神への生贄だった少女は、不思議な行者とその従者に導かれ、神々を巡る旅への一歩を踏み出す―。
鶴渕けんじさんの『峠鬼(とうげおに)』。人間の身近に神々がいた頃の日本を舞台に、行者・役小角(えんのおづの)と弟子たちの道行きを描く、和風ファンタジー漫画です。
連載はKADOKAWAのハルタ誌。2023年5月現在、単行本は6巻まで刊行。以下続刊です。
『峠鬼』感想・レビュー
あらすじ
ずらりと並ぶ大山・小山、それらが成す谷を埋めるように、「倭の国」があった頃。
大小の御山は神様の国であり、世のすべては神様の思し召し次第と信じられていた。
その倭の村の一つで、齢12にしてある年の生贄に選ばれた、みなしごの妙(みよ)。
運命を受け入れ淡々とした生活を送るが、その前に高名な行者・役小角とその弟子である前鬼・後鬼が現れる。
人々から慕われるも、どこか胡散臭い彼らを信用できない妙。だが弟子の女性・後鬼と親しくなり、生贄となることへの恐怖を吐露、涙を流す。
そして神に捧げられる日。社へ出向いた妙は、役小角の不思議な力で「神の世界」へ足を踏み入れる―。
完成度の高い第一話が面白い!
神への捧げ物である少女・妙と、行者・役小角一行との出会いが描かれる『峠鬼』第一話。
もともとはハルタ誌の特別小冊子「青騎士」に掲載された作品ですが、そこで注目を集め連載へと繋がったそう。
そんな経緯を持つだけあって、この第一話の完成度がものすごく高い!
後に師となる小角と、その従者である少年・前鬼(善)との出会い。
人知を超えた力を発揮する「神器」と、それを持つ巨大な神の存在感。
そして仮面の美女・後鬼のミステリアスな振る舞い…。
それらが絡み合い、少女の運命を変え、そして新たな旅の一歩となっていく。そんなSF風味を持つファンタジー・ストーリーが圧倒的に面白い!
60Pを超えるボリュームと相まって、大きな満足感を与えてくれます。
神々と神器を巡る摩訶不思議な冒険
もちろん第二話以降も面白い『峠鬼』。役小角と弟子・善、そして新たに小角の弟子となった妙。三人のファンタジックな冒険が紡がれていきます。
その見どころは、行く先々で出会う土着の神々と神の持つ神器に関わる、摩訶不思議な出来事。
どちらかと言えばモンスター的な外見、そしてそこから生まれる圧倒的な威圧感を持つ神々。
彼らの持つ「神器」には人智の及ばぬ不思議な力があるのですが、それが人間たちに大きな影響を及ぼすことも。
その神々を訪ね歩き、神器絡みのトラブルに都度巻き込まれる小角・妙たち。
その解決を目指すのですが、時に異空間に飛び込み、時に時間を飛び越える、SF風味を加えた冒険に、大きな面白みがあります。
【マンガ多すぎ!コミックシーモア】
役小角一行、その旅の目的は?
さて、それでは役小角一行の目的とは何か?
それは彼の仕える神・一言主(コト様)に再び会うこと。
巨大な龍の姿を持つコト様。変化して女性の姿にもなり、それは幼き日の役小角が淡い恋心を抱く(ひょっとして今も?)ほどの美しさ。
人々の願いを叶える不思議な力を持つ神ですが、しかし現在はその身に何やら問題を抱えているよう。
役小角や弟子・善との関わりを持つ彼女に、果たして何が起こったのか…?
巻が進むにつれ徐々に詳細が顕になってくるのですが、さて役小角たちの目的は成就するのか。不思議な旅の終着地点が気になるところです。
まとめ:絵・物語ともバツグンのクオリティ!
以上、鶴渕けんじさんの『峠鬼』感想・レビューでした。
絵・物語ともバツグンのクオリティを持つ作品。一度その物語に触れたならば、古き日本の世界に一気に引き込まれる和風ファンタジー漫画です。
なお第一話は、電子書籍の試し読みで最後まで読めます。一話完結の物語としてシンプルに面白いのでオススメ。ぜひ『峠鬼』の世界に触れてみてください。
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