「これは 神の子として生まれた 郷田るなの伝記である」
意志強ナツ子(いしつよなつこ)さんの漫画『るなしい』。家業のオカルト・ビジネスに関わる女子高生と、その友人たち。行き着く先は…?
連載は講談社の雑誌「小説現代」。コミックスは2023年4月現在、3巻まで刊行中です。
『るなしい』感想・レビュー
あらすじ
「火神(かじん)の子」として、祖母(おばば)とオカルトな鍼灸院を営む女子高校生・郷田るな。
家業と風変りな言動から、学校ではいじめのターゲットにされている彼女。
だが隣家の幼馴染み・スバルら、カースト底辺の生徒たちとは、特技の鍼灸を通してうまく付き合っている。
そんなある日、”るな”は鍼灸の知識を活かして、カースト上位の男子・ケンショーの悩みを解消する。
それをきっかけにケンショーと友人関係となり、さらに恋心を抱くように。
一方のケンショー。人付き合いは上手いが、あまり裕福でない家庭事情が悩み。
しかし“るな”とおばばの「信者ビジネス」に感銘を受け、徐々に彼女たちに傾倒していく…。
物語冒頭の「衝撃的」な姿
「これは 神の子として生まれた 郷田るなの伝記である」というモノローグとともに開幕する漫画『るなしい』。
その冒頭では、刑務所に収監され差し入れの自伝(?)を受け取る”るな”の姿が。
本編では時を遡り高校時代へ。特殊な家庭環境にある女子が、同級生の男子たちとともに、インモラルな「信者ビジネス」にハマっていく様が、ねっとりと描かれていきます。
物語の主人公”るな”は、おばばの営む『火神の医学鍼灸院』で、「処女のモグサ・大(15,000円)」を当たり前のように売る「火神の子」。
「思春期の少女らしさ」と「冷徹なビジネス感」を併せ持ち、詐欺的なカルト・ビジネスも平気で行える高校生。
しかし時折見せる「不思議な力」の片鱗。果たして彼女は「本物」なのか…?
危険な「カルト・ビジネス」
その”るな”と共に物語を動かしていくのが、陽キャの同級生少年・ケンショー。
ふとしたきっかけで、”るな”とおばばに関わるようになった彼。次第に彼女たちの「ビジネス」に傾倒していくように。
貧しい家庭を助けるため、成功したい!と願うケンショー。「指導」の影響で「自己実現」、そして「達成感」を経て、起業への思いを強くしていきます。
その彼の上昇志向を見抜き、「将来と言わず今、起業したら?」と焚きつける”るな”。
ケンショーと学校内で「ビジネス競争ゲーム」を始めていくのですが、基本はカルト・ビジネスである彼女の手法は、危険を孕んだもので…?
非常に危ういバランスで成り立つその様子に、じっとりとまとわりつくようなモヤモヤとハラハラが。
ささいなバランスから「二人の目に見えない関係」が逆転したりもして、奇妙な恐ろしさ…!
「神の子」の行き着く先は?
そして既に”るな”の未来は開示されているのですが、そこに至るまでに何が起こったのか?
さらに「火神の子」として祀られる”るな”は、本当に「神の子」なのか…?
単なる「高校生の危険なビジネス」の根底に、オカルト風味が横たわっているのが、『るなしい』ならではの面白さ&不気味さ。
否が応でも不穏な想像を掻き立てられるのですが、真実に触れてしまうともう後戻りできないかも、と思わせるイヤげな雰囲気にゾワゾワが…。
意志強ナツ子さんの漫画は、読んでいると「覗いてはいけないものを見ている」ような雰囲気が魅力。
読むとズブズブと沼にハマって抜け出せなくなっていく、何とも言えない仄暗さ・背徳感があります。
本作『るなしい』でも、物語の随所で匂わされる怪しい雰囲気に、グイグイと引き込まれるような感覚が。一度読むとそこから抜け出せない…!
まとめ:”るな”を待つ「ブラックな未来」
以上、意志強ナツ子さんの漫画『るなしい』の感想・レビューでした。
物語はどのような方向へ転がるのか、まだまだ不明な部分もあります。
が、どちらにしても「ろくでもない未来」が待っているかと思うと、奇妙なワクワク感が止まりません。さらなるブラックな展開が楽しみです。
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