良き大人・良き社会人として暮らす「善良な人々」。しかしひとたびネットに触れると豹変、「モンスター」の顔をむき出しに―?
現実に起こっているようなSNS絡みの犯罪をベースに、ネット社会の闇・裏側を描き出すブラックなサスペンス。望月美乃さんの漫画『SNSの怪物』レビューです。
2024年2月現在、白泉社・黒蜜コミックスより1~3巻が刊行中。以下『SNSの怪物』が気になる方向けに、主なあらすじや見どころなどを基本ネタバレなしでご紹介します。
『SNSの怪物』あらすじ
家庭では「夫」「姉弟の父」として、職場では同僚・生徒の信頼を集める「教師」として、順風満帆な生活を送る40代男性・佐伯。
しかし彼には「裏の顔」があった!
自室にこもり、パソコン・スマホなど複数の端末を操作する佐伯。ログインしているSNSのプロフィール欄には偽名と、「芸能界でプロデューサー」の文字が。
華やかな世界を夢見てSNSにアクセスしてくる少女たちを、時に褒めちぎり、時に脅しをかけながら、佐伯は「要求」をする。
「じゃあ次、服脱いでみようか」
一度それを受け入れた相手に対し、要求は次第にエスカレート。少女たちは佐伯の手に絡め取られ―?
『SNSの怪物』レビュー
SNSの裏側で蠢く怪物
以上は『SNSの怪物』1巻の主なあらすじ。芸能プロデューサーを騙る中学教師と夢見る少女たちのやり取りを中心に、「SNSのモンスター」の姿をあぶり出すヒトコワ系のサスペンスが描かれます。
よくありますよね。「大人が未成年に裸の画像を送らせて逮捕」みたいなニュース。あれ、「どうして送っちゃうんだろう?」ってつねづね不思議だったんですが、これを読んで思わず「なるほど…」と唸ってしまいました。
SNSの向こうの相手を「オモチャ」として認識する佐伯。家族や同僚・生徒など、リアルで接する人には決して見せない姿を、ネットでは解禁。
いかにも「良い人」風に甘い言葉をかけながら、状況に応じて効果的な脅しをかけ、自分の望む結末へと導いていく。
「良心」という制限を外してリビドーを解放する彼の姿は、まさに「SNSの怪物」。その怪物に、一般人が立ち向かえるはずも無く、色んな意味で納得。(※本書の内容は悪用厳禁!)
怪物 VS 怪物!
そんな「モンスター」の様子が、実に不気味で恐ろしいのですが、誰が言ったか「ネットは広大だわ」…世の中は広い!
欲望のおもむくままに、少女たちを毒牙にかけていた佐伯は、新たな少女をターゲットに。
しかし彼女もまた「SNSの怪物」だった…!
詳しくはネタバレになるのでボカしますが、SNS利用での「甘さ」を突かれて、今度は佐伯が追い詰められていく立場に。
さて「怪物 VS 怪物」の結末やいかに!というのが1巻の見どころ。
リアルな出来事をベースに、サイコ・サスペンスともサイコ・ホラーとも取れるストーリー展開。奇妙な現実味があって怖い…!
ヒトコワ系のドラマが恐ろしい
続く『SNSの怪物』2巻では、別のケースで「新たな怪物」が登場。
会社員・物部は、成績優秀で人当たり良し、周囲からの信頼も厚い好人物。が、実は身重の妻を持ちながら、部下女性や、独身と偽って付き合っている「彼女」とも関係を持っている。
…と、ここまではよくある(?)お話。物部の怪物たる所以は、彼女たちとの性交を撮影・裏サイトにアップ、しかもそれを「社会貢献」だと真面目に考えているところ!
サイコパス風味が強く、普通の人間には理解のできない性質を持つ、まさに「怪物」である物部。しかし彼にも佐伯と同じく、やがて「転換点」が訪れることに。結果、どのような運命をたどるのか…?
いずれにしても、常識の通じないモンスターたちが登場する物語。SNSやネット自体が悪い訳では無い。でもそれらを介すことで「怪物」となる人々が、何とも恐ろしい。イヤゲな余韻を残す、ヒトコワ系のドラマです。
レビューまとめ
以上、望月美乃さんの漫画『SNSの怪物』のネタバレなしレビューでした。
カバー絵の通り、本作は可愛らしい絵柄の作画。ですが、それが逆にサイコ風味を増幅、ホラー・サスペンス感がより強く迫ってきます。
さて本作を読んで、遠い世界の出来事と思うか、よくある話だと笑い飛ばすか、それとも「自分が怪物であること」に気づくか…?
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