「天国大魔境」―謎が謎を呼ぶ世紀末の冒険

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1巻のみの刊行にも関わらず、「このマンガがすごい!2019」のオトコ編1位に輝いた、という石黒正数さんの「天国大魔境」。

「それでも町は廻っている」の後の長編連載ということで、マンガファン期待の一作。これまでの作品とは趣きを大きく変えた、ポストアポカリプスな世界を描くSF漫画です。本記事は1~3巻までを読んでのレビューです。

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「天国大魔境」レビュー

概要

「天国大魔境」で描かれるのは、2つの世界。

一つは、何らかの災害により文明が崩壊した日本。秩序の無くなった世紀末を冒険するのは、主人公であるキルコ(1巻表紙・上)とマル(同・下)。

マルの目的は、どこにあるかわからない「天国」を探し、そこにいる自分と似た顔を持つ人間に「薬」を届けること。それをキルコがボディガードする、というふたり旅。

もう一つは、とある施設の生活。そこで暮らすのは、トキオ(2巻表紙・中央)ら子供たちと、彼らを教育する大人たち。外界とは隔絶された科学的な環境の中で、特殊な能力を発揮する子供らはじめ、施設の全貌は謎だらけで…。

これらが並行して描かれるのですが、3巻に至ってもいまだ直接的な接点を持たない2つの世界。キルコとマルの目指す「天国」とは果たしてどこなのか?子供たちを育てる施設の正体は?といった謎が、クロスするように紡がれていきます。

天国大魔境(1) (アフタヌーンコミックス)石黒正数:講談社

キルコとマルの謎

キルコとマルが天国を探して旅をする、文明崩壊後の日本。建築物はボロボロ、貨幣価値も大きく変わり、人々は文明の残りカスを利用して何とか生き延びている、という様子。

無秩序となった世界の中でしかし恐ろしいのは犯罪だけでなく、「人食い(またはヒルコ)」と呼ばれる謎のモンスターが出現すること。人々に害をなすそれは突如あらわれ、そして通常の武器では倒すことができない。

しかしマルは素手で人食いに触れる「マルタッチ(キルコ命名)」により、人食いを倒せる能力を「なぜか」持っている。

一方、依頼されてマルをボディガードするキルコ。外見は女性の姿だが、実はその中見は…?そしてマルを守り天国を目指しながら、彼女の「秘密」の原因となった人物を探す。

それぞれが「謎」を持ち、「謎」に向かって進んでいく。不思議な冒険が展開されます。

施設の謎

一方の施設も「謎」だらけ。外界と隔絶され、教師らしき大人たちやロボットにより教育されている、見た目10代前半ぐらいの子どもたちが暮らす場所。そして子どもたちには、超人的とも言える特殊能力が。

異常に発達した運動神経や芸術的感覚などを持つ彼ら。平和な生活を送っているが、なぜ特殊な能力があるのか?なぜそこで育てられているのか?そしてその中の一人・トキオは、マルに良く似た外見を持つ人物。果たしてトキオが、マルが薬を渡すべき人物なのか?

それ以外にも、明らかに発達したテクノロジーを持つなど、トキオとマルの暮らす世界とは大きな隔たりを持つ施設。邪悪な空気は感じないのですが、とにかく謎の多い場所。果たしてここが「天国」なのか?

謎が謎を呼ぶ展開

並行して描かれる2つの世界。しかし3巻を持ってしても、いまだ繋がりが見えません。少しずつそれぞれの謎が明らかになってきて、2つの世界のリンクを示唆しているようなのですが、それがまた新たな謎を呼ぶ展開に。

例えば「人食い」の姿。触手を持つ奇怪な鳥だったり、無数の手足を持つ巨大な魚だったりするのですが、実はその形は施設のある子どもが書いた「絵」にそっくり。何らかの関係性があることは間違いないのですが、それが何かはわからない。

そもそも、2つの世界が同一時間軸に存在しているのかどうかも不明。キルコとマルがたどり着くのは施設なんじゃないか、と何となく想像しがちですが、実はどちらかは過去の世界なんじゃないか、とか。

そんな謎多きストーリー。もどかしく思ったりもするのですが、読んでいるうちに想像力が刺激されてくるから不思議。一見なんの意味があるかわからないシーンが、後々に「ああ、あれはそういうことだったのか!」とわかったり。新刊を読むたびに最初から読み直すと、新たな発見があってドキドキ。

その謎多き物語を支えるのは、作者・石黒正数さんへの信頼。「それでも町は廻っている」や「外天楼」を読むとわかるのですが、石黒正数さん、伏線の貼り方・回収がすごくウマイんですよね。今感じるもどかしさも、きっとパッ晴れる展開が待っているに違いない。そんな不思議な期待感を抱かずにはいられない漫画です。

まとめ

以上、「天国大魔境」レビューでした。「このマンガがすごい!」のインタビューでは、石黒正数さんは5巻ぐらいで終わるかも、ぐらいの気持ちで書き始めたそう。ですが3巻分を描いても、まだまだ謎だらけの物語。

ちょっと長くなりそう?な雰囲気もプンプンするので、焦れったいのが嫌いな人は、完結を待ってから読む、というのもアリかも。でも謎が解きほぐれていく様子をリアルタイムで感じたい!という方は、旬なうちにお楽しみを。

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