「寄生獣リバーシ」1巻―寄生獣の裏側をサスペンスフルに描く正統派スピンオフ

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人間の頭部と同化し、人を食う寄生生物。

その寄生生物に右腕を寄生された高校生・泉新一と、彼から養分を得て生きる寄生生物・ミギー。二人が彼らを敵とみなす寄生生物たちと孤独な戦い繰り広げる、岩明均さんのホラー漫画「寄生獣」。

全10巻完結の名作漫画として、今なお根強い人気を誇る作品。各種映像化もされました。

そんな「寄生獣」が20年以上の時を経て、公式スピンオフとして復活。これまでも寄生獣のオマージュ的な短編は数多く発表されていましたが、長編としては初登場。

連載は講談社のWeb漫画メディア「コミックDAYS」。作者は女子格闘技を描いた「鉄風」の太田モアレさんです。

以下「寄生獣リバーシ」レビューですが、本家「寄生獣」を既読である、という前提で。「寄生獣」のネタバレを多少含みますのでご容赦を。

※2巻・3巻を読んでの感想も追記しました。

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「寄生獣リバーシ」レビュー

概要

「寄生獣リバーシ」で描かれる世界は、オリジナルの「寄生獣」と同一線上。本家でおなじみのキャラクターも一部、登場します。

主人公の少年・タツキは、あの市長・広川の息子。寄生生物の仕業と思われる複数の惨殺体を前に佇むタツキ、というシーンから物語がスタート。

警察での取り調べに、年齢に不釣り合いな落ち着きを見せるタツキ。東福山署の刑事・深見はその様子が心にのこると同時に、「ミンチ殺人」との関連性を事件に感じる。

その後、不審な行動を取るタツキを追う深見。広川とその周辺の人間(寄生生物)に遭遇する。そしてタツキを署まで移送する途中、寄生生物に襲われて―。

という感じで、ファンならばおなじみの東福山市を中心に、オリジナル「寄生獣」の裏側が描かれます。「寄生獣リバーシ」では広川はまだ市長になっていないので、時期的には「寄生獣」4巻ぐらい、でしょうか。

寄生獣リバーシ(1) (コミックDAYSコミックス)岩明均:講談社

広川の息子

本作で気になるのはやはり、広川の息子であるタツキの存在。父親である広川とは微妙な距離感のある彼。何やら寄生生物とも関わりがあるようで、また寄生生物たちの「食堂」の存在も知っている素振りが。

刑事・深見に、君が見たのはあのバケモノなのか?と問われ、しかし「僕が見たのはあんな化け物よりもおぞましい、悪だ」と応えるタツキ。

彼は己の中の、ある「正義」によって行動しているようですが、その行動原理や目的は1巻ではまだ不明。

ミギーの細胞と一体化した後の新一を彷彿とさせるような、独特の落ち着きを見せるタツキ。果たして彼の本性は?

田宮良子の行動

「寄生獣リバーシ」では、すでに寄生生物たちとの接触を果たしている広川。その側には、協力者である「田宮良子」の姿があります(まだ「田村玲子」とは名乗っていない)。

卓越した頭脳と冷静な判断力で、「仲間」たちの未来を画策する彼女。「寄生獣リバーシ」での初登場時は、本来とは違う姿で現れますが、原作ファンならその容姿に思わずニヤリ。

また原作で「後藤」を「作り上げた」ことを匂わせていた彼女ですが、本作ではその「実験」が描かれます。

その結果は「寄生獣」の読者ならば既に周知の内容ですが、果たしてどのような過程を経て怪物・後藤が生まれたのか?寄生獣ファン注目のポイント。

鍵を握る人物(パラサイト?)

そして中盤~終盤では、「寄生獣リバーシ」のキーを握ると思われる、とある人物がぼんやりと、描かれます。

不審な行動を取る彼が、果たしてタツキの指す「悪」なのか。「アイツを絶対に許さない」と息巻くタツキが立ち向かう相手なのか。

タツキや深見刑事とはまだ直接絡んではいませんが、不気味さを感じずにはいられないそのシルエットと「身体」。勘のいい人ならばピン!と来るかもしれませんが、その正体が顕になるのは次巻以降、のようです。

太田モアレ氏描く寄生獣の世界

1巻ということで、まだまだ全体像の見えない「寄生獣リバーシ」。しかし漫画の端々から、本作が「寄生獣」世界の正統な継承作品であることを感じます。

それは広川や田宮良子が出ている、といったこと以上に、作者・太田モアレ氏の寄生獣世界の丁寧な描写、ひいては「寄生獣」に対する愛情から、それを読み取ることができます。

太田モアレ氏は、本格女子格闘漫画「鉄風」(全8巻)の作者。「寄生獣」との関わりとしては、トリビュート・コミックである「ネオ寄生獣」にて、「今夜もEat it」を描いています。

これは「人間として」一生を送った、とあるパラサイトを描いた短編。作中の随所にオリジナル「寄生獣」のパロディが仕込んであり、コメディでありながら内容は「寄生獣」そのもの。実に完成度の高い作品です。

その太田モアレ氏が描く、公式スピンオフ「寄生獣リバーシ」。オリジナルの世界観に、さらにドスの利いたサスペンス・ホラー感をプラス。全編から滲み出る緊張感に、グイグイ惹きつけられます。

まとめ

以上、太田モアレさんの「寄生獣リバーシ」1巻のレビューでした。まだまだ序盤ですが、描かれている内容・雰囲気は、完全に寄生獣のそれ。原作のイメージを損なわずに、魅力的な世界観を作り上げている、という印象です。

新キャラクターと既存のキャラクターも、違和感なく噛み合っている感じ。リバーシ(オセロ)の名のごとく、「寄生獣」と表裏一体となった物語。これからどのような展開を見せていくのか。寄生獣ファン注目の一作です。

追記:2~3巻の感想

本レビュー後に刊行された2・3巻の感想をネタバレしない程度に。

おもしろい!ゾクゾクする展開です。平間警部補などオリジナルの登場人物や、「寄生獣」本編で登場したシーンも絡めながら、徐々にその世界観をあらわしていく物語。

本編の裏側で進行する邪悪な欲望と、その中心とである「姿」は、まさにリバーシ。本家「寄生獣」の雰囲気を損なうことなく、そこに太田モアレさんらしさが融合。ホラー・サスペンスとしての恐怖度もアップし、巻を重ねるにつれ高まってくる「リバーシ」感にドキドキします。

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