「宙に参る」―宇宙から地球へ。夫の遺骨を義母に届ける未亡人描く本格SF

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夫の遺骨を地球の実家に届けるため、妻は息子とともに宇宙へ。しかし特殊な「力」を持つ彼女には、何やらゴタゴタがつきまとい―。

助骨凹介(あばらぼねへこすけ)さんの「宙に参る(そらにまいる)」。リイド社・トーチコミックスより1巻が刊行中。情緒感じるタイトルと未亡人が主役のSFという、一風変わった趣きを持つ作品ですが、これが「超」のつくぐらいの本格的SFです。

「宙に参る」レビュー

あらすじ

宇宙船がセスナ機ほどの身近さになり、人間の体も脳以外ならば挿げ替えが効く時代。コロニーに住む元エンジニア・鵯(ひよどり)ソラは、夫・宇一を病気で亡くす。

その葬儀を終えたのち、地球にいる義母のもとへ、宇一の骨を届けることを決意するソラ。息子・宙二郎とともにコロニーを出立する。が、一部界隈では「魔女」として認識される彼女。その道程には様々な出来事が起こり―。

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葬儀シーンで開幕

宇宙を前に遺影と遺骨を抱くキャラクター、という大胆な構図のカバー絵。~からの第1話「BONE IN SPACE」は純・和風の葬儀風景が描かれる、SF漫画らしからぬスタート。病死した夫・宇一の遺影を前に神妙な顔を見せるのは、主人公・ソラとその息子・宙二郎。

が、その葬儀風景はSFそのもの。「地理的(距離的)な都合」により、参列者はモニターの中。ソラが急場でこしらえた「焼香ロボ」がモニターを頭部にはめ、焼香・合掌を代行する、というアナログとデジタルが入り混じったシュールさが、いとおかし。

ちなみに息子・宙二郎の姿は、モニター状の頭部にひょろ長い手足がついたもの。なぜに彼が「息子」なのか?というのは、おいおい。

地球(実家)へ…

葬儀ののち、義母(宇一の母)のもとへ遺骨を届ける旅に出る、ソラと宙二郎。スペースコロニーの宇宙港より超大型宇宙船(?)に乗り一路、地球にある夫の実家へ。45日間の道程の中で様々な出来事が起こり…が、「宙に参る」ストーリーの基本線ですが、各話、ひとひねりがあっておもしろい。

第3話「永世中立棋星」では、自律小惑星型将棋AIである「棋星」と、なぜか対話することになるソラ。人工知能である棋星に人格はあるか?から始まり、将棋を「一番」とする将棋AIは果たして人類に反乱を起こす可能性があるか?まで踏み込んでいく。

第4話「Dragon in ODEN」は、宇宙的おでんチェーン屋が舞台。セキュリティの厳しいリンジン回路(劇中でロボットの中枢を司る行動原理)を、「呪文」によってハックする「リンジンの魔女」の存在を、裏メニューを絡めたおでんの合計金額からほのめかす、という話。派手さはないんだけど、読み込み要素の多い深さがたまらない。

「魔女」の秘密

実は「魔女」とはソラのこと(ってのはすぐ分かると思うけど)なのだけれど、彼女の人となりを、上記のようなSF心あふれるエピソードを積み重ねることで表現していく、という趣向がおもしろい。

今風に言えばソラは「チート的な強さを持つ最強」な存在。が、「俺TUEEEEEE!」っていうのではなく、各エピソードの随所に散りばめた「仕掛け」によって「あ、ソラってスゴイんだ」と思わせる描き方がウマイ。

しかし類まれなるエンジニア能力と呪文を駆使する彼女を、当然のように放っておかない勢力がいるわけで。そしてそもそも、彼女はなぜ、そのような能力を手に入れたのか?なんてのが亡き夫・宇一との馴れ初めを絡めて描かれていく…という流れ。

各エピソードは派手さ控えめだったり庶民的だったり、なんですが、その裏側にあるこぼれんばかりのセンスあふれるSF感が素晴らしい。物語はまだまだ序盤ですが、さて、ソラと宙二郎の実家訪問は如何なる結末を迎えるのか?

まとめ

以上、助骨凹介さんのSF漫画「宙に参る」のレビューでした。壮大な宇宙と反比例するかのような局地的なエピソードの数々ですが、通して読むとSF・宇宙を感じるこの不思議。繰り返し読むことで新たな発見もあり、奥の深いおもしろさを持つ作品。助骨凹介さんのポップな絵柄と、ソラの飄々としたキャラクターも、とても良い味を出しています。

そして「宙(そら)に参る」というタイトルには、いろいろな意味が含まれていそうなのですが、気になるのはやはり、ソラたちの最大の目的である実家への「お参り」。その顛末をじっくりと楽しみたい。

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