漫画「ヴイナス戦記」―金星に生きる若者の戦いと焦燥描くSFアクション

金星に入植した人類が繰り広げる領土争い。その渦中に身を投じた若者たちの運命は―?

安彦良和さんの「ヴイナス戦記」。学研の漫画雑誌「コミックNORA(ノーラ)」に連載され、作者本人によりアニメ映画化もされたSF漫画です。全4巻完結(※未完。詳しくは後述)。

「ヴイナス戦記」感想

あらすじ・概要

2003年に巨大氷塊が衝突、その性質を大きく変えた金星(ヴイナス)。2007年に初めて有人宇宙船が着陸して以来、人類の入植が加速する。そして2083年=ヴイナス歴72年、金星の人類はイシュタルとアフロディア、2つの自治州に別れ、鉱物資源の領有を巡って対立していた。

…という背景のSF漫画「ヴイナス戦記」。激動に揺れるヴイナス情勢と、それに翻弄される若者たちの姿が描かれます。物語全体としては未完で、第三部の構想もあったようですが、実現はされませんでした。

ですが1~2巻【ヒロ編】と3~4巻【マティウ編】の各編はそれぞれ完結。安彦良和さんの美麗な作画にのせて、SFアクション+サスペンス+青春といった感じの物語が展開されていきます。

青春+アクションの【ヒロ編】

アニメ映画のベースともなった【ヒロ編】。2都市の対立が表面化する中、アフロディア軍の新設バイク部隊にスカウトされるバイク少年・ヒロ。軍用大型バイクに跨り、イシュタルの重戦車部隊に挑んでいく、というSFアクションが描かれます。

その物語の中心となる軍用バイク「HOUND(ハウンド)」のアクションが、非常にカッコイイ!敵戦車に重武装+機動力を用いて捨て身で迫っていく、スピード感あふれるバトル描写は、SFアクション漫画の中でも屈指の出来。

しかしアクションだけでは無いのが「ヴイナス戦記」という物語。その兵器に生身で搭乗するヒロたち。金星入植から数世代経った若者たちの、行き場のない焦燥感のようなものが、戦闘シーンや兵士たちの諍いからジリジリと伝わってきます。

そして戦争という特殊過ぎる状況に巻き込まれた彼らは、戦いの果てに何を見るのか?戦争アクションの中に焼け付くような青春が込められている【ヒロ編】。読むと心のなかにムラムラと湧き上がるものが。

策謀渦巻く【マティウ編】

続く「ヴイナス戦記」3~4巻では、【ヒロ編】から時と舞台を移した【マティウ編】へ。ヴイナス歴73年、上層部の権力争いに巻き込まれたイシュタル軍士官・マティウを中心とした、アクション・サスペンスが描かれます。

好意を寄せる女性士官にスパイ容疑がかかったことに端を発し、軍を追われ命を狙われるマティウ。幼馴染の少女・ルピカや【ヒロ編】にも登場した地球の監察官・ヘレンらと協力し反撃に転じる!という物語。

…正直に書くと【マティウ編】、ちょっとクセがあります。前半はマジメなサスペンスなのですが、後半はちょっとオチャラケも入り混じった展開へ。この辺りはやや好き嫌いが分かれるやも。ま、ご愛嬌ということで…。

未完ながら魅力のあるSF作品

しかしラストは衝撃的な【マティウ編】。続きはどうなるの…?というところで残念ながら終了した「ヴイナス戦記」。未完のまま現在に至り、ややモヤモヤも残るところ

ですがSF設定やアクション描写、そして魅力的なキャラクターなど、完全オリジナルのSF漫画として放っておけない輝きがあるのも事実。特に漫画家・安彦良和の上手さ・巧みさが味わえるのは、本作の大きな魅力。安彦良和さんは後に「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」が大ヒットしますが、個人的には「ヴイナス戦記」のタッチに惹きつけられます

またヒロのガールフレンド・マギー、マティウの想い人・ルイザ、全巻を通じて主人公に関わる地球の監察官・ヘレンなど、印象的な女性キャラクターが多数登場するのも、安彦良和作品ならでは。その中でも【ヒロ編】で破天荒な活躍を見せるバイク乗り・ミランダと、【マティウ編】でマティウをサポートする幼馴染・ルピカの活躍は、大いに目を引くもの。魅力的な安彦良和ヒロインにも注目してみてください。

まとめ

以上、安彦良和さんのSF漫画「ヴイナス戦記」全4巻の感想でした。未完ということで正直、読み終わるとモヤモヤすると思います(笑)。が、未完であることを差っ引いても魅力のあるSF作品。特に【ヒロ編】は良いSFアクション感を感じられると思います。

まあしかし、「これからどんな物語が始まるのだろう…!」とワクワクさせてくれる安彦良和作品のカバー絵は、ホントにスゴイ!

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