住宅・古民家で起こる、得体の知れない怪異現象。恐怖を解決するのは、霊感を持たない営繕屋の青年。その手腕とは…?
小野不由美さんの同名原作小説を、加藤和恵さんがコミカライズした『営繕かるかや怪異譚(えいぜんかるかやかいいたん)』。卓越した画力で描かれる、確実な恐怖とドラマ感が面白い!380ページ超えのボリュームで読み応えバツグンの、純和風ホラー漫画です。
以下、『営繕かるかや怪異譚』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。
『営繕かるかや怪異譚』あらすじ
『営繕かるかや怪異譚』のオリジナルは、『十二国記』『屍鬼』などの代表作を持つ、小野不由美さんのホラー小説。シリーズ3冊が刊行されています(2022年11月現在)。
その第一巻に収録の6編『奥庭より』『屋根裏に』『雨の鈴』『異形のひと』『潮満ちの井戸』『檻の外』を、集英社「ジャンプSQ.」にて加藤和恵さんがコミカライズしたのが本作『営繕かるかや怪異譚』。
日本家屋で起こる怪異現象の数々に、「営繕かるかや」として営繕業に勤しむ青年・尾端(おばな)が関わり、その「技能」をもって解決していく様が描かれていきます。
※「営繕」とは、建築物の「営造」と「修繕」を行う職業のこと。
『営繕かるかや怪異譚』のココが面白い!
住居に潜む「魔」が怖い…!
亡き叔母から受け継いだ古民家で、一人暮らしを始めた女性。その家の奥には、箪笥で入り口を塞がれた「開かずの間」が。何度閉めても開いてしまう襖、その奥に居るものは…?(『奥庭より』)
雨の日に鈴の音とともに現れる「喪服の女」。人ならざる「それ」には、人の死をもたらすとの噂が。袋小路の奥に住む女性は、その歩みが徐々に自分のもとへ迫っていることに気づきー。(『雨の鈴』)
幼い娘と地元へ戻ったシングルマザー。親戚から借りた古い家で暮らし始めるが、「離れの車庫」に居るはずのない「人の気配」を感じる。それは日に日に高まり、ついに娘の身にも危険が…?(『檻の外』)
営繕かるかや怪異譚 11/4発売です!
加筆ページは約10P
おまけは、各話に登場する家屋の、間取り図や設定!紙版はお値段はっておりますが、装丁など凝った本になってますので、お楽しみに!!🛠🛠🛠✊(加藤) pic.twitter.com/ohuadAW7Px
— 加藤和恵 公式 (@katohhhhhh) October 28, 2022
『営繕かるかや怪異譚』各話で住居やその周辺に現れる、妖怪とも、悪霊とも、神ともしれない「何か」。
言わば「魔」とでも表現されるそれは、やがてヒタヒタと住人の生活に忍び寄り、そして両者が出会うその時…。
その瞬間の、雰囲気のあるホラー描写が何とも恐ろしい…!
グロ表現は一切ないのですが、「魔」が住民の心を脅かし、蝕んでいく過程が丹念に描かれることで、恐怖が増幅!精神的にジワジワ来る、バツグンのホラー感があります。
恐怖案件を解決する営繕屋青年の手腕は…?
その恐怖案件を解決していくのが、「営繕かるかや」を営む青年・尾端。
ラフな格好で現れる彼は、工具の入ったバッグを背負っている以外はごくごく普通、笑顔がさわやかなお兄ちゃん。しかしひとたび怪異の前に立つと、驚異的な除霊能力を発揮…
…しない(笑)。それどころか霊感が全くない人物。そんな彼がホンモノの恐怖案件を解決していくのですが、その「独特の方法」が面白い。それは…
「普通の営繕」。ごくごく普通に、営繕職人として、家の改修工事をするだけ。
が、恐怖体験をした住人の声を通して、そこに棲む「魔の声」に耳を傾け、人間にとっても「魔」にとっても最適な営繕を行う尾端青年。
それにより結果的に事態が収拾され、生活が落ち着いていく、という過程が『営繕かるかや怪異譚』の醍醐味。
尾端青年は物語の主人公というよりは、恐怖案件とその解決を結びつける「触媒」的な役回りなのですが、その確かな仕事ぶりに思わず「なるほど…」と唸ることしきり。
得体の知れぬ「魔」に怯える住人たちが、心のこもった営繕により救われていく。そんな「恐怖のあとのスッキリ感」に心地よさを感じます。
卓越した画力と緻密な構成が作り上げるホラー・ドラマ
原作の小野不由美さんは、百物語を題材にしたホラー・ショート『鬼談百景』など、ホラージャンルでも著名な作家さん。
その小説を、代表作『青の祓魔師(エクソシスト)』の漫画家・加藤和恵さんがコミカライズしているのですが、これが実にクオリティが高い。
プロの漫画家さんに言う言葉では無いかもしれませんが、とにかく絵が上手い!
また原作内に出てくる住居や地形を平面図に起こすなど、小説を漫画化するにあたって緻密な設定を用意。そこから生み出される「物語の説得力」がスゴイ。
生活感のある古民家と、そこで生活する人々、そしてその裏で密やかに息づく「魔」の存在感が絶妙!です。
小野不由美さんの原作というベースを、加藤和恵さんが卓越した画力と構成力で見事に漫画化した本作。
怖いところはきっちり怖く、しかしそれだけではない満足感を与えてくれる、読み応えのあるホラー・ドラマとなっています。
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感想・レビューまとめ
以上、小野不由美さん・加藤和恵さんの漫画『営繕かるかや怪異譚』感想・レビューでした。
ストーリー・ビジュアルともハイクオリティなホラー漫画。何度もじっくり読み返したくなる魅力がありオススメ。また382ページのビッグ・ボリュームで、バツグンの読み応えがあります。
ホラー漫画ファンだけではなく、多くの漫画ファンに手に取っていただきたい作品です。
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