不思議な箱で過去に干渉してしまった青年は、変わってしまった世界を元に戻すことができるのか―?
講談社イブニング連載、宮尾行巳さんの漫画「五佰年BOX」1巻を読みました。「五佰年」は「ごひゃくねん」ではなく「いほとせ」と読みます。
和洋中問わず歴史が好き、という作者の宮尾行巳さん。本作が初コミックスとのことで、おめでとうございます。
「五佰年BOX」1巻レビュー
あらすじ
家が隣同士の幼馴染み・真奈のことを12年間密かに思い続ける大学生・叶多(かなた)。真奈の家の蔵掃除を手伝う最中、彼女に婚約者を紹介され複雑な気持ちを抱く。
そんな叶多、蔵の中で土に埋められていた古びた「箱」を見つける。蓋を開くとその中には、日本の中世らしき時代の人々が動めいていた。
箱を持ち帰り観察する叶多。その中で暮らす一人の少女が気になり、ささいな手助けをするように。しかしある日、野党に襲われる彼女を助けるため、箱の中に手を入れて野党の男を殺してしまう。
翌日、箱の詳細を真奈の父に聞く叶多。しかし真奈の名前を出すと「ウチに娘はいない」と言う。存在自体が消えてしまった真奈。叶多が箱に深く干渉したことで、未来である現代に影響が―?
箱の中の「バタフライ・エフェクト」
5百年前(らしき)過去に繋がっている不思議な箱を手に入れた青年。自身の不用意な行動のために、世界から消えてしまった想い人を取り戻そうとする物語。
ジャンルとしてはSFでしょうか。タイムスリップではなく「バタフライ・エフェクト」による「歴史の操作」が描かれます。
バタフライ・エフェクトは別名「北京の蝶」。北京で蝶が羽ばたくと巡り巡ってニューヨークで嵐が起こる。つまりささいな動きがのちのち大きな影響を及ぼすことのたとえです。
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変化するパラレルワールド
さて「五佰年BOX」、SF好きにはなかなか面白いシチュエーション。
過去を触ってしまったせいで大切な人を失い、しかしそれを元に戻そうと不思議な箱に向き合うのですが、その方法はまるでわからない。
少女を助けたから真奈が消えたのか?それとも野党を殺したからなのか?
箱に干渉することで原因を探ろうとするが、それはパラレルワールドとも言うべき展開につながって、ますます複雑化。
そして「真奈のいない世界」ではまた別の人間関係が存在して…?
真奈と叶多の微妙な関係
もともと叶多と真奈は、幼馴染みだけど恋愛には届かない、という微妙な関係。
仮に真奈が戻ってきたとしても、彼女は婚約者のもとへ行く。また別の関わりを持つようになってしまったパラレルワールドも消滅もしてしまう。
大切な人を取り戻そうと尽力することが、良い結果をもたらすかどうかはわからない。それでも…!と必死で行動する叶多。読んでいてせつない気持ちになります。
厳密なSFというよりは、SF設定から生まれる人間ドラマにウェイトを置いている印象です。
並行して展開される「箱の中の物語」
そんな現代と500年の時を隔て、並行して展開される過去世界の少女・キサの物語が「五佰年BOX」のユニークな魅力。
キサの存在と行動は、真奈の消失とどのように関係しているのか?
箱の中のキサを観察し、真奈を取り戻すきっかけを掴もうとする叶多。
1巻ラストでは箱の中で気になる出来事が起こりますが、叶多の行動や如何に?
冒頭に出てきたお坊さんと箱の関係も、何やら重要なカギを握っていそうなので覚えておきたいところです。
まとめ
過去と現代をつなぐ不思議な箱がドラマを巻き起こす「五佰年BOX」。
全編に漂う軽いせつなさが良い雰囲気を醸し出しつつ、まだまだ謎がいっぱいありそうで今後の展開が気になります。2巻も期待。
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