「麻衣の虫ぐらし」全2巻―美女が体験する農業+虫の世界+ガチ百合

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農業にいそしむカワイイ女の子たち。彼女たちの、のどかでキャッキャウフフな農業ライフを楽しむ漫画。

と思いきや…?

雨がっぱ少女群さんの漫画「麻衣の虫ぐらし」全2巻。作者の雨がっぱ少女群さんは、かつて断筆宣言をされていた伝説の絵師さんです。

葉っぱに止まるてんとう虫を見つめる、主人公の麻衣。後ろで微笑むのは麻衣に思いを寄せる菜々子ちゃん。

ファンタジックな雰囲気の表紙で、中身もそれに違わぬコミカルさのある内容。ですが、物語後半には予想外にリアルな展開が。意外な驚きが待っている漫画です。

「麻衣の虫ぐらし」感想

リストラ美女と苦労人少女の農業ライフ

主人公はリストラにあい、絶賛職探し中の桜乃麻衣・20歳。祖父と農業を営む友人・菜々子の手伝いをしながら、その日暮らしの毎日。

一方の菜々子。入院中の祖父の畑を守り、農業に勤しむマジメで健気な彼女。実は麻衣のことが気になっているようで?

お金持ちで自然保護に精を出す来夏(らいか)も交え、テントウムシ・チョウ・アリなど農家の周辺にいる虫たちと農業の関わりが、虫知識を絡めたエピソードで毎回コミカルに描かれます。

麻衣の虫ぐらし(1) (バンブーコミックス)雨がっぱ少女群:竹書房

テントウムシの羽を接着する理由は?

「麻衣の虫ぐらし」各話の特徴は、リアルに描かれるカワイイ女の子+農作業の様子

例えば第1話「ナミテントウ」。天使のような笑顔(マジでカワイイ)を浮かべながら、菜々子は「てんとう虫の羽根を接着剤でくっつける」という、一見残酷に見えることをしています。

その行為に、ちょっと引いてしまう麻衣(と読者)。ですが、そこには農業に関わる意外な理由が。

祖父と菜々子の営む農業は、低農薬が基本。そのためアブラムシの駆除を、テントウムシにまかせています。

ですがそのままだと飛んで逃げてしまうので、羽根を接着剤で固定している、というのが真相。

飛べなくなるけど、ビニールハウス内は餌も豊富で危険がないので、テントウムシにとっても悪い環境じゃない、ということ。

なるほど!と納得なのですが、それでも申し訳なさそうに作業する菜々子が印象的。

ちなみに劇中では描かれませんが、2ヶ月で羽の固定が取れる「飛べないテントウムシ」も売られているそうです。

農業+虫の笑えるエピソード

そんな虫に関する薀蓄(うんちく)を織り交ぜながら、それに由来した笑えるオチが付く、といった感じで展開される各話。

麻衣と菜々子のほのぼの、時に百合っぽさを感じさせるやり取りにニラニラしつつ、人・虫・農業の「虫ぐらし」を楽しく知ることができます。尊い。

作中では他にも

  • ブロッコリーの植え付けで蝶を追い回す理由
  • 作物を育てるための益虫の利用
  • 地中にいるセンチュウの駆除の仕方

など、本格的な「虫+農作業」の描写が。「(害虫との)戦い」だけでなく「共存」もあり、そのどれもが興味深い内容です。

虫が苦手な人でも安心?

そんな「麻衣の虫ぐらし」の世界観を形作るのは、雨がっぱ少女群さんの美麗な絵。何と言っても女の子がカワイイ!です。

しかしミノムシ、チョウ、アリ、クモ・ガなどの昆虫描写も、負けないレベルでリアル!(笑)「カワイイ女の子は好きだけど、虫はちょっと苦手なんだよね…」と思われる方もいるでしょう。

しかし安心してください。キャラクターのほがらかさ・コミカルさが、迫真の虫描写を程よく中和。虫が苦手な方でもすんなり読めるはずです(ホンマか)。

ちなみに本作で紹介されているヒメジャノメの幼虫を画像検索してみましたが…

「カワイイ!」と「ヒエェェェ」が半々でしたw。

1巻後半は予想外なシリアス展開

カワイイ女の子を楽しみつつ、農家と虫の共生が描かれる「麻衣の虫ぐらし」。コミカルな物語ですが、後半ではそんな雰囲気が一転。

余命短い菜々子の祖父が物語と密接に関わり、やや趣が異なってきます。

亡き妻と共に農業に従事し、その仕事を菜々子へと引き継ぐおじいちゃん。命の灯が徐々に小さくなっていく中で描かれる、おばあちゃんとの思い出。そして菜々子に託す農業への想い

これが泣ける…。

農業の厳しさ、そして熱い気持ちをあらわすエピソードと共に終わった第1巻。絶妙な余韻が残ります。

ガチ百合展開の2巻

そして完結巻となる2巻では、麻衣と菜々子の新しい関係性が描かれます。1巻ではほのかに匂わせる程度だった百合要素が、いよいよ本格的に展開

祖父を亡くし、失意の菜々子。それをそっと見守ることしかできない麻衣。

しかし菜々子のダメージは周囲の想像以上に大きく、やがて彼女は失踪してしまう。

自身の間違いに気づき、必死に菜々子を探す麻衣。果たして二人は再び出会うことができるのか―

いや、1巻を読んだ時には「そこはかとない百合」を描く漫画だと思っていたのですが、2巻でここまで踏み込んでくるとは予想外でした。

さらに麻衣のちょっと変わった過去や、新キャラクターの登場もあり。もちろんその中に、虫関連のエピソードもしっかり織り込まれてきます。

「麻衣の虫ぐらし」というタイトルに違わない、面白くも興味深い全2巻でした。

もう一つの「麻衣の虫ぐらし」

本編は全2巻で完結ですが、電子書籍限定で描かれるもう一つの「麻衣の虫ぐらし」がこちら。

「麻衣の虫ぐらし 来夏と美津羽の特別編」です。1巻から登場の来夏と、2巻から登場するその友人・美津羽の「秘密のつながり」を描く全3話。

オカルト要素の入った、本編とは毛色の異なる物語。読むとなるほど、これは「特別編」となるのがわかります。明らかに不思議な美津羽はともかく、来夏にそんな秘密があったなんて!

本筋から見ると「亜流」の話ですが、ホラー漫画も手がける雨がっぱ少女群さんの異なる魅力を堪能。こういう話をもっと読ませて欲しい!と思わせる内容です。

「麻衣の虫ぐらし」おかわり

さらに!電子限定版で「麻衣の虫ぐらし 未収録作品集」が刊行されました。

単行本未収録となっていた5話のうち、4話を収録した作品集(うち1話は内容が不適切だったため除外とのこと)。

いろいろと事情があったのでしょう、単行本から漏れた話が、電子限定版とは言え楽しめるのはありがたい。

どの話も笑いと深み、そして虫成分にあふれた物語。ボーナストラック的な満足があります。

単行本に入れられなかったエピソードを、ちゃんと読者に届けてくれるのはありがたいですね。

まとめ

以上、漫画「麻衣の虫ぐらし」全2巻+αの感想でした。

美少女+農業+虫、という特異な素材を見事に融合させ、しかもいろいろな角度から面白い、という稀有な漫画です。

また単にカワイイというだけではなく、2巻からは徐々に作中に、雨がっぱ少女群さんの「狂気」が滲み出ているのも味わい深いところ。

そっち方面が気になる方は、ホラー短編集「ひとりかごめ」もチェックしてみてください。

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