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漫画『小僧の寿し』感想―食べ物と愛さえあれば!勝田文の短編集

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しあわせも、苦しみも、きっと乗り越えられる。そう、おいしいごはんがあれば―!

「マリーマリーマリー」でおなじみ、勝田文(かつた・ぶん)さんの短編集「小僧の寿し」のレビューです。

「小僧寿し」じゃなくて「小僧の寿し」。暖簾をくぐる女性の左下にちょろっと見えているのが小僧さん。勝田文さんの漫画、ほのかな笑いがあっていいですよね。落ち込んだ時なんかに読むと最高です。

「小僧の寿し」レビュー

概要

短編漫画集「小僧の寿し」は全5話収録。

  • 小僧の寿し
  • チビのおでん
  • すいかドライブ
  • ととせの鴨
  • クリスマスキャロル

以上が収録の全タイトル。いずれも食べ物に絡んだ話が描かれます。最後の「クリスマスキャロル」は、ディケンズの同名作をコミカライズした作品です。以下、短編の内容と感想をいくつか。

小僧の寿し (マーガレットコミックスDIGITAL)勝田文:集英社

「小僧の寿し」

式場で事故が起きて結婚式が中止、婚約者が失踪してしまった女性。ふらりと入った寿司屋の小僧と意気投合。その後、小僧は彼女の婚約者らしき人物を見かけるが…?というお話。

女性と小僧が恋愛…という展開ではなく、その交流を通して「幸せとは何か」が描かれる物語。そして作中で多々登場するお寿司を食べるシーン、これが実にうまそうで…!

小僧さんと女性のやり取りも面白いのですが、読んでいると不思議とお寿司が食べたくなってくる。「お寿司屋さん」の雰囲気が伝わってくる漫画。たまには回らないお寿司屋さんに行きたいわ、と思わざるを得ない。

「すいかドライブ」

毎日がつまらなく、張り合いを感じない女性。吹奏楽部の先輩男性に偶然再会。先輩が行きたいライブの費用を稼ぐために、軽トラで一日スイカを売るドライブに出る、というお話「すいかドライブ」。

仕事で失敗したけど明るい先輩と、対象的に終始暗い主人公。しかしスイカを売ったり会話をしたりするうちに、彼女にハッと気づく瞬間が。そしてその気持ちを決定的に印象付けたのが、トラブルにあった時のスイカ。

ちょっと笑えるんですが、なんだかわかる部分もある。そうそう、人って食べ物があればしぶとく生きていけるものなのかも。人生の転換点をさわやかに描いた秀作です。

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「ととせの鴨」

仕事でも恋愛でも不運続きのアラサー女性。偶然知り合った資産家らしきアラフィフ男性と鴨料理を食べることに。次第に心を許していくが、ふと邪(よこしま)な心を起こして…という「ととせの鴨」。

鴨を絡めたコミカルな描写を交えながら展開される、しっとりした大人の恋愛ストーリー。洒落た男性の気遣いと、彼に気持ちが傾いていく女性の心の移ろいが、短編とは思えない濃密さで、じっくり描かれます。

「これから10年 僕は毎日君を思うよ」。男性の言葉と二人の約束。そのあとで鮮やかに描写される、勝田文さんらしいイラストチックな時の移り変わりとラスト。こういう形の恋愛もステキだと思わずにはいられない、大人のドラマが心に残ります。素晴らしい。

まとめ

勝田文さんの作品を読むと、暗かったり悩んでいた自分ってなんだったんだろ、こまけぇことは気にすんなよ!って気持ちになれます。この「小僧の寿し」も、そんな勝田文マンガ独特の、心地よい空気感を感じられる短編集。さらりと読んでまた読み返したくなる、そんな魅力を持っています。

紙の漫画は絶版状態でしたが、2018年3月に待望の電子書籍化。読みやすくなりましたのでぜひどうぞ。短編漫画好きにオススメです。

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