役に立たない小さな超能力を持つ青年は、やがて自身のルーツにまつわる大きな渦に飲み込まれて…。
岩明均さんの『七夕の国』。超能力を発端とする怪事件を、歴史ロマンを織り込みながら描いたSFホラー漫画です。
連載は小学館の漫画雑誌「ビッグコミックスピリッツ」。1996~1999年にかけて不定期連載されていました。全4巻完結済み。
『七夕の国』感想・レビュー
『七夕の国』あらすじ
さえない大学4回生・南丸洋二(みなみまる・ようじ=通称「ナン丸」)。
唯一の取り柄は、「物体に小さな穴を開ける」という超能力。しかし就職活動の役には立たず、後輩にもバカにされる始末。
その南丸、ある日大学で、面識の無い教授・丸神から呼び出しを受ける。教授とはすれ違いで会えなかったが、講師・江見や丸神ゼミの学生と知り合いに。
そこで丸神教授が行方不明になっていること、自身のルーツが丸神教授と同じく「丸神の里」にあることを知る。
時を同じくして、丸神の里で起こった殺人事件。遺体の頭部には「丸くえぐられた」跡が…。それは南丸の超能力、そして失踪した丸神教授とも関連が―?
謎多きSFサスペンス
人の頭部と同化し人間を捕食する寄生生物。その恐怖を描いた漫画『寄生獣』にて、一躍有名となった漫画家・岩明均さん。
本作『七夕の国』は、その岩明均さんが『寄生獣』終了後に連載した作品。
不気味な事件を発端として、謎要素が徐々に解き明かされていく形式で、
- 小さな超能力を持つ青年が、自身のルーツに触れる
- ルーツである「丸神の里」の人々は良心的だが、どこか閉鎖的
- 一方、超能力に関わる「事件」が里の外で徐々に進行
- やがて里、そして世間を巻き込んだ大事件が…
という、オカルト・SFを含んだサスペンス・ストーリーが展開されていきます。
「窓」と呼ばれる超能力
その『七夕の国』で中心となるのが、「丸神の里ゆかりの超能力」。
それは「窓の外」と呼ばれる球体を作るもので、能力者は『「窓の外」に「手がとどく者」』と表現されます。
「手がとどく」というのは独特の表現ですが、イメージ的には「どこかわからない空間の一部を出現させる」といった感じ。
その空間=球体に触れると、触れた部分が消失します。
一見、何てことのない超能力のように思えますが、「球体の大きさ」によっては恐ろしい結果が…!
【マンガ多すぎ!コミックシーモア】
サスペンス感のあるSFミステリーが面白い!
一方、丸神教授の失踪とともに世間を騒がすのが、事件の発端となった殺人事件。
その犯行は明らかに「手がとどく」能力で行われたものですが、力を極力外部に出さんとする里の方針とは真逆の行動。
しかし「犯人」は徐々にその力を暴走させ、やがて日本中を巻き込んだ大事件へ。終盤に向かい伏線の回収、そして数々の謎が明かされていきます。
丸神教授はなぜ失踪したのか?
里の人間はなぜ土地を守ることに固執するのか?
里で執り行われる七夕祭に隠された謎とは…?
謎が明らかになるたびに、思わず「おおっ…」と心の中で起こるどよめき。
SF・サスペンス・ミステリー・歴史ロマンなど各要素が渦巻きながら、里全体を巻き込んだ怒濤のラストへ!
そして読み終わって心に湧き出るのは、果てなく広がる宇宙への憧憬。
ハードな描写も多い漫画ですが、遠い宇宙に思いを馳せずにはいられない、不思議な読後感を味あわせてくれます。
『七夕の国』まとめ
以上、岩明均さんのSFサスペンス『七夕の国』全4巻の感想・レビューでした。
前作『寄生獣』に較べ、この『七夕の国』は同じくホラー風味を漂わせつつも、歴史ロマンと広大な宇宙を想起させる物語。
コンパクトな巻数に多彩な魅力が詰まっており、何度読んでも飽きない漫画です。
なお主人公・ナン丸くんが非常に良いキャラクターで、『七夕の国』の持ち味となっています。岩明均さんの他作品との風味の違いを楽しんでみてください。
コメント
幸子ちゃんがブラジャーをしてないのが気になった。
もしかして乳首も高志に持ってかれた?
それは考えなかったな(笑)。寝る前だったからだと思うけど。