この短編漫画がスゴイ!よりぬき短編マンガさん

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短編漫画が大好きで、本ブログでも多くの短編集をご紹介しています。

今回はそんな短編漫画集の中から、短編集そのものではなく、その中に収録されているおもしろい1編に絞っておすすめ漫画をご紹介。

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かえるのうた

魔法はつづく (リイドカフェコミックス)オガツカヅオ:リイド社

オガツカヅオさんのホラー短編集「魔法はつづく」より、「かえるのうた」。

カラオケ店に集い、トランプをしながら朗らかに談笑する、父・姉・弟と、父の彼女の4人。しかしなぜか、「かえるのうた」を高らかに輪唱するその姿には、どこか違和感が。そして徐々に明らかになる、家族の真実ー。

良質な短編を数多く輩出しているオガツカヅオさん。本作も読み進めるにつれジワジワ「ん?ちょっとこれ、おかしくない…?」と、心を侵食していくザワザワ感が絶妙。

単行本「魔法はつづく」全体のジャンルとしては、オカルト・ホラーに属するもの。ですが切った貼った系のホラーではないので、全方位に向けてオススメしたい漫画です。

あなたにあいみつ

グッド・バイ・プロミネンス【電子限定特典付】 (FEEL COMICS)ひの宙子:祥伝社

ひの宙子(ひろこ)さんの「グッド・バイ・プロミネンス」より「あなたにあいみつ」。

とある夜、同僚の広告営業・篠原と、女子大生バイト・秋吉さんの路チューを目撃した瑤子(37歳・独身・デザイナー)。篠原が既婚であることを知っている瑤子は、翌朝、篠原の尻に蹴りを入れる。

その後、給湯室でたまたま秋吉さんと二人きりになった瑤子。笑顔で「蹴りません?」とお尻を突き出す彼女に「なにこの女」と怒りが。しかしなぜか二人で飲みに行くことに。そこで意外な展開が…?

人と人との微妙な距離感を、終盤でグッと近づける物語運びが印象的な、連作短編集の一編。読んでいると最初は、瑤子と同じように秋吉さんに、「なにこの女」って思っちゃうんですよね。が、後半でそのイメージがコロッとひっくり返される。してやられた感があってくやしい!

リトロリフレクター

ベランダは難攻不落のラ・フランス (CUE COMICS)衿沢世衣子:イースト・プレス

衿沢世衣子さんの短編集「ベランダは難攻不落のラ・フランス」より、「リトロリフレクター」。山上の天文台を舞台に、探検に来た男子小学生と謎の少女の交流を描いた、ボーイ・ミーツ・ガール。

ゆるふわな魅力を持つヒロインと、思春期の少年のささやかな成長。そしてふと夜空を見上げて、宇宙へ思いを馳せたくなるさわやかさ。衿沢世衣子さんならではの魅力が遺憾なく発揮された一作です。

ハンドスピナーさとる

制服ぬすまれた (flowers コミックス)衿沢世衣子:小学館

同じく衿沢世衣子さんの短編集「制服ぬすまれた」から、「ハンドスピナーさとる」。

スマホを壊して落ち着かない大学生・さとるが、元ヤンの美人喫茶店員から渡されたのは、ハンドスピナー。その彼女が、謎の失踪事件に関わっているかもしれない!さとるはハンドスピナーを回して思考をフル回転させる…!

…という、ちょっとコメディー仕立てのライトなミステリー。思考前にさとるが発した「このっハンドスピナーが止まるまででいいから…!!」は名言。シリーズ化して欲しい一作。

京子の夢

宇宙のプロフィル (ヤングマガジンコミックス)こがたくう:講談社

こがたくうさんのSF漫画「宇宙のプロフィル」より「京子の夢」。

安住の地を求めてさまよう宇宙船内の少女・ルシュと、現代日本に住む女子高校生・京子、二人の意識がリンク。夢を見ている時だけルシュとなる京子は、やがて宇宙船内から「地球」を見つけ…。

シンプルな構成に見えつつも、読者の想像をクイッとひねる仕掛け。いい味出してます。短編ながら広大な宇宙を意識する、良質なSF漫画。

長い夢

伊藤潤二自選傑作集 (朝日コミックス)伊藤潤二:朝日新聞出版

作者・伊藤潤二さん自らがチョイス、解説まで付いた「伊藤潤二自選傑作集」。名作「首吊り気球」も収録されていますが、「長い夢」も捨てがたい良作。

一晩に夢の中で、実際の睡眠時間よりもはるかに長い時を過ごす入院患者。しかし夜を重ねる内に、夢は彼の外見にも次第に影響を及ぼし…。

どの作品を読んでもその発想の奇抜さ、そしてそれを表現する強い力を感じる伊藤潤二さんのホラー漫画。その中でも個人的に特に印象に残っている短編。ハッと息を呑む怖さと、驚きがあります。

くろいひつじ

山へ行く萩尾望都:小学館

萩尾望都さんの短編漫画集「山へ行く」より「くろいひつじ」。

4世代に渡り、音楽を愛する一族。法事で亡き曾祖母の思い出と音楽話に花を咲かせる。その中でただ一人、疎外感を感じる男性。積年のいらだちはやがて頂点に達し…。

集団の中における除け者を暗喩する「くろいひつじ(黒い羊)」。その「羊」である男性の、誰にも理解されないであろう暗い妄執、そして苦しみ・哀しみを、わずか16Pで描ききった短編。萩尾望都さんのスゴさをわからされた、衝撃の一作でした。

透明人間の恋

透明人間の恋 (マーガレットコミックスDIGITAL)安藤ゆき:集英社

安藤ゆきさんの短編集「透明人間の恋」から表題作「透明人間の恋」。

透明人間のように存在感の薄い地味な女子高生。彼女がクラスのモテ男に告白も、「あんた鏡みたことあんの?」とバッサリ。そこからメガネを止め、髪型を変え、化粧もはじめて次第に変化していく彼女は、再びモテ男の前に立つがー。

地味目の女子がその外見を劇的に変貌させてゆく、というのは定番のパターン。が、オチが全く読めず、そして「そう来たか!」とニヤリ。意外な驚きを与えてくれます。

とんかつ

ゴーグル (KCデラックス アフタヌーン)豊田 徹也:講談社

豊田徹也さんの「ゴーグル」より巻末収録の「とんかつ」。

過去の融資に関わる問題が発覚。当時担当していた元行員に協力をあおぐ、検査部の女性銀行員。しかしその老行員が出した協力の条件は、昔食べたトンカツを一緒に探すこと―。

トンカツの味が忘れられない、という単純な話ではなく、その裏には老行員の仕事に対する悔い、そして若くして亡くした息子への思いが。それに付き合うクールで無表情な女性銀行員の姿が印象的。淡々と進行しながら濃密、ラストは思わずニヤリとくる満足感。これぞ大人のドラマ。

すいかドライブ

小僧の寿し (マーガレットコミックスDIGITAL)勝田文:集英社

勝田文さんの短編漫画集「小僧の寿し」より「すいかドライブ」。

毎日に張り合いの無い女性が、偶然再会した吹奏楽部の先輩に誘われて、軽トラでスイカ売りのドライブに出るお話。

ふとしたきっかけで人は変われる。そしてその横にはスイカがある?夏の一日の「一瞬」が一人の女性の心にエポックを与える瞬間が、さわやかに描かれる一編。

ちひろ

地上の記憶 (アクションコミックス)白山宣之:双葉社

白山宣之さんの作品集「地上の記憶」より「ちひろ」。

海辺の田舎町に住むとある女子中学生の夏の一日を、写実的な描写で丁寧に描いた一作。

少女の一日をただ訥々と綴っているだけなのに、家族への想い、進路に対する不安など、彼女の内面がじわじわと伝わってくる、緻密な表現力と構成力は圧巻。彼女はこの後、どんな人生を送るのだろう?そんなことを考えずにいられない。

兄嫁の爪

彼女のカーブウラモト ユウコ:太田出版

ウラモトユウコさんの漫画短編集「彼女のカーブ」より、「兄嫁のつめ」。

ネイリスト検定を明日に控える女性。しかしトラブルによりモデルがキャンセル。ちょっと苦手なギャル系の兄嫁に助けを求めるも、マイペースな彼女に対してイライラが頂点に…。

徹底的に噛み合わない二人の女性。しかしその原因は実は…というオチがおもしろい。再読すると、いろいろと違う面から物事が見えてくる。ほっこり漫画でありながら、意外と示唆的な内容。勉強になります。

谷後先生

幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい (IKKI COMIX)黒谷知也:小学館

収録作品の多くから、漫画なのになぜか感じる文学感。黒谷知也さんの「幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい」から「谷後先生(やごせんせい)」。

定年後に1年だけ国語の講師となった老教師と、彼に不思議な気持ちを抱く女子中学生。二人の作文を通した交流を、女子目線で描く短編。

多くは語らず、その姿勢で矜持を語る老教師。思春期らしい真っ直ぐな清廉さを持つ中学生。世代を超えて心を通わす様、短編小説を読み終わったかのような瑞々しい読後感。

ヨランダ・ボーの薬草

奈知未佐子短編集 ~思い出小箱の15粒~ (フラワーコミックスα)奈知未佐子:小学館

「奈知未佐子短編集 ~思い出小箱の15粒~」より「ヨランダ・ボーの薬草」。

幼い頃、大事な薬草を無くしたヨランダ。やがて子を生み、老人となる。ある日、疫病により家族たちが次々と倒れる。ヨランダは思う。あの薬草さえあれば―。そして彼女の前には突如、不思議な扉があらわれ―。

童話的なテイストで展開される、不思議なお話。優しい絵柄と裏腹に、展開される物語はダイナミックで力が入ります。物語の終盤で発せられるヨランダの言葉に、静かに感動。

クローン

スキエンティア (ビッグコミックススペシャル)戸田誠二:小学館

戸田誠二さんのSF短編漫画集「スキエンティア」より、第3話「クローン」。

事故で夫と娘・マナミを亡くした女性。医師の提案により娘をクローンとして再び産み、娘・ヒロミとして育てる道を選ぶ。しかし彼女の成長とともに、その心には戸惑いと葛藤が生まれー。

事故の辛さを乗り越えるために娘をクローンとして再生した女性。子どもの成長を喜びつつも自身のエゴと向き合っていく。感情の置きどころが難しい問題で、100%スッキリすることは決してない話。しかし人間が成長する生き物である、という「光」を感じさせる。

金なし白祿

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (HARTA COMIX)九井 諒子:KADOKAWA / エンターブレイン

「九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子」よりファンタジー時代劇「金なし白祿」。

描かれたものが紙を飛び出すほどの巧みさを持つ画家・白祿(びゃくろく)。彼の贋作である侍と馬の絵に眼を入れ実体化し、金策に走るも失敗。そこで高価な龍の鱗を手に入れるため、絵の中の龍に眼を入れるが…。

下手くそな贋作ゆえダメダメな侍。しかしその絵は描いたのは実は…読めば読むほどジワジワ来ます。多彩な表現力を持つ漫画家・九井諒子さんの和風タッチにも注目。

ヤキトリ奇談

顔ビル/真夜中のバスラーメン呪みちる:株式会社トラッシュアップ

呪みちるさんのホラー短編集「顔ビル/真夜中のバスラーメン」から「ヤキトリ奇談」。

「ヤキトリ屋」のゲテモノ串で、上司であるキャリアウーマンを困らせようとする年上の部下。しかし上司は逆に、その味にハマってしまう。やがて会社をやめた部下とヤキトリ屋で再会する上司は、恐ろしくも不思議な体験をする…。

美麗な作画と奥深いストーリーで、読者を独特のホラー世界へ誘う呪みちる作品。この「ヤキトリ奇談」も単にグロテスクなだけではない、読み応えのある物語。極上の恐怖を味わったあと、得も言われぬ余韻が残ります。

スケスケメガネ伝説

口裂け女あらわる!~昭和怪奇伝説~ (ホラーM)呪みちる:ぶんか社

同じく呪みちるさんの短編集「口裂け女あらわる!~昭和怪奇伝説~」より「スケスケメガネ伝説」。

何でも見える「スケスケメガネ」を手に入れ損なった男の思い出ばなし。しかしそれを実際に手にした人間は、恐怖の体験をしていた…!

タイトルからして昭和の都市伝説感があふれますが、中身は本格的なホラーストーリー。妖しくも美しい美麗な線と深みのある恐怖物語は、一度読んだら忘れられないインパクトあり。呪みちるさんの妖艶な描画が素晴らしい。

ミッドナイトブルー

ミッドナイトブルー (FEEL COMICS)須藤佑実:祥伝社

全7編収録の漫画短編集「ミッドナイトブルー」より、表題作「ミッドナイトブルー」。

高3の夏に、2年毎の再会を約束する男女4人。しかしその一人・みのる(女性)は交通事故にあい帰らぬ人に。その後、初めての集まった3人。主人公・暁人は幽霊となったみのるに再会する―。

思わず夜空を見上げたくなる、切ないラブ・ストーリー。静寂かつファンタジックな雰囲気が心に染み入ります。そして全編、青で彩られているこの短編集は、まさに「ミッドナイトブルー」。

炎トリッパー

高橋留美子傑作短編集(2) (少年サンデーコミックス)高橋留美子:小学館

「高橋留美子傑作短編集(2)」より、アニメ化もされた名作SF「炎(ファイヤー)トリッパー」。

ガスタンクの爆発により、戦国時代にタイムスリップした女子高生。一緒に爆発に巻き込まれた男の子を探そうとするが…。

タイムスリップ要素をうまく使った仕掛け、短編ながらも読み応えのあるSF作品。そして徹底的にボーイ・ミーツ・ガール(またはガール・ミーツ・ボーイ)が描かれるのは、流石の高橋留美子漫画。色あせないおもしろさがあります。

私たちはまだ途中

世界の合言葉は水 安堂維子里作品集 (RYU COMICS)安堂維子里:徳間書店(リュウ・コミックス)

みずみずしい短編を多数収録した、安堂維子里さんの「世界の合言葉は水 安堂維子里作品集」から「私たちはまだ途中」。

宇宙学校で、宇宙飛行士としての訓練を積む少年少女たち。その中でも天才と評される少女、その目は常に遠くを見ていた。そして宇宙へ上がった彼らは、少女の取った行動に驚愕するー。

水の表現を絡めながら、リアルかつファンタスティックに描かれるSF短編。地球、そして宇宙へと自然に気持ちが広がってゆく、不思議な読後感のある作品です。

ELEMENT7

空中庭園の人々 冬目景作品集 (バーズコミックス)冬目景:幻冬舎コミックス

「冬目景作品集 空中庭園の人々」より「ELEMENT7」。

女子大生の部屋に居着いた宇宙人。少女の姿に擬態したそれは、宇宙にいる仲間からの助けを待ちながら、完璧な主婦を目指す(笑)。そしてやがて来る別れ。その時、宇宙人は意外な行動をー。

アパートの一室で起こる、小さな「未知との遭遇」。コミカルだけど、ちょっとドキッとする、そんなファースト・コンタクトが描かれます。

なき顔の君へ

さらば、やさしいゆうづる (ITANコミックス)有永イネ:講談社

有永イネさんの漫画短編集「さらば、やさしいゆうづる」より「なき顔の君へ」。

顔のアザがコンプレックスな女子中学生は、良くできた双子の弟の不幸を願い、そしt彼の「顔」が突然見えなくなる―。

互いの立場を取り替える物語「王子と少年」に絡めて、コンプレックスを抱える少女がやがて周囲に向き合うまでを、丁寧に描いた短編漫画。彼女の決意の表情は、ハッとする美しさ。

コルベス様

スノウホワイト グリムのような物語諸星 大二郎:東京創元社

「七匹の子やぎ」「ラプンツェル」など、グリム童話を諸星大二郎さんが独自の感覚でアレンジした「スノウホワイト グリムのような物語」から「コルベス様」。

擬人化された動物たちが、コルベス様のお屋敷へ乱入、ひたすら暴虐の限りを尽くす様が淡々と描かれる、異色の物語。

普通はまず知らないであろう「コルベス様」という話。オリジナルは童話でありながら、どことなく漂うSF・ホラー感は諸星大二郎ならでは。奇妙な後味を心に残します。

マムシデ

おとろし (チャンピオンREDコミックス)カラスヤサトシ:秋田書店

カラスヤサトシさん描くホラー・オムニバス「おとろし」より、「マムシデ」。

マムシをたやすく捕らえることのできる、不思議な「マムシ手」を持つ老人。しかしふと思う。「この手で人をつかむとどうなるのか?」ふといだいた妄執と、その顛末。

わずか6Pの短編ながら、人の底に潜む昏い欲望をねっとりと描いた秀作。他人の心の闇を思わずのぞいてしまったような、後味の悪い恐怖。

僕らの夏と灰

終末の惑星【電子描き下ろし特典付】 (ZERO-SUMコミックス)大家:一迅社

大家さんの「終末の惑星」より、「僕らの夏と灰」。

引っ越しをする少年のために、森に隠れて「誰にも見つからずに一週間過ごすゲーム」にチャレンジする、小学生男女5人。しかし夜の森で、彼らは恐怖の体験をするー。

少年少女たちのひと夏の冒険を、じっとりと描き出すホラー短編。子どもから大人へと成長していく不安定な時期の、繊細な心と残酷さ。先の読めない恐ろしさを感じます。

最後の回

これでおわりです。 (バンブーコミックス)小坂俊史:竹書房

小坂俊史さんの漫画短編集「これでおわりです。」。「おわり」をテーマにしたショート・ショートから、ラストの1編「最後の回」。

ドラマ好きのアラサー女性会社員。あるドラマのラストを見逃したことから、ゴールを気にしない人生を送るように。そして…という短編。

ラストのセリフがすごくステキな一編で、この作品が「これでおわりです。」の「おわり」となっているのが、実に洒落ています。

 

まとめ

以上、「この短編漫画がスゴイ!よりぬき短編マンガさん」でした。各単行本に収録されている作品から1編を選びましたが、もちろん他にもおもしろい漫画がたくさん詰まっています。ぜひ手にとってみてください。

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