SF漫画「宙に参る」―夫の遺骨を地球へ届ける「魔女」の旅

夫の遺骨を地球にいる義母に届けるため、妻は息子とともに宇宙へ。しかし特殊な「力」を持つ彼女には、何やらゴタゴタがつきまとい―。

助骨凹介(あばらぼねへこすけ)さん描くSF漫画「宙に参る(そらにまいる)」。情緒感じるタイトルと未亡人が主役のSFという、一風変わった趣きを持つ作品ですが、「超」のつくぐらいの本格的SF作品

単行本は2021年8月現在、リイド社・トーチコミックスより2巻まで刊行中、以下続刊。SF漫画ファンなら要チェック!の一作です。

「宙に参る」感想

あらすじ

宇宙船がセスナ機ほどの身近さになり、人間の体も脳以外ならば挿げ替えが効く時代。コロニーに住む元エンジニア・鵯(ひよどり)ソラは、夫・宇一を病気で亡くす。

その葬儀を終えたのち、地球にいる義母のもとへ宇一の骨を届けることを決意するソラ。息子・宙二郎とともにコロニーを出立する。

が、一部界隈では「魔女」として認識される彼女。その道程には様々な出来事が起こり―。

葬儀シーンで開幕

宇宙を前に遺影と遺骨を抱くキャラクター、という大胆な構図のカバー絵。そして純・和風の葬儀風景をバックに、夫・宇一の遺影を前に主人公・ソラとその息子・宙二郎が神妙な顔を見せる第1話「BONE IN SPACE」冒頭。

そんなSF漫画らしからぬスタートを切る「宙に参る」ですが、その葬儀風景こそが「SFそのもの」

「地理的(距離的)な都合」により、頭部モニターに参列者の顔を写した「焼香ロボ」が焼香・合掌を代行する、というアナログとデジタルが入り混じった描写。シュールでユーモアにあふれたSF感があります。

ちなみに息子・宙二郎の姿は、モニター状の頭部にひょろ長い手足がついたもの。なぜに彼が「息子」なのか?というのは、おいおい。

ひとひねりあるSF要素が面白い

葬儀ののち、義母(宇一の母)のもとへ遺骨を届ける旅に出る、ソラと宙二郎。スペースコロニーの宇宙港より超大型宇宙船(?)に乗り一路、地球にある夫の実家へ

その45日間の道程の中で様々な出来事が起こり…というのが物語の基本線なのですが、各話、ひとひねりがあって面白い

第3話「永世中立棋星」では、自律小惑星型将棋AIである「棋星」と、なぜか対話することになるソラ。人工知能である棋星に人格はあるか?から始まり、将棋AIは果たして人類に反乱を起こす可能性があるか?まで踏み込んでいく。

第4話「Dragon in ODEN」は、宇宙的おでん屋チェーンが舞台。セキュリティの厳しいリンジン回路(劇中でロボットの中枢を司る行動原理)を、「呪文」によってハックする「リンジンの魔女」の存在を、裏メニューを絡めたおでんの合計金額からほのめかす、という話。

一見、本筋とは無関係なエピソード群なのですが、そのそれぞれにユニークなSF要素が詰め込まれています。そしてその積み重ねによって大きなSF物語が構築されていくのが、「宙に参る」ならではの面白み。「個」と「全体」から感じるSF感に、思わずニヤリ。

「魔女」の秘密とは?

そして類まれなるエンジニア能力と「呪文」を駆使し、作中で「魔女」と評される主人公ソラ。そもそもソラはどのようにして能力を手に入れたのか?亡き夫・宇一との馴れ初めは?息子・宙二郎はなんであの姿なの?読んでいるとそんな疑問が次々と湧いてきます。

その人となりが、SF心あふれるエピソードの積み重ねと、随所に散りばめられた「仕掛け」によって徐々に解き明かされていくのが、大きな見どころ。また彼女の強力な力を手に入れたい!と考える勢力との軋轢も発生。2巻ではその流れがさらに加速し、迫る「刺客」をソラはどのようにかわしていくのか?も物語の面白みです。

各エピソードは派手さ控えめ・庶民感を感じるもの。例えれば「SF小咄」的な感覚ですが、その裏側にあるこぼれんばかりのセンスあふれるSF感が素晴らしく!面白い。そして「宙(そら)に参る」というタイトルには、いろいろな意味が含まれていそうなのですが、さて?

まとめ

以上、助骨凹介さんのSF漫画「宙に参る」感想でした。壮大な宇宙と反比例するかのような局地的なエピソードの数々ですが、通して読むとSF・宇宙を感じるこの不思議。繰り返し読むことで新たな発見もあり、奥の深いおもしろさを持つ作品です。

また助骨凹介さんのポップな絵柄と、ソラの飄々としたキャラクターも、とても良い味を出しています。SFはちょっと取っ付きにくいな…と思われる方でも、スッと入っていけるのではないでしょうか。オススメのSF漫画です。

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