オカルト・ホラー漫画漫画感想・レビュー

漫画レビュー『百鬼夜行抄』妖しくも美麗!ドラマティックなオカルト・ホラー

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祖父の強大な霊力を受け継いだ青年は、望むと望まざるにかかわらず、「魔」と隣合わせの日常を過ごしていく―。

1995年以来、数十年に渡り物語が続く、大人気長編ホラー・ストーリー。今市子さんの漫画『百鬼夜行抄(ひゃっきやこうしょう)』の感想・レビューです。

百鬼夜行抄(8) (Nemuki+コミックス)

連載は朝日新聞出版の漫画雑誌「ネムキ」「Nemuki+」で、単行本1~31巻が刊行中(2024年6月現在)。以下『百鬼夜行抄』の主なあらすじや見どころなどをご紹介します。

『百鬼夜行抄』あらすじ

高い霊力を持っていた、今は亡き怪奇幻想小説家・飯島蝸牛(かぎゅう)。その孫・飯嶋律(りつ)は、祖父の力を強く受け継ぎながらも、至って普通の高校生活を送っていた。

しかし何かと「魔」と縁のある飯島家。そこで暮らす律の周囲には、次々と「妖しい」出来事が起こり、時には身の危険も…。

百鬼夜行抄(7) (Nemuki+コミックス)

そんな彼を守るのは、蝸牛の式神である妖魔・青嵐(あおあらし)。訳あって律の父・孝弘の体に住まう彼や、霊感の強すぎる一族とともに、律は恐ろしくも不思議な毎日を過ごしていく…

『百鬼夜行抄』感想・レビュー

雰囲気のあるホラー・ドラマ

ジャンルとしてはオカルト・ホラーに属する漫画『百鬼夜行抄』。

  • 霊感の強かった祖父・蝸牛の血を色濃く引が故に、妖魔・妖怪絡みのトラブルに巻き込まれる主人公・律。
  • 蝸牛の命により、律の父親(故人)の体に住まい、律を陰日向に守る風変わりな式神・青嵐。
  • 普段は庭の木を根城とする文鳥の姿。とある事件をきっかけに律の式神となったちょっと間抜けな妖怪・尾白と尾黒。
  • 蝸牛の子どもたちの娘にして、律と同じく強い霊感を持つ従姉妹たち、司(つかさ)と晶(あきら)。

など律の家族や親戚、または縁のある妖魔を中心に、「飯島家」の周辺に起こる不思議にして妖しい出来事が、情緒たっぷりに描かれていきます。

百鬼夜行抄(14) (Nemuki+コミックス)

気持ち悪さやグロさを前面に押し出すホラーではなく、テイストとしては「魔と隣り合わせの日常」といった感じ。作者・今市子さんの美麗すぎる作画にのせて、ドラマ性の高い物語が展開されるのが大きな特徴。

なお律は霊感が強いだけで、特に退魔・除霊に精通しているわけではない、というのも『百鬼夜行抄』のユニークなポイント。彼がトラブルに巻き込まれて四苦八苦するコミカルな様子もまた、物語の面白みとなっています。

怖いエピソードはきっちり怖い!

とは言っても『百鬼夜行抄』はホラー漫画。時折ゾッとするエピソード、容赦なく怖い話がぶっこまれてくることも

百鬼夜行抄(16) (Nemuki+コミックス)
  • 行きずりの客により飯島家に持ち込まれた、精巧な箱庭。その中の川に「橋」をかけてしまったことにより、夜な夜な凶悪な鬼が現れ…『人喰いの庭』
  • 知人の住職の付き添いで、「行方知れずの祖父の遺体を捜して欲しい」という依頼に関わる律。舞台となる古民家では十三年前にも子供が行方不明にー『封印の家』
  • 大学の後輩女性から、心霊関連の相談を受けた晶。それが元となり、律とともに彼女の家に囚われてしまう。その一室には、棺桶に入った古い人形たちが…『人形供養』

といったホラー・ストーリーが目白押し。情緒あふれるエピソードとのコントラストも手伝って、これがまた本格的に怖い…!

各話、よく練り込まれた読み応えのあるストーリーとなっていて、オカルト・ホラー好きも満足の恐怖感を味わえます。

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律と司、二人の関係は…?

そんな多彩にして読み応えのあるエピソード群が描かれる本作。多くの見どころがあるのですが、注目のひとつが律と年上の美しき従姉妹・司との関係性

二人を「フィアンセ的なもの」として認識する一部の親戚もいますが、本人たちにはそんな意識は無く、付かず離れずの微妙な関係が長らく続くことに。そのうち司には彼氏も出来たりして…。

しかし律が高校生から大学生になったりと、時がゆっくりと進行。数々の怪奇・不思議を体験する内に、特に律は「恋愛」を超えた「強い絆」を意識するように。

百鬼夜行抄(9) (Nemuki+コミックス)

「いつか司ちゃんが誰かと結婚しても 僕はいつでも司ちゃんを助けに行く そして僕も誰かと結婚して家庭を持っても 司ちゃんは困った時は必ず助けに来てくれるんだろう…」(『水辺の暗い道』より)

そんな律と司の、運命的とも言える関係性が何とも素敵…!恐怖エピソードの中で神々しい輝きを放つ二人の姿に、胸を打たれます。「怖い」だけではない長編ストーリーならではの面白みを、ぜひ味わってみてください。

感想・レビューまとめ

以上、オカルト・ホラー漫画『百鬼夜行抄』の感想・レビューでした。作者の今市子さんは美麗な作画に定評のある漫画家さんですが、それは本作『百鬼夜行抄』でも遺憾なく発揮。

丁寧な物語運びとも相まって、雰囲気のあるホラー・ドラマに引き込まれること必至。他のホラー漫画とは一味異なる、情緒あふれる恐怖世界が楽しめるでしょう。

百鬼夜行抄(1) (Nemuki+コミックス)

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