「怖い話」のコミカライズを手掛ける女性漫画家。連載が進むにつれ、自身の周辺にも不穏な空気が…?
原作:梨さん+漫画:景山五月さんの『コワい話は≠くだけで。』。
リアリティのある「現代の怪談話」と、その漫画を描く作家の恐怖体験という、2重構造が恐怖を倍増させる新感覚オカルト・ホラーです。
連載はKADOKAWAのWeb漫画メディア「COMIC BRIDGE」。2022年12月現在、単行本1巻が刊行中。
ちなみにタイトルにある「≠」は記号「ノットイコール」ですが、読み方は「キ」。通して「こわいはなしはきくだけで」と読みます。
『コワい話は≠くだけで。』感想・レビュー
概要
漫画『コワい話は≠くだけで。』の主人公は、「怪談話」のコミカライズを引き受けた女性漫画家(作者本人?)。
各話は、彼女が漫画編集部から渡された元ネタを漫画化した「怖い話」と、その前後に「漫画家本人の様子」が時折挿入される、という形で構成。
よくある「ホントにあった怖い話」的エッセイコミックのテイストでありながら、その「作者の様子そのもの」も外環として描く、メタ的な2重構造を持つオカルト・ホラーとなっています。
漫画家が怪談を集めて聞くだけの話 (1/6) pic.twitter.com/rC3m5UPYdv
— 景山五月👻12月8日コワ≠く①発売 (@unyamho) December 1, 2022
バラエティ豊かな恐怖ストーリー
「劇中」で描かれる恐怖エピソードの元ネタは、編集部から素材として提供された怪談話。

「編集部の”つて”」により「様々な方法」で集められたというその内容が、なかなかの怖さ。
- 部屋の整理をしていると、子どもの字で書かれた見覚えの無い手紙を見つけた青年。その夜、きしむような物音で目覚めた彼が見たものは…(第1話『補完』)
- 夜中に家出した友人を、スマホのGPSで追っていた高校生。新興住宅地の空きスペースで動かなくなった友人と通話すると、「いま民家にいる」と言い張るが…(第3話『閑静』)
- 祖母の幼少期の話。活発だった彼女は、ある日ひとりで山奥へ。ふと遠目に「女」が立っていること、そしてそれが「人ではない」ことに気づく―(第7話『愛情』)
など、ネットやスマホが絡んだ現代的な話から、一昔前の不思議な体験風まで、バラエティ豊かなオカルト・ホラーが楽しめます。
日常と地続きの恐ろしさ
各ホラー・エピソードは、漫画としては比較的文字が多め。
ですが決して読みにくいわけではなく、むしろ「短編ホラー小説」的で、面白い読み心地。
またそれが、作者・景山五月さん(ホントの作者の方)のリアリティ感じる作画とマッチ。
流れるように進む文章と漫画を追ううちに、「様々な人が体験した怖い話」という体の物語に引き込まれていきます。
景山五月さん作画の漫画『コワい話は≠くだけで。』は、
今日ぐらいからお店に並び始めるかと思います
帯文はなんと朝宮運河さんです表紙から本編、コミックス書き下ろし部分、この画像に至るまで文字にまみれた怪談漫画となっています
よろしければ手に取ってみてください pic.twitter.com/2UIA8efzFS— 梨.psd | 12/8新刊 (@pear0001sub) December 8, 2022
そして各話の終わりにはもちろん、ゾッとする出来事が。
日常に居たつもりが、知らず知らずのうちに「日常とズレている瞬間」にいる、そんなホラー感覚が面白くも恐ろしい!
作者の周辺に不穏な空気が…?
…が、ここまではよくあるホラー・オムニバス。
怪談話がやがて、(劇中での)作者である女性漫画家の現実にも影響しはじめるのが、『コワい話は≠くだけで。』ならではの恐怖。
第1話、担当との打ち合わせで、「漫画は描くだけで深入りはしない。あんまり関わると『ほんとう』になりそうだから」と話す彼女(伏線)。
その後は各話の終わりに登場、「怖いオチにやや驚いた顔を見せる」程度だったのですが、1巻最終話『人形』でついに彼女が恐れていたことが…?
ネタバレになるので詳細は避けますが、「怖い話」の外環に居るつもりが、徐々にその環の中に組み込まれているのかもしれない、と気づいたときの恐怖に、思わず鳥肌が。
さて、女性漫画家を包む不穏で不気味な空気は、果たして「ほんとう」となるのか…?
『コワい話は≠くだけで。』まとめ
以上、原作:梨さん+漫画:景山五月さんの漫画『コワい話は≠くだけで。』の感想・レビューでした。
ホラー・オムニバスとしての面白さと、ストーリーものとしての先の読めない恐怖が、絶妙!に組み合わさった新感覚オカルト・ホラー。
怖い話を聞いていたら、いつの間にかその中心に自分がいた…!そんな恐怖体験を味あわせてくれます。

コメント