「これは 神の子として生まれた 郷田るなの伝記である」
意志強ナツ子(いしつよなつこ)さんの漫画『るなしい』。オカルト・ビジネスに関わる女子高生と友人たち、その行き着く先は…?
2022年4月現在、2巻まで刊行中。講談社の雑誌「小説現代」連載、という変わり種のコミックです。
『るなしい』感想・レビュー
『るなしい』あらすじ
「火神(かじん)の子」として、祖母(おばば)とオカルトな鍼灸院を営む女子高校生・郷田るな。
家業と風変りな言動から、学校ではいじめのターゲットにされている彼女。だが隣の家の幼馴染み・スバルらカースト底辺の生徒たちとは、特技の鍼灸を通してうまく付き合っている。
そんなある日”るな”は、鍼灸の知識を活かしてカースト上位の男子・ケンショーの悩みを解消する。それをきっかけに友人関係となり、さらに恋心を抱くように。
一方のケンショー、人付き合いは上手いが、あまり裕福でない家庭事情が悩み。しかし“るな”とおばばの「信者ビジネス」に感銘を受け、彼女たちに教えを請うが…?
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冒頭の衝撃的な姿
漫画『るなしい』の冒頭で描かれる、成長した”るな”。それは、刑務所に収監され差し入れの自伝(?)を受け取るという、衝撃の姿。そして
「これは 神の子として生まれた 郷田るなの伝記である」
というモノローグとともに物語が開幕。特殊な家庭環境にある女子が同級生の男子たちとともに、インモラルな「信者ビジネス」にハマっていく様が、ねっとりと描かれていきます。
その主人公・”るな”は、『火神の医学鍼灸院』でおばばと共に「処女のモグサ・大(15,000円)」を当たり前のように売る「火神の子」。
「思春期の少女らしさ」と「冷徹なビジネス感」を併せ持つ、不思議な高校生なのですが、果たして彼女は如何にして冒頭のシーンにたどり着いたのか…?
危険な「カルト・ビジネス」
そのキーとなるのが、陽キャの同級生少年・ケンショー。ふとしたきっかけで”るな”とおばばに関わるようになった彼は、次第に彼女たちの「ビジネス」に傾倒していくように。
決して裕福では無い家庭を助けるために成功したい!という思いを持つ彼。「指導」の影響で「自己実現」、そして「達成感」を感じ、やがて起業をしたいと強く願っていく。
その彼の上昇志向を見抜き、「将来と言わず今、起業したら?」と焚きつける”るな”。ケンショーと学校内で「ビジネス競争ゲーム」を始めていくのですが、基本はカルトなビジネスである彼女の手法は危険を孕んだもので…?
非常に危ういバランスで成り立つそのゲームの様子、じっとりとまとわりつくようなモヤモヤとハラハラが。ささいなバランスから「二人の目に見えない関係」が逆転したりもして、奇妙な恐ろしさ…!
「神の子」の行き着く先は?
意志強ナツ子さんの漫画、読んでいると「覗いてはいけないものを見ている」ような雰囲気があり、一度読むとズブズブと沼にハマって抜け出せなくなっていく、何とも言えないイヤげな仄暗さ・背徳感が魅力。
そして既に開示されている”るな”の未来。そこに至るまでに起こったことに対して、否が応でも想像を掻き立てられるのですが、一度触れてしまうともう後戻りできないかも、と思わせるそのイヤげな感覚が、妙にクセになって怖い…。
そんな『るなしい』、単なる「高校生の危険なビジネス」の根底に、オカルト風味があるのが独特なポイント。鍼灸院で「火神の子」として祀られる”るな”は、果たして本当に「神の子」なのか?物語の随所で匂わされる怪しい雰囲気に引き込まれていきます。
まとめ
以上、意志強ナツ子さんの漫画『るなしい』の感想・レビューでした。
物語はまだまだ序盤ということで、どのような方向へ転がるのかまだまだ不明なのですが、どちらにしても「ろくでもない未来」が待っているかと思うと、奇妙なワクワク感が止まりません。さらなるブラックな展開が楽しみです。
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