「女子高生」じゃなくて「女子攻兵(じょしこうへい)」。
JK同士の武装バトル、と思いきや、実は巨大ロボットものという異色のSF漫画です。
作者は松本次郎さん。新潮社バンチコミックスより全7巻が刊行されています。
「女子攻兵」感想
女子高生型機動兵器「女子攻兵」
舞台は次元世紀2011年。新天地を求め、人々が異次元空間に移住する世界。
地球からの分離独立を求める移住者・異次元独立開放戦線(EZO)と、地球連合軍の間に異次元戦争が勃発。戦線が拡大・長期化する状態。
事態の打開のために連合軍が投入したのは、女子高生の外見をした巨大機動兵器「女子攻兵」。
重武装したそれには、通常兵器は一切役に立たないという強力な兵器。しかしそれにメンテなしで長時間乗り続けると、精神汚染により異常をきたす、という危険なもの。
謎の存在「ツキコ」とは?
精神汚染の進んだ女子攻兵を始末する第13独立女子攻兵猟隊、通称「ハイエナ部隊」。
その隊長で、女子攻兵「ラブ・フォックス」に搭乗するタキガワ。異常をきたし、驚異的なパワーで味方機を次々と撃破する、元・味方機を狩る作戦を指揮していた。
しかし予想外の強さを見せるターゲット。苦境に陥るタキガワを救ったのは、「ツキコ」と名乗る「親友」から届いた謎のメール。そのツキコからの的確な指示により、タキガワは辛くも作戦を成功させる。
そして異次元空間の意思決定権を持つ計算機「預言者」により、次にタキガワに降された命は、ツキコの捕獲。
ハラダ・J子・ツネフサら仲間と共にタキガワは、EZOが支配する地域のさらに先を目指すが―?
…というストーリーが、全7巻に渡って展開されます。

迫力のアクション
「女子攻兵」の魅力は、何と言っても派手なアクション。
松本次郎氏の、独特な濃淡を持つ線で描かれる女子攻兵たちが、重火器や刃物類を手に繰り広げる熾烈な戦い。
女性兵士らしい、しなやかな動きと相まって、迫力を醸し出します。
また「預言者」から与えられた「次元兵器」と呼称される、従来のものとは概念の異なる兵器達が面白い。
ヘリ+多脚という外見を持つ女子攻兵の輸送機や、女子攻兵たちが身につける特殊装備など、独特なミリタリー感にあふれています。
シュールな世界観
が、そんな異次元の軍事ミッションをこなす兵器の外見は、セーラー服に身を包んだ女子高生そのもの。
そしてその頭部には人間が乗っている、というのが何ともシュールw。
女子攻兵のアクションはカッコよさにあふれているのに、それは巨大ロボットで、中身はオッサンであるという事実。冷静に考えると何とも言えないおかしみが。
そして女子攻兵たちの行動や言葉遣いは、まさに女子高生のそれ。ケータイでいるはずのない家族と連絡を取ったり、ピクニック気分でランチをしたり。
それはパイロットが女子攻兵と一体感を感じることと関連があり、また精神汚染にも繋がっているのですが、女子攻兵が人智を超えた本来制御不能な兵器であることに、常に薄ら寒さが漂います。
最終7巻は驚愕の展開
仲間を狩る「ハイエナ」という立場から、味方からも忌み嫌われるタキガワ。敵対するEZOとの過酷な戦いもくぐり抜け、一歩ずつ、ツキコに近づいていきます。
…が、最終7巻では、これまでの物語をひっくり返すかのような衝撃的な展開が。
ネタバレになるので深くは書きませんが、1~6巻までの激烈な戦闘、タキガワの過去・内面の描写を経て描かれる新展開。
「どんな結末が待っているのか?果たして真実は何なのか?」と、ドキドキが止まりません。
女子攻兵が「女子高生」の姿をしていたのも、ここに結びつくのか!と考えるとなるほど、といった印象。むしろ必然すら感じます。
果たして異次元の戦いは、どのような決着が着くのか。圧巻の最終巻でした。

まとめ
以上、松本次郎さんの「女子攻兵」全7巻の感想でした。
エログロナンセンスも満載で、読み手を選ぶ作品ではあると思いますが、一度ハマるとクセになる世界観。
7巻というボリュームもちょうど良いぐらいなので、ぜひご覧になってください。独特のトリップ感が、読み手をとらえて話さないSF漫画です。
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