秋田書店・チャンピオンREDコミックスより発売中、カラスヤサトシさんのホラー・オムニバス漫画「おとろし」を読みました。
何やら驚いているような表情の和服の女性。その顔にはタイトルである「おとろし」、そして作者名「カラスヤサトシ」の文字があしらわれています。コミカルなようでいて、本編の恐怖をほんのり予感させる、インパクトのある絵です。
「カラスヤサトシ」という、作者名をタイトルにした漫画を書かれているのは知っていたのですが、その漫画を読むのは今回が初めて。著者初のホラー作品から入るとは思ってもみませんでした。
「おとろし」概要
この「おとろし」は昔話風な時代物から現代物まで、各話6Pの短編を計24編収録。
秋田書店の漫画サイトでそのうちの一編「女が落ちる」が試し読みできます。
…試し読み、もう読まれましたか?ほぼ全編、こんな感じの怪異が描かれます。
本作で描かれる恐怖の根底にあるのは「人」、ですね。ショッキングなビジュアルは比較的少なめ。
各話とも6Pと短いのですが、読み終わった後にジワジワ来る怖さ・気味悪さがあります。
感想・レビュー
お気に入りは第6話「マムシデ」。
マムシをたやすく捕らえる「マムシ手」を持つ老人が、幼き頃から抱く「この手で人をつかむとどうなるのだろう?」という妄執とその顛末。
老人の静かな「欲望」、そして「恐怖」が見事に描かれた傑作です。
第4話「想い」も面白い。
日に日に弱る祖母の頼みで、廃村にある祖母の生家を探す女性。
やがて探し当てた「家」、そして彼女に芽生えたある「想い」。
こちらも人の心の闇が垣間見えて、ゾクリとくる一本。
この「おとろし」が素晴らしいのは、24編の全てに「恐怖」が描かれているところ。
いや、ホラー漫画なんだから当たり前だろ、と思われるかもしれません。
しかし話がたくさんあると、時々不思議な話・ちょっといい話なんかが混じってたりするじゃないですか。
でも「おとろし」は全話一貫して、ちゃんと「怖さ」を追求した作りになっている。
これってホラー漫画としては結構大事。
そしてどの話も、何気に「日本昔ばなし」の怖い回を見ちゃった的なイヤゲ感が残ります。
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まとめ
以上、漫画「おとろし」の感想・レビューでした。
暑い夏の夜にピッタリのホラー・オムニバス。家族が寝静まった頃、扇風機の風を浴びながら一人でじっくり読むと、怖さ倍増。
そして秋口、涼しくなってきた頃に再読すると、またヒンヤリできそう。
ナンバリングはされていないので単巻で完結しているようですが、また続きを読んでみたい漫画です。
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