「寄生獣リバーシ」―「寄生獣」本編の裏側をサスペンスフルに描く正統スピンオフ

あの「寄生獣」が20年以上の時を経て、公式スピンオフ「寄生獣リバーシ」として復活!これまでもオマージュ的な短編は発表されていましたが、長編としては初登場です。

作者は女子格闘技漫画「鉄風」の太田モアレさんで、オリジナルの作者・岩明均さんは原作者としてクレジット。2021年7月刊行の8巻で完結となりました。

以下「寄生獣リバーシ」の感想ですが、原作「寄生獣」のネタバレを多少含みますのでご注意を。

「寄生獣リバーシ」感想

あらすじ・概要

「寄生獣リバーシ」のオリジナルである「寄生獣」全10巻は、講談社アフタヌーン誌に1988年より連載された漫画。作者・岩明均さんの名前を一躍有名にした出世作で、実写映画・アニメなど映像化もされました。

高校生・泉新一とその右腕に寄生したミギーが、人間の頭部と同化し人を捕食する寄生生物たちと戦う、というストーリー。ヒューマン・ドラマ的要素も持つホラー漫画として、今なお根強い人気を誇ります。

そのスピンオフである「寄生獣リバーシ」。描かれる世界はオリジナルの「寄生獣」と同時代・同一線上で、本家でおなじみのキャラクターも一部登場。主人公の少年・タツキは、あの「市長・広川」の息子です。

東福山署管内で起きた、寄生生物による「ミンチ殺人」。それを捜査する刑事・深見、事件現場にいたタツキ、そしてその父親である広川を中心に、オリジナル「寄生獣」の裏側が描かれます。

なお「寄生獣リバーシ」序盤では、広川はまだ市長ではなく「市議」。なので時系列的には、オリジナル「寄生獣」4巻ぐらいの物語と思われます。

太田モアレ描く「寄生獣」の世界

「寄生獣リバーシ」の作者・太田モアレさんは、本格女子格闘技漫画「鉄風」が代表作。「鉄風」は「寄生獣」とは全く異なる雰囲気の作品ですが、果たしてその作風は「寄生獣」とマッチしているのか…?

…と思いながら「寄生獣リバーシ」を読んでみると、それは杞憂。共通のキャラクターが出ているということだけではなく、丁寧な描写や「寄生獣」に対する愛情から、本作が「寄生獣」世界の正統な継承作品であることを実感できます。

太田モアレさんは本作以前に、「寄生獣」のトリビュート・コミック「ネオ寄生獣」に、「人間として一生を送ったとあるパラサイト」を描いた短編「今夜もEat it」で参加。随所にオリジナルの絵柄そっくりのパロディを仕込んでる同作は、コメディながら実に完成度の高い作品

本作「寄生獣リバーシ」ではその実績と、太田モアレさん本来のテイストが融合。オリジナルの世界観にさらにドスの利いたサスペンス・ホラー感がプラスされ、原作ファンも違和感なく入っていける雰囲気が形成されています。

広川の息子・タツキの「正義」

寄生生物による殺戮現場に佇むタツキ、というショッキングなシーンからスタートする「寄生獣リバーシ」。その後、警察の取り調べを経て担当刑事・深見とともに寄生生物に襲われるタツキ。深見に「君が見たのはあのバケモノなのか?」と問われると、

僕が見たのはあんな化け物よりもおぞましい、悪だ

ミギーの細胞と一体化した後の新一を彷彿とさせるような、独特の落ち着きを見せるタツキ。事件以降は深見と協力関係を築きながらも、行動原理や目的は序盤ではまだ不明。

父親である広川とは、微妙な距離感のある彼。どうやらその行動は己の中の「正義」によって決定されているようですが、果たして彼の言う「悪」とは何なのか…?

「田宮良子」と「後藤」

一方、本編と同じく寄生生物側の視点からも物語は展開。すでに寄生生物たちとの接触を果たしている広川の側には、協力者である「田宮良子」の姿があります(まだ「田村玲子」とは名乗っていない)。

卓越した頭脳と冷静な判断力で、「仲間」たちの未来を画策する彼女。原作で「後藤」を「作り上げた」ことを匂わせていましたが、本作ではその「実験」の断片が描かれます。

その結果は「寄生獣」の読者ならば既に周知の内容ですが、どのような過程を経て怪物・後藤が生まれたのか?寄生獣ファン注目のポイント。なお「寄生獣リバーシ」での初登場時は「本来とは違う姿」で現れる彼女、その容姿に思わずニヤリ

「寄生獣」の「リバーシ」たる物語

そして1巻の中盤~終盤では、「寄生獣リバーシ」のキーを握ると思われる、とある人物がぼんやりと描かれます。不審な行動を取る彼が、果たしてタツキの指す「悪」なのか?「アイツを絶対に許さない」と息巻くタツキが立ち向かう相手なのか?

巻を重ねて徐々に顕になるその正体。ネタバレになるのでその正体はここでは秘密にしておきますが、不気味さを感じずにはいられないシルエットと「身体」は、まさに「寄生獣リバーシ」の象徴とも言えるもの。

その存在に、タツキや深見はどう相対していくのか。泉新一とミギーが自身の生存をかけて悩み、苦しみ、そして生き抜いていく「寄生獣」本編の、まさに表と裏、リバーシ(オセロ)のような物語である「寄生獣リバーシ」。物語が進むにつれ本編とのリンクも深まり、盛り上がる展開を見せています。

全8巻感想(ネタバレ無し)

そんな「寄生獣リバーシ」、全8巻で完結となりましたが、全体的な感想としては、序盤から終盤までサスペンス感あふれる緊張を保ったまま、上手く着地しているな、という印象。

またオリジナルからの登場人物と、「リバーシ」の登場人物の絡み(または絡まない)具合が絶妙。市役所攻防戦の裏側でこんなことが起こっていたかもしれないと思わせる、「裏・寄生獣」とも言うべき説得力がありました。

中盤からはオリジナル「寄生獣」からの引用シーンが若干増えて、もう少しコンパクトに出来たのでは?とも思いますが、オリジナル10巻に対して8巻での完結というのはまずまずのバランスなのでは。

何より「寄生獣」というベースのイメージを損なわず、かつ主人公・タツキや深見刑事など本作独自のキャラクターを確立させた物語の展開は、太田モアレさんの手腕に拠るところなのでしょう。良いスピンオフだと感じる全8巻でした。

まとめ

以上、漫画「寄生獣リバーシ」感想でした。岩明均氏以外による作画ながら、本作で描かれている内容・雰囲気は、完全に「寄生獣」のそれ。原作のイメージを損なわずに魅力的な世界観が作り上げられてる、と言える出来です。

また物語が進むに連れ、徐々に「寄生獣」本編の人物たちが登場するのも、「リバーシ」の面白み。警察側の人間として欠かせない平間警部補から、ちょっとした「小ネタ」レベルまで、「お!」と思わせるキャラクターが出演。オリジナル「寄生獣」のファンならば楽しめること請け合いのスピンオフです。

太田モアレさんの既刊はこちら
Kindle / ブックライブ

岩明均さんの既刊はこちら
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