白さもアリ。「漫画で読む音楽の世界」にじっくり浸ってください。

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