漫画「去る者は日々に疎し」―性と生・生と死のコントラストが紡ぐ恋愛ドラマ

かつての恋人が忘れられぬまま大人になった男は、死臭を漂わせるAV女優に出会い、その心を揺り動かされていく―。

葉月京さんの漫画「去る者は日々に疎し」(協力:折笠りょこさん)。死の匂いを嗅ぎ分けられる男と訳ありAV女優の出会いから始まる、ちょっとセクシーな恋愛ドラマです。

連載は秋田書店ヤングチャンピオンで、2021年11月現在、2巻まで刊行中。

「去る者は日々に疎し」感想・レビュー

あらすじ

死が近づいている人間が発する「甘ったるい匂い」を嗅ぎ分けられる、弓削命(ゆげみこと)。しかし時期が「いつ」なのかを知ることはできず、そのことにより高校時代の彼女・希望(のぞみ)を救えなかったことを悔いている。

やがてアラサーとなり、仏具店勤務の会社員として「ただ生きているだけ」の悶々とした日々を過ごす命。希望と同じ名前の女優が出ているAVを見ることでしか、「生」を実感できない。

そんなある日、仕事で立ち寄った墓地で、「甘い匂い」を漂わせる女性とすれ違う命。彼女が飲もうとしたペットボトルを思わずはたき落とす。驚く表情を見せた女性は、命も見たことのあるAV女優・妻夫木希望(つまぶきのぞみ)だった…!

オカルト風味を持つ主人公たち

以上が漫画「去る者は日々に疎し」の導入部。その後、命は仕事中に希望と再会、実家と関係が悪い彼女が亡き祖母に線香をあげるために協力したり。不思議な交流を続けていく二人の様子が描かれていきます。

実は命は「死の匂いを嗅ぐと性欲が高まる」という体質。そのため希望との触れ合いでは思わず気持ち(とアソコ)が高まったりして…?生きがいの無い人生を送る彼が「生」を感じ、人生の変化の兆しを見せていきます。

一方、セクシー女優としてAV業界で生きる希望。一見気ままに生きているようで、心の奥底には他人には窺いしれない大きな澱みが。1~2巻と話が進むにつれその背景が明らかになってきますが、なかなかヘビーな内容。

さらに彼女は命の背後に「何かが見えている」ようで、それが彼の心を徐々に揺り動かすことに…?性質は違えどオカルト要素を抱える二人がふとしたことから関わりを持ち、その関係性を徐々に深めていく様子に、不思議なドキドキが。

「生と性」「生と死」のコントラストが面白い

仏具店社員とAV女優。接点の無い二人が不思議な出会いを果たした「去る者は日々に疎し」1巻。なんとな~く良い感じの雰囲気で2巻ではその交流がスムーズに…

とは行きません。ヒロインがセクシー女優ということで、業界ならではの「闇」を垣間見せていくストーリーが展開

その元凶となるのは、希望の後見人である関西弁の怪しげなオバちゃん。かつてよんどころない事情から家を出た希望は、彼女に拾われて女優となったのですが、このオバちゃんがクセの強い人物で…!

そんな希望のバックグラウンドも関係して、普通の恋愛ドラマよりもやや重た目な展開となるのですが、その中で描かれる主人公ふたりの「生と性」「生と死」のコントラストが非常に印象的。

他の恋愛漫画には無い緊張感、何とも言えないミステリアスな雰囲気が、独特の面白さを演出。続きが気になる…!

セクシー描写が良いドロドロ感を演出

ちなみに作者の葉月京さんは、「恋愛ジャンキー」のようなセクシー系の作品が多い漫画家さん。本作はセクシー描写がメインの漫画ではありませんが、物語冒頭からハードなXXXXがあったりして、いい意味でビックリ(笑)。

また劇中で希望の撮影シーンも随所に挿入されるのですが、これが18禁作品に負けず劣らず本格的でこれまたビックリ。流石ヤングチャンピオン(笑)。いや真面目な話、非常に洗練された描写で、物語の見どころの一つとなっています。

このセクシー要素が命と希望の交流、さらには物語全体に、良い感じの「ドロドロ」を付加。惚れた腫れただけではない、重量感のある恋愛ドラマを形作っています。この感覚はクセになるほど引き込まれる…!

まとめ

以上、葉月京さんの漫画「去る者は日々に疎し」の感想・レビューでした。

18禁ではないセクシー系の漫画は数多くありますが、本作は「恋愛ドラマ」「セクシー描写」「オカルト要素」が奇跡的に絡み合っていて、他の作品には無い面白み・深みを感じます。

セックス描写が一般作品よりは激しめなので、読む人を選ぶかもしれませんが、ハマればとことんハマる!物語。さて、今後苦難の予想される主人公ふたりの道は、どこに繋がっていくのか?今後の盛り上がりに増々期待が高まります。

葉月京さんの既刊はこちら
Kindle / ブックライブ

なお「去る者は日々に疎し」は、1巻と同時刊行の漫画「若気の至りまくり、夏。」と連動。こちらの主人公・虹渡(にじと)が勤める葬儀社は、命が勤務する仏具店の隣にある関連会社、という設定。ほか、一部キャラクターの設定にも関係があります。

ひと夏のアバンチュールで、爆乳お姉さんと関係を持った虹渡。しかしのちに葬儀で再会したお姉さんは実は人妻で、ドSな夫に虐げられていて?というエッチなドラマ。命も1巻後半でゲスト出演します

「若気の至りまくり、夏。」を未読でも「去る者は日々に疎し」の理解に問題はありませんが、読んでおくと世界観がより広がること請け合い。今後のリンク加減も楽しみです。

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