「寄生獣リバーシ」―「寄生獣」本編の裏側をサスペンスフルに描く正統スピンオフ

あの「寄生獣」が20年以上の時を経て、公式スピンオフ「寄生獣リバーシ」として復活!これまでもオマージュ的な短編は発表されていましたが、長編としては初登場です。

オリジナルの作者・岩明均さんは原作者としてクレジット。「寄生獣リバーシ」は女子格闘技漫画「鉄風」の作者・太田モアレさんによって描かれます。2021年5月現在、7巻まで刊行中です。

以下「寄生獣リバーシ」の感想ですが、原作「寄生獣」のネタバレを多少含みますのでご容赦を。

この記事は読むのに5分もかかりません。

「寄生獣リバーシ」感想

概要

「寄生獣リバーシ」のオリジナルである「寄生獣」は、講談社の雑誌に1988年より連載された作品で、実写映画やアニメ化もされました。作者・岩明均さんの名前を一躍有名にした出世作です。

人間の頭部と同化し、人を捕食する寄生生物。高校生・泉新一は右腕を寄生生物に奪われるが、人食いとならなかった彼・ミギーと共生することに。しかし寄生生物たちは二人を敵とみなし―。

という人間と寄生生物の戦い、または共存を描いた全10巻。ヒューマン・ドラマ的要素も持つスケールの大きいホラー漫画として、今なお根強い人気を誇ります。

そのスピンオフである「寄生獣リバーシ」。描かれる世界は、オリジナルの「寄生獣」と同一線上。本家でおなじみのキャラクターも一部、登場します。

主人公の少年・タツキは、あの「市長・広川」の息子。その彼が寄生生物の仕業と思われる複数の惨殺体を前に佇んでいる、というショッキングなシーンから物語はスタート。

事件の取り調べに、年齢に不釣り合いな落ち着きを見せるタツキ。その様子が心にのこると同時に、「ミンチ殺人」との関連性を感じる東福山署の刑事・深見

その後、寄生生物たちの「食堂」に立ち寄ったタツキは、父親・広川と周辺の人間(寄生生物)に遭遇。そこに現れた深見に、再び署まで移送されることに。しかしその途中、寄生生物に襲われて―。

という感じで、ファンならばおなじみの東福山市を中心に、オリジナル「寄生獣」の裏側が描かれます。「寄生獣リバーシ」では広川はまだ市長になっていないので、時系列的には「寄生獣」4巻ぐらい、と思われます。

太田モアレ描く寄生獣の世界

「寄生獣リバーシ」の作者・太田モアレさんは、本格女子格闘技漫画「鉄風」が代表作。「寄生獣」の持つ雰囲気とは対極的な物語ですが、果たしてその作風は「寄生獣」とマッチしているのか…?

しかし実際に「寄生獣リバーシ」に触れてみると、その端々から本作が「寄生獣」世界の正統な継承作品であることを実感。それは共通のキャラクターが出ているということだけではなく、太田モアレさんの丁寧な描写や「寄生獣」に対する愛情によるもの。

太田モアレさんは本作以前に、「寄生獣」のトリビュート・コミックである「ネオ寄生獣」に、「人間として一生を送ったとあるパラサイト」を描いた短編「今夜もEat it」で参加。

同作には随所にオリジナルの絵柄そっくりのパロディが仕込んであり、コメディながら内容は「寄生獣」そのもの。実に完成度の高い作品となっています。

本作「寄生獣リバーシ」ではその実績と、太田モアレさん本来のテイストが融合。オリジナルの世界観にさらにドスの利いたサスペンス・ホラー感がプラスされ、原作ファンも違和感なく入っていける雰囲気が形成されています。

広川の息子・タツキの「正義」

話を戻して「寄生獣リバーシ」本編。気になるのはやはり、主人公・タツキ。広川とは微妙な距離感のある彼。寄生生物の存在をすでに知っており、また個人的にも関わりがあるような素振り。

刑事・深見とともに寄生生物に襲われたのち、君が見たのはあのバケモノなのか?と問われるタツキ。その答えは

僕が見たのはあんな化け物よりもおぞましい、悪だ

事件以降は深見と協力関係を築きながらも、完全に心を開いたわけではないタツキ。彼は己の中のある「正義」によって行動しているようですが、その行動原理や目的は序盤ではまだ不明。

ミギーの細胞と一体化した後の新一を彷彿とさせるような、独特の落ち着きを見せる彼ですが、その胸の内に抱くものは…?

田宮良子の行動

一方、本編と同じく寄生生物側の視点からも物語は展開。すでに寄生生物たちとの接触を果たしている広川の側には、協力者である「田宮良子」の姿があります(まだ「田村玲子」とは名乗っていない)。

卓越した頭脳と冷静な判断力で、「仲間」たちの未来を画策する彼女。「寄生獣リバーシ」での初登場時は「本来とは違う姿」で現れますが、原作ファンならその容姿に思わずニヤリ

また原作で「後藤」を「作り上げた」ことを匂わせていた彼女ですが、本作ではその「実験」が描かれます。その結果は「寄生獣」の読者ならば既に周知の内容ですが、どのような過程を経て怪物・後藤が生まれたのか?寄生獣ファン注目のポイントです。

「寄生獣」の「リバーシ」たる物語

そして1巻の中盤~終盤では、「寄生獣リバーシ」のキーを握ると思われる、とある人物がぼんやりと描かれます。不審な行動を取る彼が、果たしてタツキの指す「悪」なのか?「アイツを絶対に許さない」と息巻くタツキが立ち向かう相手なのか?

ネタバレになるのでその正体はここでは秘密にしておきますが、不気味さを感じずにはいられないシルエットと「身体」は、まさに「寄生獣リバーシ」の象徴とも言えるもの。

また2巻以降、徐々に「寄生獣」本編の人物たちも「リバーシ」に登場。警察側の人間として欠かせない平間警部補から、ちょっとした「小ネタ」レベルまで、「お!」と思わせるキャラクターが出てきて、面白い展開を見せてくれます。

物語が進むにつれ、本編とのリンク深めていく「寄生獣リバーシ」。泉新一とミギーが自身の生存をかけて悩み、苦しみ、そして生き抜いていく「寄生獣」本編の、まさに表と裏、リバーシ(オセロ)のような物語の中で、タツキや深見は何を見るのか?今後の展開がますます楽しみです。

まとめ

以上、漫画「寄生獣リバーシ」感想でした。岩明均氏以外による作画ながら、本作で描かれている内容・雰囲気は、完全に「寄生獣」のそれ。原作のイメージを損なわずに、魅力的な世界観を作り上げている、という印象です。

新キャラクターと既存のキャラクターも、違和感なく噛み合っている感じ。何より太田モアレさんは、暗い雰囲気の物語づくりが上手い!「オリジナルの裏側」を存分に楽しませてくれます。

そして6巻では、いよいよ「あの男」が…?「寄生獣」ファンならば要チェックの展開が待っています。

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