53年間一度も勃起したことの無い男は、「怪しいED錠」に出会い、その人生を大きく変えてゆく…。
高橋ツトムさんの漫画『JUMBO MAX(ジャンボマックス)~ハイパーED薬密造人~』。強力なED錠「ジャンボマックス」が巻き起こす騒動描く、濃密なクライム・サスペンス。
アンダーグラウンドな雰囲気のそこかしこに、読者の心のアソコを刺激する劇薬が仕込まれていて、バツグンに面白い!連載は小学館ビッグコミックで、2023年2月現在、単行本が7巻まで刊行中です。
『JUMBO MAX~ハイパーED薬密造人~』感想・レビュー
あらすじ
家賃収入と薬局の経営で生計を立てる曽根建男(そねたてお)。高校生の娘を持つバツイチ美人女性・あかねと結婚。さらに3ヶ月後、あかねから妊娠を告げられる。
53歳にして幸せの絶頂に…が、初夜の時は泥酔で記憶が無い!しかも自身は「53年間一度も勃起したことの無い」身。果たしてお腹にいるのは自分の子供なのか?
妻に対してわずかな不審を抱く中、管理物件で店子の女性が失踪、女性の父・須磨岡と共に部屋を整理していると、謎のED錠を発見。
妻とその元夫に対する対抗心から、分けてもらった薬を服用する建男。するとこれまでどんな薬を飲んでも反応しなかった下半身に、生まれて初めての感覚が―?
毎日お得!
危険なED錠をつくれ!
ED(勃起不全)を改善させる薬としては「バイアグラ」が有名ですが、主人公・建男が手に入れたのは中国人が精製したと思われる、出所不明の怪しい薬。
しかしその効果は絶大!建男は「人生初めての勃起」を体験することに。早速性欲の限りを尽く…
…さない!のが、『JUMBO MAX~ハイパーED薬密造人~』のユニークさ。根っからの薬剤師である建男がまず考えたのは、「これ(謎のED錠)の成分はなんなんだ?」
そこから須磨岡、大学の女性研究員・鹿子(かのこ)を巻き込み、ED錠の成分を分析して独自製造~販売をすることに。
もちろん勝手に薬物を作るのは違法。しかし「薬そのもの」に感動した建男は、「一生分を作りたい」と決意。
かくして建男・須磨岡・鹿子の、危険な「違法ED錠づくり」がスタートします。
社会を侵食していく「ジャンボマックス」
建男は苦心の末、オリジナルに近いED錠の精製に成功。試作品を須磨岡と鹿子へ渡します。
しかし鹿子がそのED錠を、彼女に言い寄る大学教授に飲ませたことから、物語がキナ臭い方向へ。
すったもんだあって(ネタバレのため割愛)薬の製造中止を訴える建男ですが、既に受注が始まっていたため、仲間はそれを許さず。
話し合いの末「600錠を作って打ち止め」とすることに。
だがすでに流通し始めたED錠は、「最強のSEXドラッグ・ジャンボマックス」として社会に浸透。
不審に思った警察も動き出し、さてどうなる建男一味!
「ジャンボマックス」が事態をややこしくしているのは、社会の秩序を乱す半面、「アソコを立てることで人の役にも立っている」(やかましい)こと。
その効能に救われ、愛を取り戻したカップル多数!社会をある意味で救っていく、という二面性を持つ薬。それがジワジワと、人も社会も侵食していくサスペンス感が非常に面白い!
追い詰められた主人公に変化が…?
だが根がマジメで気の弱い建男、ジャンボマックスの評判の高まりと、「警察が動いている」という事実により、プレッシャーからか徐々に疲弊…。
そして精神的に追い詰められていく中で、状況を悪化させる決定的な出来事が!さて建男はこのままひたすら追い詰められて、ジリ貧の道を進むのか…?
…と思いきや、『JUMBO MAX~ハイパーED薬密造人~』3巻で事態は大きく動きます。
詳しくはネタバレになってしまうので自重しますが、追い詰められ四面楚歌となった建男に、「ある変化」が。
文字通り「枯れていく」一方だった男。その心の芯にフッと火が灯る様子に、ページをめくる手に力が入る…!
一方、建男たちの思惑を大きく超えて、独り歩きし始めた「ジャンボマックス」。
性欲だけに留まらず、金、そして「愛」をも生み出すその力。強力過ぎるED錠は果たして人々をどこへ連れて行くのか?
仄暗く燃え上がる欲望から目が離せない!
まとめ:予想外に本格的なクライム・サスペンス
以上、高橋ツトムさんの漫画『JUMBO MAX~ハイパーED薬密造人~』の感想・レビューでした。
ケレン味たっぷりのタイトルと下ネタ系の題材から、もっとそっち方面の話かと思いきや、これが本格的なクライム・サスペンスで、意外な読後感。めちゃくちゃ面白いです。
また一癖も二癖もある登場人物たち、それぞれに個性があって魅力的。さて彼らに待ち受けるのは破滅の道か、それとも?
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