「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」全8巻感想&収録タイトルリスト

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藤子・F・不二雄さんの短編、全112作を収録した「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」全8巻の紹介と、各巻から印象的な作品の感想です。

藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>とは

「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」全8巻は、藤子・F・不二雄さんが1968年から1995年までに発表した短編を、発表順に沿って収録している短編集。各短編は、ビッグコミック・漫画アクション・別冊コロコロコミック・SFマガジン・少女コミック・少年サンデーなど、多彩な雑誌にて発表されたものです。

代表作「ドラえもん」ほか、子供向けの連載作品が有名な藤子・F・不二雄さんですが、本シリーズに収録の短編は大人をターゲットにしたものが多数。社会風刺やブラック・ユーモアを含み、また時にはライトな性描写もアリ。ひと味違う読後感を与えてくれます(※少年・少女向けの短編も含まれています)。

なお「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」というタイトルの中に含まれる「SF」は、「SUKOSHI FUSHIGI」の略。もちろんサイエンス・フィクションとしてのSF作品も含まれますが、純粋な意味でのSFオンリーではないのでご注意を。

各巻詳細

以下、「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」全8巻の収録タイトルと、各巻で特に印象的な短編をご紹介します。

(1) ミノタウロスの皿

「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」全体でも屈指の出来、読み手に強烈な印象を残す短編が「ミノタウロスの皿」。牛型宇宙人が人間を家畜として支配する惑星に不時着した宇宙船パイロット。現地の少女と仲良くなるが、彼女は祭りの祝宴で食される運命だった…というSF。

ブラックな内容ですが、一見残酷にも思えるストーリーの中に、たっぷりの風刺が込められた秀作。後半のスピード感あふれる展開、からの最後の一コマは、一度見たら忘れられないインパクトがあります。1969年に発表されたとは思えない、不変の名作。

ほか、藤子・F・不二雄さんの代表作の一つ「オバケのQ太郎」のその後を劇画タッチで描く「劇画・オバQ」などを収録。いつまでも子供じゃいられない、という現実を作者自らが読者に突きつけてくるの、スゴイね。

収録タイトル

  • スーパーさん
  • ミノタウロスの皿
  • ぼくのロボット
  • カイケツ小池さん
  • ボノム=底ぬけさん=
  • ドジ田ドジ郎の幸運
  • じじぬき
  • ヒョンヒョロ
  • 自分会議
  • わが子・スーパーマン
  • 気楽に殺ろうよ
  • アチタが見える
  • 換身
  • 劇画・オバQ
  • イヤなイヤなイヤな奴

(2) 定年退食

新聞記事の中に未来が見える少年が、ハイキングで遭難して…「ポストの中の明日」、戦地から復帰し故郷へ戻った男が見たものは、ダムに沈んだはずの村だった…「ノスタル爺」、いつもの日常にどことなく違和感を覚える男性の不安…「どことなくなんとなく」、などの秀作SF短編を収録。

横暴な夫に消極的な殺意を向ける妻の姿を描く「コロリころげた木の根っ子」といった、SFではないブラックなドラマも、藤子・F・不二雄さんの少年向け漫画の読者にとっては衝撃的なのではないでしょうか。ほか、「エスパー魔美」の原型である短編「アン子 大いに怒る」なども興味深い一作。

収録タイトル

  • 休日のガンマン
  • スタジオ・ボロ物語
  • 定年退食
  • 権敷無妾付き
  • ミラクルマン
  • ノスタル爺
  • コロリころげた木の根っ子
  • 間引き
  • 箱舟はいっぱい
  • アン子 大いに怒る
  • やすらぎの館
  • ポストの中の明日
  • どことなくなんとなく
  • ボクラ共和国

(3) 俺と俺と俺

「ひとりぼっちの宇宙戦争」は、藤子・F・不二雄SF短編の中でもオススメな一作。宇宙人に勝手に「地球代表」として選ばれた夢見がちな少年が、地球を守るための戦いにひとり挑む、というSF。この「誰も知らない…」というところに独特の寂寥感と恐ろしさがあります。

ほか、無敵のスーパーヒーローをブラックに描く「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」、藤子氏お得意の(?)時関係SF「T・Mは絶対に」「1千年後の再会」などを収録。

収録タイトル

  • なくな!ゆうれい
  • 3万3千平米
  • ひとりぼっちの宇宙戦争
  • 分岐点
  • ぼくのオキちゃん
  • 世界名作童話
  • ウルトラ・スーパー・デラックスマン
  • T・Mは絶対に
  • 幸運児
  • 1千年後の再会
  • おれ、夕子
  • 大予言
  • 老雄大いに語る
  • 光陰
  • 俺と俺と俺
  • 女には売るものがある
  • みどりの守り神
  • 耳太郎

(4) 未来ドロボウ

飢えにより、仲間に食われる人間を選ぶくじ引きから逃れた古代ペルシア軍の兵士。深い霧を進み時空を超えて辿り着いたのは、また別の地獄だった…という「カンビュセスの籤(くじ)」。「ミノタウロスの皿」と並ぶ、藤子・F・不二雄SF短編の大傑作です。薄ら寒さを感じるラストの余韻が最高。

荒廃した未来都市に降り立った宇宙船には、コールドスリープした少年が…独特の終末感ただよう「老年期の終り」も、味わい深いSF漫画。売れない物をタイム・パラドックスを利用してセールスするプチSF「オヤジ・ロック」も小粒ながら思わず笑っちゃう一作。

収録タイトル

  • カンビュセスの籤
  • ユメカゲロウ
  • 考える足
  • オヤジ・ロック
  • 宇宙人レポート サンプルAとB
  • ぼくは神さま
  • 未来ドロボウ
  • 宇宙人
  • あのバカは荒野をめざす
  • 老年期の終り

(5) メフィスト惨歌

宇宙船の故障で無人の惑星に流れ着いた少年少女たち。決死のサバイバルを試みるが、やがて不協和音が…「宇宙船製造法」。次々と吸血鬼化していく人類。その手を逃れた少年はやがて追い詰められ…からの意外性のあるラストを見せてくれる「流血鬼」など、読み応えのある短編を収録した第5巻。

その中でもぶっち切りに好みな一編「影男」。隣の家から少女を覗く怪しい中年男。あの手この手で少女を家から遠ざけようとする、その理由は…?というサスペンス風味の物語。これぞ「SUKOSHI FUSHIGI」な物語です。

収録タイトル

  • 並平家の一日
  • ぼくの悪行
  • うちの石炭紀
  • 流血鬼
  • ベソとコタツと宇宙船
  • ふたりぼっち
  • 影男
  • 宇宙船製造法
  • 山寺グラフィティ
  • マイ・ロボット
  • メフィスト惨歌

(6) パラレル同窓会

満ち足りた人生を送る男が、平行世界の自分たちと同窓会を行い…「パラレル同窓会」。タイムマシンの開発に異常な執念を燃やす男。心配する友人だったが…「あいつのタイムマシン」。夢の中でクレオパトラの人生をたどる平凡な男性は、現実逃避の挙げ句に…「クレオパトラだぞ」など。

割と似通った題材ながら、その味付け、展開が異なるのは、多彩なアイデアを生み出す藤子・F・不二雄ならでは。読み比べるとおもしろい。なお今巻収録の「絶滅の島」は8巻にも同タイトルが収録されていますが、誤植ではありません。個人的には8巻の方から読むのをオススメします。

収録タイトル

  • 恋人製造法
  • 創世日記
  • 神さまごっこ
  • パラレル同窓会
  • 四畳半SL旅行
  • あいつのタイムマシン
  • 街がいた!!
  • いけにえ
  • 征地球論
  • コマーさる
  • 絶滅の島
  • 超兵器ガ壱號
  • クレオパトラだぞ

(7) タイムカメラ

「タイムカメラ」「ミニチュア製造カメラ」「値踏みカメラ」「夢カメラ」「コラージュ・カメラ」など、やたら「カメラ」と付くタイトルが目白押しの第7巻。その理由は謎のセールスマン・ヨドバ氏登場によるもの。ビッグコミック掲載ということでやや大人風味のドラマが連作で展開されます。

収録作で思わず笑ってしまったのは「倍速」。科学者「魔土災炎」(のちに「パーマン」にも登場する人物)の発明した「倍速時計」により、スピードのある生活を手に入れたノロマな男が描かれるのですが、丁寧に展開される物語のすべてがオチの一コマのためにあると思うと…。これぞ「大人の藤子不二雄」。

収録タイトル

  • かわい子くん
  • テレパ椎
  • ニューイヤー星調査行
  • 旅人還る
  • 白亜荘二泊三日
  • タイムカメラ
  • 福来たる
  • ミニチュア製造カメラ
  • 値踏みカメラ
  • 同録スチール
  • 求む!求める人
  • タイムマシンを作ろう
  • 夢カメラ
  • ある日・・・
  • 倍速
  • コラージュ・カメラ

(8) 鉄人をひろったよ

6巻に同タイトルが収録されている「絶滅の島」。宇宙人の攻撃を受けてその大半が死に絶えた人類。わずかな生き残りである少年少女は離島で平穏に暮らすが、そこに凶悪な宇宙人が襲いかかり…。藤子・F・不二雄氏の漫画としては珍しい、ハードな残虐描写に驚きが。ラストに含まれているブラック・ユーモアも他作品には無い読後感。

ほか、少年とカワイイ宇宙人タマゴンの出会いと爽やかな別れを描く「宇宙(そら)からのおとし玉」、どことなくドラえもん的である不思議な隣人「異人アンドロ氏」などを収録。そして1995年発表の「絶滅の島」を持って、「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」完結となります。

収録タイトル

  • 懐古の客
  • 四海鏡
  • 昨日のオレは今日の敵
  • 侵略者
  • 親子とりかえばや
  • 宇宙(そら)からのおとし玉
  • 殺され屋
  • マイホーム
  • 丑の刻禍冥羅
  • 鉄人をひろったよ
  • マイ・シェルター
  • 裏町裏通り名画館
  • 有名人販売株式会社
  • 異人アンドロ氏
  • 絶滅の島

まとめ

以上、「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」全8巻の感想、および収録タイトルのご紹介でした。

若干、時代を感じさせる描写もありますが(登場人物がやたらタバコをふかしていたりw)、本質的な面白さは不変。令和に読んでも楽しめる作品ばかりです。特に「ミノタウロスの皿」「カンビュセスの籤」といった作品は、一読しておいて損のないSF漫画です。

なお参考までに、藤子・F・不二雄さんは1933年生まれで1996年に逝去(62歳没)。氏の代表作「ドラえもん」の連載は1969年からで、亡くなる直前まで「大長編ドラえもん」を執筆。また1985年から1991年にかけて「チンプイ」を連載するなど、晩年まで少年・少女向け漫画を製作されていました。

一方、「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>」全8巻に掲載された短編は、1968年~1995年の発表。多くの子供向け漫画を執筆するかたわら、これらの漫画を描かれていた、といった背景を知っておくと、各短編をより深く味わえるのではないでしょうか。

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