漫画「エスパー魔美」―超能力少女の活躍描く藤子・F・不二雄のさわやかSF

超能力”少年”を題材にした漫画は数多くありますが、「超能力”少女”が主人公の少年向け漫画」というのは、連載当時めずらしかったのでは。藤子・F・不二雄さんの漫画「エスパー魔美」。

雑誌「マンガくん」に1977年~78年まで連載され、TVアニメ化もされた本作。多彩な超能力を発揮する主人公・魔美のさわやかな活躍が描かれます。

なお本記事の内容は、小学館てんとう虫コミックスの新装版・全9巻より作成。記事中の巻数表記も同じです。

「エスパー魔美」感想・レビュー

あらすじ・概要

中学二年生の佐倉魔美は、同級生の高畑くんが男子たちに絡まれているところに遭遇。超能力で彼を瞬間移動させてしまう(この時、魔美は自分に超能力があるとは気づいていない)。

しかし「自分に超能力がある」と勘違いした高畑くん。ギリギリの状況で超能力を発動させるために、男子たちが起こしていると思われる「辻なぐり」に挑むことを決意。

「実は超能力があるのは自分なのでは?」と薄々気づき始めた魔美は、胸騒ぎから高畑くんの決闘の場へ。そこで再び超能力を発動し、自身の持つ隠された力と向き合っていくことに…。

…以上が漫画「エスパー魔美」のはじまり。以降、超能力に目覚めた魔美がボーイフレンド・高畑くんの知恵を借りながら、身の回りのささいな出来事から大事件までを、類まれなる超能力で解決!していく様が描かれます。

また魔美がアルバイトとして、画家である父親のヌードモデルをする、という健康的なお色気要素があるのも、本作の大きな特徴。絵柄や扱われる題材も含めて、作者が数多く手掛けてきた少年向け漫画とは異なる、青少年向けの物語となっています。

人間味のある超能力者・魔美の魅力

「エスパー魔美」の最大の魅力は、なんと言っても主人公の魔美そのもの

祖先に火炙りされた「魔女」がいる彼女(※魔美の父・談)。その血が元で超能力が発現…かどうかは不明ですが、テレキネシス・透視・空中浮遊など超能力を次々と開花させていきます。

そんな数々の超能力を駆使する魔美ですが、実はちょっとだらしなくっておマヌケな、ある意味「普通の少女」。かなり高レベルな超能力者でありながら、その持ち前の素直さ・真っ直ぐさ・強い正義感から、力を良い方向に使おうとする。

その人間味のある生き方が、不思議と共感、応援したくなる気持ちを湧き起こす、さわやかで魅力的な主人公です。

ちなみに彼女の能力の中でもユニークなのが、テレポーテーション(瞬間移動)能力。「物体と物体が接近するエネルギー」でテレポートを行うため、特殊なブローチで自分に向けて「仁丹」を発射!短距離の瞬間移動を行います。

↑「仁丹」とはこんなの。実在する口中清涼剤です。魔美は梅仁丹が好みw

魔美がブローチを使ってテレポートを繰り返す姿は、「エスパー魔美」ならではの超能力表現。「ちょっと未成熟な超能力者」感があって、微笑ましさを演出しています。

時には社会派のメッセージも

そんな魔美が人々の困りごとや危険を感知、類まれなる超能力を駆使して解決、自身も成長していく様子が、コメディ風味をまじえてライトに描かれていく「エスパー魔美」。

しかし時折、社会派のメッセージを込めたエピソードがぶっ込まれるのが、侮れないところ。その一つが5巻収録の「サマー・ドッグ」。避暑地でひと夏飼われた犬が捨てられて野犬化する、という実在の社会問題を取り扱ったエピソード。

魔美のエスパーとしての活躍を絡めながらも、やや後味の悪い結末は、少年少女たちに「君たちならどうする?」と藤子・F・不二雄先生が語りかけてくるような気がします。

「エスパー魔美」の最終回は?

また「画家の父と、そのヌードモデルをする魔美」というキャラクター性から、アート方面の興味深いストーリーが描かれるのも、「エスパー魔美」ならでは。

芸術家と評論家の関係性から、芸術とは?批評とは?をわかりやすく物語に盛り込んだ有名なエピソード「くたばれ評論家」(1巻収録)や、見ても心を揺さぶらない数億円の名画の謎を描く「感動しない名画?」(9巻収録)は、実に印象的。

そしてその延長線上にあるのが、最終回「パパの絵、最高!!」(9巻収録)。父の同級生である売れっ子画家に、モデルを頼まれた魔美。果たして彼の真意は?というストーリー。

「エスパー魔美」を形作る数々の要素が自然に組み込まれ、そして迎える大団円。心に残る最終回となっています

余録:「エスパー魔美」の原型となった漫画

実は「エスパー魔美」には、原型となった読切作品が存在。タイトルは「アン子 大いに怒る」(雑誌連載時の原題は「赤毛のアン子」)。

少し子供っぽい童話作家のお父さんと二人暮らしをしている、中学生・アン子。生活は楽ではないが、それなりに楽しく暮らしていた。しかしアン子に楽をさせてやりたいお父さんは悪質な詐欺にひっかかり、お母さんの思い出が詰まった家を手放す事態に。怒りに震えるアン子は、不思議な力を発揮し…

…というストーリー。アン子が魔女の血を引いていたり、お父さんがアン子のヌードを描いていた形跡があったり、というのが「エスパー魔美」との共通点ですが、お母さんがいない、お父さんがアン子の秘密を知っている、など微妙な設定の違いもあります。

「アン子 大いに怒る」は、現在は「藤子・F・不二雄SF短編<PERFECT版>(2)定年退食」にて読むことができます。「エスパー魔美」と読み比べてみてください。

まとめ

以上、藤子・F・不二雄さんの漫画「エスパー魔美」感想・レビューでした。1970年代後半の作品ですが、F先生の洗練された作画で、今読んでもあまり古さを感じません。いつ読んでも、安定した面白さを与えてくれる漫画です。

なお「エスパー魔美」は現在、記事中でご紹介したてんとう虫コミックス版・全9巻以外に、「藤子・F・不二雄大全集」版・全5巻が刊行されています。

こちらはてんとう虫コミックス版よりも若干お高いのですが、巻頭のカラーイラストや解説・特別資料をまとめた【巻末企画】が収録されています。お好きなバージョンで超能力者・魔美の活躍を楽しんでみてください。

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